第7話〜事件は突然に〜
1-⑦
〜事件は突然に〜
これはある日曜日のこと。
「こんにちは〜」
周りを見るとどこで手に入れたのか、男子生徒らの手には拳銃が10挺。
「な、なんだよ!おめぇ、どこのもんだ!」
《どこのもんだ!》って、ヤクザじゃないんだから・・・。
「どこでもないっす!無所属っす!仲間に入れてください!」
「ふーん、じゃあ、こいつを一発殴ってみろ」とボスっぽい奴が言うと、子分さんが、1人の男子高校生を連れて来た。かなり弱っている。集団リンチを受けた後のようだ。
殴ればいいのね、オーケー!
「おりゃよっと!」と一発殴ってみた。もちろん、痛くないように工夫して。
殴られた高校生は、不思議そうにこっちをみている。ここはとりあえず、ウィンクをしてみる。
「ほー、合格だ。いい子分ができた。これからよろしくな」
「はいっ!よろしくお願いします!」
これでよし。
と、思ったら・・・・・
「アニキ!こいつ、アザもなにもできていねぇ!力抜きやがった!」と子分の半グレ高校生。
「なに!お前、手を抜いたのか!」
あ、やべ。ばれた?
「力、抜いたのか?」
「いえ、全力です!」
「やっぱ、失格だ!罰として、お前を殴り大会だ!」
なにが起きるのかと思えば、不良集団に囲まれた。いくらなんでも8対1はないでしょ。しかも全員が拳銃を所持。こっちは特殊警棒一本。
しょうがない。今日はここまでか。
数分後。
俺は、8人を気絶させ、ボスを制圧していた。
「17時54分、傷害と凶器準備集合で現行犯。ワッパ持ってきてよかった!」
自己紹介、遅れました。
警察庁特殊派遣捜査管理局捜査課福岡係第二、主任の近藤亮太警部補です。
今日は、市内の公園で集団リンチされたという被害届が出たので、この不良集団に潜入し、調べようとしたんですが、失敗しました。まだ甘いな、俺。
最近の福岡係は警視庁出張から係長の沙奈が戻って来ました。
不良集団を地域課の警察官に引き渡し、県警本部に戻ろうとすると、携帯がなりました。
美穂からでした。
「もしもし!亮太くん、遅い!」
「あぁ、ごめん、でられなかった。不良グループの検挙してたからさ、ごめんな。んで、何か?」
「何かじゃなくて、コロシ!早く来て!住所は・・・・」
コロシか。久しぶりのような気がする。
特派捜が臨場する殺人事件は、久々だ。
教えてもらった住所にタクシーで向かうと、すでに規制線がはられていた。
「特派捜、近藤です」と地域課員に警察手帳を見せて、一軒家の中に入る。
まずは二階の被害者を見に行くか。
被害者は、石野愛菜さん16歳、高校1年。
包丁で心臓をヒトツキ。包丁は約10センチ程度。そして、妹の結奈と祖母中川冬美さんも襲われ救急搬送された。
現場には特派捜第二班、捜査一課大賀班が臨場していた。
「お疲れ!大変なヤマだな。愛菜ちゃん、結奈ちゃんと冬美さんを刺したのは別の包丁だなー。つまり、まだホシが凶器を持っている可能性はあるな。キンパイかけとくか。ここら辺小学校多いから、集団下校するだろうな」
と大賀班坂本さん。
病院行くか。証言取れるかもしれないし。
立ち上がったそのときだった。
「うわぁ、すご!」と係長の沙奈が来た。
「お、沙奈。久々の臨場か?」
「うん、近くを通ったからさ。にしてもひどいね。1人で3人も傷つけるなんて」
「1人?」
「ゲソコン(足跡)が1つしかなかったらしいよ」
「そうか」
と話してると、第二班のメンバーが揃った。全員がポリスジャケットを着ていたので俺も着た。
「じゃあ、亮太と美穂で病院の結奈ちゃんのところに大黒さんと行って聞き取り、お願い。冬華と拓人で現場周辺の捜索をお願いします」と係長が指示を出した。
指示通り、俺達は病院にいる殺害された被害者の妹、石野結奈に聞き込みに行くことに。
病院まではタクシーで向かった。
病院の受付で大黒さんが警察手帳を出して、「警察の者です。石野結奈ちゃんに面会したいのですが」
「少々お待ちください。医師に確認します。」
数分後、看護師に案内してもらい病室へ。
病室前で警備をしていた地域課員に手帳を見せながら、
「捜査一課大黒です」
「お疲れ様です。医師によると命に別状はないみたいです。先ほど目をさましました。母親が付いています」
と地域課員さんが報告してくれました。そしてと部屋に入りました。
「失礼します。福岡県警捜査一課の大黒と申します。少しお話を聞かせてくださいませんか?」
「愛菜と結奈の母親の美奈と申します。少しだけなら・・・・。結奈、大丈夫?」
「うん、大丈夫」
「じゃあ、少しだけ」
すると結奈は、美穂を見て、
「お姉ちゃんかわいい!お姉ちゃんも刑事さんなの?」
「え、ありがと!まぁ、お手伝いしてるの!私と少し話そうよ!悪い人を捕まえるのにちょっと協力してくれないかな?」
