第3話 ユナシェール、街へ行く。

今日は7歳の誕生日である。2日前、乳姉妹の誕生日を終えたばかりだ。

長年のかいあり、私は魔力の制御をマスターした。そのため、最近は屋敷を抜け出し街へと繰り出す準備を始めていた。まずは母から少しばかりのプレゼントである宝石を集め、換金できるようにする。次に、掃除を手伝うという名目で侍女達の服装をチェックした。外の世界では何が流行りで、何が人気なのかを知るためである。

外に出なければ、屋敷がどこにあるのかも知ることが出来ない。計画は絶対に成功させなければならない。


毎年、私の誕生日は乳母と乳姉妹に祝われて終わりである。それも正午までで、正午から私が読書をするので邪魔しないようにと誰も入らぬよう命じていた。


部屋の周りに誰もいないことを確認したら、次に影の気配を探る。影とはこのお屋敷を密かに守っている(監視しているともいう)者のことである。薄々気配は感じていたため、魔力制御の練習は見られないようにしていた。

街へ出るためにはまず屋敷を抜け出す必要がある。影がいないことを確認すると、私の分身を作り出し、転移魔法をイメージした。過去の記憶が正しく、今も尚残っているのなら、確実に転移出来るはずだ。

ふわりとそよ風が頬を撫でた。私はゆっくりと目を開ける。しかし、そこにあったのは廃れた街の光景だった。以前は綺麗に並んでいた花も、活気のあった街の人たちも今はどこか暗い表情をしている。悲惨な状態がそこにはあった。

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