第5話 ユナシェール、連れ戻される。

元夫である、魔王はいなくなっていた。息子も消息不明。私は今後どうすれば良いか、途方に暮れることになった。

店長にお礼を言い、店をお暇した後、寂れた街をぶらぶらと歩く。

クロムディーテは元気だろうか。元夫は責任感は強いが子育てが出来るとは思えない。今は11歳になっているだろう息子の事が1番の気がかりだった。

遠くでパパーと言う声が聞こえる。辺りは暗くなり始めているため、帰るところだと思う。あぁ、早く会いたい。

そうは言っても、手がかりが無くてはどうすることも出来ない。結局は手詰まりだった。


いきなりガシッと腕を捕まえられ、ひぇっと声が漏れる。

考え事に気を取られ、背後から近づいてくる人の気配に気づかなかった。後ろを振り返ると、怒りを露わにした乳母がいた。周りには護衛と思しき男達。

見つかってしまった。思いの外、店長の話が長かったのだ。終わり次第すぐ帰ればいいものを、ずるずると先延ばしにしたせいでもある。

「お嬢様、帰りますよ」

「申し訳ありません、でも!」

「言い訳は後で聞きます」

そう言った乳母の声は固く、怒りが込められているのが分かる。

これは説教行きだな、とユナシェールは他人事のように考えていた。


帰った後は夕飯抜きに1時間正座の刑にされ、30分は足が痺れて立つことが出来なかった。

しかし、こんな騒動が起きたのにも関わらず、母は帰っては来なかった。

会えるといいと思っていたのに、残念である。母に元夫の手がかりを聞きたいが、母は元夫の失踪時、この国にはいなかった。私が王妃の時、母は私が気に食わないようだった。母も元夫の事が好きだったのかもしれない。何かの用も無しに、私が出産した事が分かるとすぐにどこかへ行ってしまったと聞いた。誰も居ないため真相を聞くことは出来ない。


私ははぁーとため息を吐いて、ベッドに横たわったあと、疲れたのかすぐに寝てしまった。

寝る子は育つってよく言うよね。

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