● 閑 話 新たな家族を迎えて食べる食事は、格別に美味いヨネ!

 隠れ家であるピエール・エラン氏の邸宅でオレ達二人を待っていたのは、今回の『人質奪還作戦』を祝う宴会だった。 


 なんか、

 まぁメデタイ事の後だし、腹も減ってるからイッカ。


 オレとユーリは、とにかくコレでもかっていうぐらい歓迎されながら、場の全員に迎えられた。

 特にカイザールさんは――今夜は、例の変装術を解き素顔だった――オレ達二人の働きを心から称えると供に、ユーリの助力に対し感謝の念を表した。

 コレには逆に、ユーリが恐縮してしまい、


 「カイザール陛下! 

 まさか、コノ街で再びお逢いする機会を頂けるとは……」

 ユーリは慌てて、片膝をつきこうべを深く垂れ言った。


 「助けて頂いたのは、こちらの方であります。

 ですので、改めましててワタクシの方から御礼申し上げたく思っております。


 まずは……金目当てとは言え、アノ邪教側に組してしまった事、心よりお詫び申し上げます。


 そして、この度の作戦の一環として我が愛するアントワーヌの救出にご助力を賜り、誠に感謝しております。


 お聞き及びかもしれませんが、彼女の故郷である小さな集落はアノ教団によって存在自体を消されてしまい、我々二人は行き場が無くなってしまった存在です。


 図々しいお願いなのは重々承知の上、申し上げます。


 この私ユーリ・ランゲンドルフと我が愛するアントワーヌ・ルクルトを、遥か以前にエルネスト様からめいを賜った時と同じく、……、何卒よろしくお願い申し上げます」


 「ユーリ・ランゲンドルフよ……。

 此度の事は、ユウから全て聴いておる。


 アントワーヌ嬢の故郷の件、ワシも心を痛めアノ教団の存在を何とかせねばならんと、改めて考えさせられた。こうなった以上、


 ココに居るメンバー、及び他の隠れ里等に居る者達と同様にの。

 我らは、なのじゃ。

 


 それに……の。

 

 

 ワシは今はもう、国を統べる元首たる存在ではないでな。


 お主ら二人の居場所は、我らと同じく在ると心得ればよい。

 結婚式に関しては、丁度お主らの様な『ギフト』能力者が安心して暮らせる場所がある故、そちらで執り行うがよかろう。

 モチロン、ワシら全員が出席し心からの祝福を贈ると約束しよう。


 しかし、

 だから、その時は守るべき家族のためにソノ力をワシらに貸しておくれ」


 「……我々を、皆様と同じく家族として迎えてくださると仰るのですか。

 ワタクシにとって、アントワーヌと……、以前に賜りましたこのペンダントに勝るとも劣らぬ一生の宝であります! 


 コノ!」


 ユーリは、無意識の内に号泣していた。

 カイザールさんは、オレの方を見てニッコリと微笑んだ。

 オレもお礼の意味を込めて、笑顔を返した。

 さて、ユーリとアントワーヌさんの件はコレでよしっと。



 残るは、新たな問題のだな。

 「カイザールさん、サシャから話聴いてるかもしれないけど人工的に『ギフト』能力を発現させる薬物についてナンだけど……」


 「ユウよ、現物は押収したのじゃったな。

 ならば、明日改めて話すとしよう。今夜は、飲んで食べてユックリ休むがよい。

 何しろ今回の作戦に関して言えば、お主一人で全て片付けた様なもんじゃからの。

 今は英気を養い、明日からに備えるのじゃ……、よいな」


 カイザールさんは、オレの身体を気遣ってくれた。

 「うん、ありがとう。

 薬物や関係書類は全部、オレの『箱』の中だから無くす心配もないし。 

 お言葉に甘えて、今夜はユックリさせてもらうよ……」


 オレは、とにかく腹が減っていたのでユーリとアントワーヌさんを連れてサシャの隣に座り、用意されていた料理を一気にかき込んだ。

 あ、コレ例の街でも指折りの人気店の料理だな。前に食べたのとは違うメニューだけどコノ絶妙な味付けは、一度食べたら忘れられないよ!


 「ユウ、キミは慌てて食べ過ぎなのサ。

 料理は逃げないのダカラ、もっとユックリでいいのサ」

 余りのガッ付き振りに、サシャが笑いながら言った。

 横を見ると、オレと勝負でもしているかの様に一心に目の前の料理を食べまくっている、ユーリが居た。


 ふと振り返ると、コチラも望み通り肉の塊と格闘している『炎纏狼牙』がニヤリと笑ってオレを見ていた……。

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