薬物ルート壊滅作戦、発動
● 第66話 敵の住所が、空き地だと? ソノ秘密を暴け!
昨夜の作戦成功を祝う宴は、結局朝まで続いたのだった。
モチロン、オレとサシャそれにカイザールさんやユーリとアントワーヌさんなんかは、早目に失礼させてもらったけどね。食べたら、急に眠気が襲って来たからだ。何だかんだ言って、やっぱり疲れてたんだろうな。ムリも無いよね。
サシャと一緒に部屋に戻り、すぐにでも寝たかったがコレだけは話しておきたかったので、急いで伝えた。
「サシャ、明日例の薬物関係の件について緊急で会議をする事になったんだ。
とにかくアノ薬物は危険な代物だ。だから、成分の解析を頼みたい。」
「モチロン、ボクもソノつもりなのサ。
だから、その点に関しては安心して任せて欲しいのサ。
それより、ユウは今回の作戦で身体に異常はナイ?
アレだけの作戦を、ほぼ一人の力でやってのけてしまったのダカラ」
「うん、ありがと。
どうやら、ソノ点に付いては例の【カスタム・カランビット】が力を貸してくれた……っていうか、力を足してくれた感じがするんだ。
正直オレだけだったら、あんなに完全に大勢の人間の動きを停める事は出来なかったと思う」
「なるほどネ。
確かにそうも言えるけど、ボクはキミの力自体も進化していると考えているのサ。
特に、ユウは作戦の途中で教団支部の時間軸も操り、ソノ動きも停める事に成功した。コレは、単に力が増幅したから出来たという単純なコトじゃないのサ」
「あぁ、そう言えば確かにソンナ事も出来ちゃったんだよな。
とにかくなんだかんだで疲れたよ。今日はサッサと、寝ようか」
「うん。チャント寝る前にキスしてからなのサ」
オレは、サシャに優しく口づけた。
そして、夜が明け例によってエテルナ達が皆を起こして集め食事になった。
久々のバイキング形式である。バイキングって何か盛り上がるのは、オレだけだろうか? 子供の時、現世で連れてってもらった時も嬉しかったもんなー。
商業都市と言う立地条件からか、実に様々な食材が並んでいた。
そういえば、炎纏狼牙はどうしたんだっけ?
アイツとは、昨夜の宴会の時肉喰いながらニヤリと笑い合ったっきりだ。
会場を見回すと、スグに見つかった。
まぁ、あんだけ大ききゃ隠れようがないわな。
「よう、炎狼。おはよう。
昨夜はどうしてたんだ?
戻って来なかったから、心配したんだぞ。
ずーっと、肉喰ってたのか?」
「おぉ、裕よ。心配を掛けてしまった様だな。すまなかった。
時に、すっかり疲れは取れている様だな。
我は、昨夜は緋色狼一族と供に一夜を過ごしたのだ。
色々と身の上話なんかをしてな。たまには、ああいう夜も良いものだ」
「そっか。お前さんが、イイ時間を過ごせたのならオレも嬉しいよ」
「前もって、話しておけばよかったと思っている。悪かった」
「まぁ、気にすんなって。
オレだって、炎狼の大切な時間をジャマするつもりは無いから」
アッと言う間に食事の時間は終わり、続いて特別会議の時間になった。
部屋は、作戦前の最後の会議が行われた、会議室だった。
オレは、昨夜教団支部から押収したブツを『箱』から出しテーブルに並べた。
皆が席に付くと、早速カイザールさんが口を開いた。
「昨夜は、皆ご苦労であった。
特に、ユウとユーリそして己が身に敵を引き付けるという危険な役を買って出てくれたサシャよ、心から礼を言うぞ。
そして、昨夜の宴の席で申した通り、ココに居るユーリ・ランゲンドルフとその彼女アントワーヌ・ルクルト、そしてイリアとギトリッシュの妹シエナ・ウィックスが新たに我らが家族に加わった。
特にユーリは炎を操る『ギフト』能力者じゃ。強力な味方となろう」
「は! ソノお言葉肝に銘じ命を懸け、我が新しき家族のため力を尽くさせて頂きます!」
「うむ。その言葉、心強く思うぞ。
早速じゃが、例の薬物の件ユウと二人で納品書にあった場所に探りを入れてみて欲しい。
ピエールには、商工連合を通じてこの書類にある『スカーゲン総合交易』と言う名の会社の実態調査を頼みたい」
