元旦那は魔王

奴羅李 くらり

第1話 神、現る。

ユーシュエは産後の肥立ちが悪く、息子であるクロムディーテを産んで直ぐに亡くなってしまった。

ユーシュエが今いるのは、天国と呼ばれる場所である。楽しいことしかない、負の感情とは無縁の場所だ。

ユーシュエは残してきた夫と息子が気がかりでありながら、運命だから、と割り切っていた。しかし、今朝、神の使いがやってきたのだ。


「前世でユーシュエというお名前の女性はこちらに居られますか?」

上から下まで全て白で埋め尽くされた背中に羽の生えた天使はハンと名乗った。

「あなたがユーシュエさんだった人ですね」

「はい、そうです」

「実は転生のお願いに来ました」


話を聞くと、私の前の夫である人が私の死後、荒れまくっており、人間界の危機だということだった。

まさか、亡くなった後に夫と息子に会えるとは思いもしなかったが、神からすれば、私の元夫は魔力が強すぎて、神が安易に干渉してしまうと暴発してしまう危険があるとのこと。そこで白羽の矢がたったのであった。


「分かりました、夫と息子に会えるのなら」

実に3年ぶりである。息子ももう4歳だろう。可愛い時代を見逃したことは惜しいとこをしたと思ったが、仕方がない。

「では、着いてきてください」


連れられた場所は入り組んだ道を右左と誰にも分からぬように進んで行った。

「ここです。こちらにあなたの肉体を選んでおきました。前世の姿の面影があると思います」

前世の私は目立つ容姿ではなく、平々凡々の容姿だった。少しは美人にしてくれても良いのに、と悪態をつく。

「では、あなたは人間の間に産まれることになっております。これからあなたを現世へと送り込みます。目をつぶって下さい」

そっと目を閉じる。体が吸い込まれていく感覚があった。しかし、その途中でその感覚が途切れた。思わずぱっと目を開けると、私のものになるであろう体に私とは別の魂が吸い込まれていくのが見えた。天使ハンは驚きのあまり口をあんぐりと開けている。大変な間抜け面である。

遠くで、「マリアがにげたぞぉーーー」という声が聞こえてきた。天使ハンはすぐさま吸い込みを辞め、口に指をあて、口笛を吹いた。


その後、話し合いの結果、魂はもう呼び戻せないことが判明。天使ハンが途中で吸い込みを辞めたため、寿命は半分しかないことは確かとなった。


私のために用意されていた体がもう使えないことが分かり、急遽探したが、人間の中に、私に合う該当者が見つけられず、結局魔族から選ぶこととなった。魔族は人間よりも子供が産まれづらいが人間よりも長寿となっている。さらに運の良いことに、魔王の義理の姉であるシルディナの娘として産まれることになった。


私の生まれる日は1ヶ月後となる。




大きな産声を上げて真っ黒の髪に真っ赤の瞳の少女が誕生した。

名をユナシェールと言う。

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