第4話 ユナシェール、現実を知る。

まずは街の人に事情を聞かないと。そう思い、昔懇意にしていたコルトという雑貨に訪れた。店の外の看板はくたびれ、所々錆びていた。店内の商品棚も隙間が多く、商品自体が少ない事が伺えた。

「すみませーん。店長さんいますかー?」

カウンターには店員は居らず、近づき、店の奥を覗き込む。奥で物音がしたので、人はいるようだ。ゆっくりと足音が近づいてくる。

「やぁ、いらっしゃい。何をお求めかな?」

出てきたのは、農民と言われても頷いてしまいそうな土で汚れた服を着た年のとった店長だった。昔と変わらず、その頭はハゲ散らかしている。

「違うのよ。私、昔ここに住んでいたのだけれど、どうしてこんなに変わってしまったの?」

店長は驚いた顔をして、失望をその目に覗かせた。

「そうか、お嬢ちゃんは知らないんだね。あの惨劇を。昔の話だ。長くなるがいいかね?」

私が頷くと、店長は近くの椅子に私を勧めた。

私が座ったのを確認し、ゆっくりと話し始めた。


今から4年前になる。この国には人族の王妃様が居った。王妃様はお子を身ごもられ、魔界は活気に溢れていた。しかし、王妃様はお子を出産なされた後、産後の肥立ちが悪く亡くなってしまった。魔王様はそれはそれは王妃様を愛しておられて、家臣の誰の言うことも聞かずに娶られたものだから、その悲しみも大きかったのだろう。王妃様が亡くなった後、魔王様は王妃様とのお子を連れて、城から消えてしまった。そのせいで城は荒れていたらしい。魔王様の従兄弟であるジェード様は無知で有名だ。しかし、その時魔界を立て直せるのはそのお方しか居られなかった。魔王様の義理の姉君は魔界を飛び出してどこかへ行っていたものだから王位には立てられない。苦渋の決断を迫られた家臣は、ジェード様を傀儡とすることで、魔界を制御しようとした。だが、悪いことには頭の働くジェード様はその家臣らを解雇し、自身の派閥の者を家臣とした。それからはジェード様の自分勝手な制度が敷かれた。税は重くなり、住む人もいなくなった。魔族は魔界でしか暮らせない。だが、魔界もこの有様だ。大多数の魔族が人間界へと向かった。それが原因で人族と魔族の戦争も起こった。もう、この街は終わりだ。魔王様は、本当の魔王様はどこに行ってしまわれたのだ!

店長はとうとう泣き出してしまった。


あんなに責任感の強かった元夫は魔王を辞めていた。その事に私はふつふつと怒りが湧いていた。

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