第18話「ゴブリン討伐」
洞窟に入って薄暗い洞窟内をウィズの『フラッシュ』という照明の魔法で照らしながら進む、岩肌に添って進んでいると道が二つに分かれていた。
「どちらに向えばよいのでしょうか」
アリスが不安気に尋ねる。
「ゴブリンは別れている場合があるから敵襲となると挟み撃ちに会う危険がある。こういう場合は、頼むウィズ」
ロアがウィズを見つめるとウィズが詠唱を始める。
「『ディフェンド』」
途端に洞窟から岩の壁が現れて分かれ道の一つを塞いだ。地を操るような盾の方法もあるのか、とウィズの魔法に魔王は満足そうに口角を吊り上げる。
「こうして一つ塞いでしまえば問題はない」
「相変わらずウィズの魔法はすげーなあ、んじゃあ行くか! 」
ブレドが剣を抜きもう一つの道へと向かった。
「ギギギギギ」
分かれ道から数分歩くとゴブリンの鳴き声らしき声が聞こえる。
「そろそろか、行くぞ」
その言葉を合図にブレドは剣を、ロアは弓を、ウィズは杖をそれぞれ構える。
「目を瞑れ! 」
「『フラッシュ・マキシマム』」
まずゴブリンが侵入に気付いたと同時にウィズが照明の魔法を限界まで光らせ目つぶしとして使用する。その隙にウィズは明るさを調整して先ほどくらいの大きさに素早く戻す。
すると敵の位置を確認したブレドが素早く斬りこむ、更にロアはブレドと敵の位置を想定して素早くブレドと距離があるゴブリンを見極めて射抜いていく。わずか数秒の出来事だった。
勇者クラス三人の力によって洞穴内のゴブリンは壊滅した。
「魔法を使わずに倒すとは見事なものだな」
「ロア曰く洞窟内で強力な魔法を使うと洞窟が壊れて生き埋めになる恐れがあるからな」
ブレドが魔王の
「ところであの者は何をしているのだ? 」
魔王は未だ何かを警戒しているように歩き回るロアに関してブレドに尋ねる。
「ああ、ゴブリンの中にはシャーマン種っていう賢いのがいてそいつらがいると隠し部屋みたいなのを作って油断させて不意打ちをしてくるからな。ああやってロアが隠し部屋がないのか調べてくれているんだ」
「新米冒険者が陥りやすい罠だから気を付けて」
ブレドの説明にウィズが付け足すように言う。
「心に留めておこう」
魔王は頷いた。それをみてアリスがクスリと笑う。
「どうした? 」
「いえ、なんでもありません」
魔王の問いに彼女は笑顔のまま答えた。
「問題ないぜ」
「それじゃあ、もう一箇所行きますか! 」
隠し部屋がないと確かめたロアの言葉を聞いたブレドが元来た道を戻り始める。四人はその後に続く。やがて分かれ道まで戻るとウィズは『ディフェンド』を解除して岩壁をなくすと先ほど通らなかった道を進んでいく。道の幅はこちらの方が広く敵の数が多いということを予想させた。
「悪い、今回はオウマ二世さんにも戦ってもらうかもしれない」
ブレドが謝罪するように言う。
「謝ることではない、我も今回のクエストのメンバーだからな」
「いや、その必要は無いよ。オウマ二世さんはアリスちゃんの近くにいてあげて。今回は私も戦いに参加するから」
「「え? 」」
ウィズの言葉にブレドとロアが頓狂な声をあげ振り返る。
「大丈夫だって、ちゃんと加減はするからさ」
ウィズは力強くそんな二人の肩を叩いた。そのやり取りが彼女がやり手の魔法使いらしいという確信を持たせ魔王の胸を高鳴らせる。
「んじゃあ、さっきと同じ方法で! オウマさん達はいざって時も踏み込まずに逃げようとするゴブリンだけを倒してくれ! 」
そう言って先ほどと同じように三人が飛び出した。だが……
「「「え? 」」」
信じられないものをみたとばかりに三人の動きが止まる。どうしたのか、と魔王が首を傾げるも三人が壁となり何があったのか分からなかった。
「うわっ! 」
「きゃ! 」
「馬鹿な……」
次の瞬間、うめき声と共にドサリと三人は崩れ落ちるように倒れた。
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