第2話 ユナシェール、思わぬ誤算に直面する。

ユナシェールは息苦しさから大きな声を上げた。程なくして、優しく背中を叩かれる。その人からはミルクの匂いがした。乳母なのであろう。うっすらと開けた目にはぼんやりとその人の大きな胸と黒い服が写ったのがわかった。

「ユナシェール、ミルクですよ」

口元に宛てがわれたものを一生懸命に吸う。これも生きるためなのである。

赤ちゃんというものはこんなにも不自由だったのか、と嘆く。何一つ自由に動かせない。

しかし、赤ちゃんが育つのは早いもので、すくすくと成長し、ユナシェールはあっという間に5歳になった。その間、母は一切顔を見せず、一日中乳母とその子供である乳姉妹と一緒という毎日である。

今になって、クロムディーテの成長を見れなかったことを悔しく思う。子供の成長は早い。現に私もここまで成長するのに時間はかからなかった。


でようにも、前世の魔王城ではない、どこかの屋敷のため道が分からない。


ユナシェールは薄々、自身は母から望まれたのでは無いことに勘づいていた。母であるシルディナは元夫の魔王の義理の姉弟であり、元夫は吸血鬼と呼ばれる種族なのに対して、母はルサールカと呼ばれる悪魔である。私は悪魔と人間のハーフのようだ。私が生きていた時は母であるシルディナと夫のアルディードの仲は悪くなかったはずだ。まあ、私は好かれてはいなかったが。何があったのだろうか。

今出来るのは少しずつ魔力の扱い方をマスターする事だった。

私は通常の魔族よりも魔力を持っているようで、魔力を制御するのに困難を極めていた。前世は魔力のほとんどない人間だったため、魔王を慕うものからは邪魔者扱いされていた。

焦りが私を急かしていた。



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