第17話「突入」
「とはいえだ、強いってだけじゃこの職業はやっていけねえ、冒険者の先輩としてアドバイスがある」
「ほう」
ブレドとの試合が終わった後、ロアの言葉に魔王は興味深そうに眉を吊り上げる。ロアは数メートル先にある山に空いた人が一人ギリギリ潜れるくらいの小さな穴を指差した。
「例えば、ああいう穴は
「どうしてですか? 」
アリスが尋ねるとロアは得意気に続ける。
「スライムは人の気配を感じ取れるからな、洞穴の出口で待ち受けて来たら頭ごと包んじまうって訳よ」
「そんなことになったら、息が出来なくなってしまいます」
アリスは状況を想像したらしく青ざめてそう言うと深く深呼吸をした。
「そう、だから煙であぶり出すのがおススメよ。この戦法は結構便利でスライムの他の洞窟にいるモンスターにも通用する。冒険者に成り立てだと金のケチろうとツッコむがそれはあまりにも危険だ」
「なるほど、感謝する。覚えておこう」
魔王がそう言うとロアは笑顔になった。このときの魔王はそんな重要な情報を教えるとはこの者も勇者としての素質がある。恐らくウィズと言う彼女も、といずれ彼らと戦うであろうことを想像したことにより機嫌が良かった。
「んじゃあ、そろそろ行くか」
ブレドの声と共に再び洞窟への道を目指した。
そこから再び登り道を歩くこと数十分、遂に洞窟へとたどり着いた。先ほどのスライムの洞窟とは打って変わって入り口は縦三メートル横二メートル程と悠々と立って歩くことが出来る大きさだった。
「あ、そうだ! 」
いざ突入というときに何か大事なことを思い出したとばかりにブレドが声をあげる。
「大事なことを忘れてた、オウマ二世さん、万が一戦闘になった時のためにこの短剣を持って行ってくれ」
「いや、知っての通り剣なら既に持っているが」
魔王はそう言って念のためにと背中にさしている長剣を見せる。
「まあそうなんだけど洞窟内で長剣を振り回すと中の物にぶつかって思うように斬れないんだ。だからこういう場合はこっちの短剣の方が良い」
なるほど、そういうことだったか。魔王は短剣を受け取った。
「かたじけない」
「良いってことよ! それじゃあ、行こうぜ! 今回は俺達もいるから火であぶり出すのは無しだ」
改めてブレドは洞窟の方へと向きなおった。
「いざ、突入! 」
彼の声と共に魔王たちは洞窟内へと歩き出した。
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