「うん!」と元気よく答えてくれた。
ここは美穂に任せるべきだろう。
少し学校の話をして本題に入った。
「じゃあ、逃げた人の顔見た?」
「うん、見たよ。けど、うまく説明できない。ごめんね」
「ううん、全然大丈夫!じゃあ、背格好は?太ってたりしてなかった?」
「えーと、ちょっと太ってたよ。身長はママと同じくらいだったかな〜」
「そっか、ありがと。あ、そーだ!じゃあ、また今度、専門の人と来るから、その時に顔思い出せるかな?」
「うん!頑張ってみる!だから、愛菜姉ちゃん殺した人、絶対捕まえて!」
「うん!約束する!」
と言って、俺たちは病院の外に出た。
「四年生にしてはしっかりとした感じやったな。お姉ちゃん殺されてんのに」
「まぁ、そんな子もいるよ、いまどき」と大黒さん
「あ、大黒さん、似顔絵捜査担当に連絡しておいてください」
「うん、わかった」
次の日。久々に俺たちは各自の学校へ登校した。
昼休み、俺は寝ていた。
が、付き合っていると思われるカップルがいちゃついてて眠れなかった。
「あぁ、ほんと大好き!I love you!」とか
「あぁ、俺も好きだよ。神様仏様〜」とか。どんだけ好きだよ言うんだよ。
あぁ、俺も彼女持ちたい。けど刑事ってバレるしな〜。他のメンバーも同じ気持ちなんだろうなぁ〜。
あ。あ、あ、あぁぁ!
思いっきり叫んでしまった。
俺はダッシュでトイレに行って、沙奈に電話をかけた。
「もしもし?」電話越しだと声が可愛い。けどこの際、関係ない。
「あ、俺。石野愛菜の彼氏っていたりするのかな?」
「あぁー、どうだろ。ホシの可能性あるね。鑑識の三井さんも顔見知りの犯行かもって言ってたけどね〜」
「大黒さんに連絡とって確認してもらおう」
「だね!どう?久々の学校」
「うーん、普通かな」
「こっちは、知らない子がいたよ〜。転校生だって〜」
「2ヶ月も行ってなかったし、そんなもんじゃね?じゃあ、昼休み終わるから」
「うん、またね!」
そして、下校中に今度は沙奈から電話がかかって来た。
「はいはい?」
「大黒さんから連絡あったの。状況証拠だけだけど、ホシの可能性ありだって。んで、今彼、北九州にいるんだって。んで、今から重要参考人として、任意で引っ張るって」
「了解。俺もいこうかな」
「だったら、博多駅に向かって。大黒さんが待ってる」
「オッケー」
ってことでバスを乗り継いで博多駅へ。
「あ、亮太くん!こっちこっち!」
「大黒さん!お疲れ様です」
と挨拶して、早速北九州市の小倉駅へ。特急に乗りました。車内で、
「亮太くんの制服姿初めて見たかも!」
「何回かある気がするけどなぁ〜」
「そーだっけ?まぁ、いいや」
とか話しているとすぐに着きました。
改札を出て、俺はポリスジャケットを着て、学生に見えないようにしておきました。通学かばんは博多署においてきました。
「小倉北署に任意で引っ張ってもらってるから、行こう」と大黒さんが言うので、小倉北署へタクシーで向かいます。
小倉北署に着くと、すぐに刑事課に行き、取調室へ。
取調室をノック。コンコン。
そして、入ると、小倉北署刑事課の中島巡査部長と黒川巡査長のコンビが話を聞いていました。
「失礼します。捜査一課の大黒です」
と言うと、ヒソヒソと報告してくれました。
「お疲れ様です。容疑は全体的に認めました。後はお願いします」
中島巡査部長と黒川巡査長が取調室を出て行き、大黒さんは席に座り、俺は後ろの記録席に座った。
「ここから取り調べを担当する捜査一課の大黒です。よろしくね。まず、お名前教えてください」
数分間沈黙があった後、やっと話し出しました。
「槙野光輝です。俺が愛菜を殺しました。愛菜は、元カノです」
その後、取調は順調に進み、当時の様子がわかってきました。
当時、石野家二階の愛菜の部屋に遊びに来ていた槙野は二階に上がって来た愛菜を持って来た果物ナイフで殺害。愛菜の叫び声を聞き駆けつけた妹、結奈を切りつけ、さらに追いかけようとした祖母冬美さんをキッチンにあったナイフで切りつけ、逃走。買い物に出ていた母親の美奈さんが帰って来た時と重なり、不審に思って自宅に入ると結奈らを発見し110番通報した。
今回の動機は、恋愛関係のトラブルが原因。
槙野が認めたため、その場で殺人と傷害などの容疑で逮捕しました。
その後、病院の結奈に槙野の写真を見せると「あ、この人!」
と、証言をしてくれました。
槙野を福岡市に移送し、一件落着!
その次の日の夜、沙奈のお帰り会を福岡係でしました。結構楽しかった。
俺もよく不良集団に潜入捜査してるけど、やっぱ、こういうヤマの方が起こらないでほしいと願う。刑事は暇なのが1番だと思う。
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