それぞれに、皆が頷く。
「じゃあ、動くのは早い方がイイね。
オレとユーリは、今から早速行って来るよ」
「私も、商工連合幹部と供に早速、調べます故、しばらくお待ちください」
「じゃあボクは、皆が出掛けてる間に例の薬物の成分やなんかを、出来るだけ詳しく調べておくのサ」
「他の皆は、手伝えることがあれば協力する事……、以上じゃ」
会議が終わり、それぞれが持ち場に散って行った。
ユーリはアントワーヌさんの事が心配そうだったので、同じく人質になっていた妹を無事に取り戻したイリアさんギトリッシュさん姉弟に託す事にした。
二人は、喜んで彼女の面倒を見る事を引き受けてくれた。
さて、オレとユーリはピエール氏邸のいつもの門番さんから、目的地の場所を地図上にマークしてもらい早速、その『スカーゲン総合交易』と言う会社名義の倉庫らしい場所に向かっていた。
ソノ場所は、街の中心部から大きく外れた、マーベルシュタットの外周部に近い倉庫街の様な場所だった。なんか、いかにもヒミツの取引とかに使われそうな場所だねぇ。こういう場所に来ると、何故かドキドキして楽しいんだよな。
オレの表情を見透かしたのか、
「ユウ、オマエさん顔がワクワクしてるゼ。
昨夜あんだけ暴れといて、もうコレだもんナ……、ユウっていい傭兵になれるんじゃネ?」
思わぬ言葉が飛んできた。
「このオレが、傭兵……ねぇ。
考えた事も無かったよ。
まぁ、ヤル事が無くなってサシャの許可が出たら、ユーリとコンビ組んでもいいよー。
でもさ、ヤル事が無くなるって事は教団潰した後だから需要無いかも」
「確かに、そーだよなぁ……。
それが、コノ世界のアルべき姿なんだろうシ。
なんつっても、カイザール閣下の『平和的統治』が復活するのが一番なんだしナ。
……えーと、地図によればコノ辺みたいだけどよ。
コレって、どーゆーコッタ?
ただのダダッ広い空き地じゃねーカ。
オレぁ、ちょっとソノ辺りの聞き込み行ってくらァ、ココ頼んだゼ」
言うなり、隣の倉庫の角を回り走り去った。
受け取った地図を見ると、場所は確かに間違ってない。
それに、ユーリの言う通り敷地内は、何も不審な物も無い普通の空き地だ。
しばらく、中を歩き回ってみたが、何も手掛かりになりそうな物は無かった。
最近の日付けの納品書なのに、コイツはどーゆー事だろう?
ソコに、ユーリが戻って来た。
「オカシイぞ、ココは少なくとも過去三年間、ズット空き地だそうダ。
確かに、その三年前に『スカーゲン総合交易』なる会社が倉庫と事務所を建てようとしたらしんだが、不思議な事に工事中に作業員が何人か、事故で死んだらしい。それに、もうすぐで完成だって時に何者かに放火されて全焼したそうナ。
んで、その後は『この場所は呪われてる』ってウワサが立って土地も売れずじまいで、それっきり空き地なんだとサ……。
コノ話、どう思うヨ?
周りの倉庫で働いてるヤツラに片っ端から聴いて回ったんだが、皆答えは同じだったゼ」
「長い間空き地になってる場所で、定期的にサインされている納品書の存在……か。
オレが見て回ったトコロ、この空き地自体には、確かに異常は無いけどな。
チョット、試してみたい事があるんだ。
待っててくれ、ユーリ」
言うなり、オレは自分を中心とした半径50メートル程の球体の結界を張った。
なるほどな……、そういう事だったか。
用心深いって点では感心するけど、死者を出した上に火まで付けるとはね……。
ヤッパリ、このドゥアーム教団ってヤツらは一筋縄じゃいかない底の知れない敵だな。
「オイ、ユウってば。
何か解ったのかヨ?
ココは、一体どうなってやがんダ?
解る様に、説明してくれ!」
「モチロンだ。
ヤツラ、文字通り地下に潜ってる。
この空き地の下に、巨大な空間を感知した。生体反応もな。
間違いない……。 敵は、地下に居る!」
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