● 第61話 何か、色んなモノに選ばれた事が判明しました。

 一陣の黒き風が過ぎ、その跡に『炎纏狼牙』が現れ出でた。

 ん? 気のせいか? なんか前より、大きくなってないか?


 「こ、……コイツぁ……一体。

 ユウ、こりゃあ何なんだ?

 コンナ、でけぇ狼見たことねぇゼ!

 でも……、この毛並みといい瞳といい……魅入られるような不思議な美しさダ」


 「お初に、お目に掛かる。

 我が名は『炎纏狼牙』という。

 先程、説明があった通り我は裕の技を認め、その心の中にまう天狼なり。


 お主が裕の『同志』である事は、心の内なる我が聖域にて聴いていた。

 で、あるならば……我にとっても同じであると心得よ。

 但し、裕の心を裏切る様な事がもし在らば……、この我が牙と爪がお主に引導を渡すと知れ。


 それよりも、裕よ。

 我は、またあの『肉』と呼ばれる物をしょくしたいのだが、此処には無いのか?」


 「あぁ、肉な……。

 解かったよ。

 もうすぐ戻るから、それまで待ってくれ。

 随分と、気に入ったんだな。


 ところで……さ、炎狼ってそんなに大きかったっけ?

 今のお前、エテルナよりデカいと思うんだけど……。

 肉喰って、育ったとか……そういう事?」


 「何を言っておるのだ……。

 以前より、大きくなっておるだと?

 我にその自覚は無いが……、考えられるとすればお主の『心』の問題ではないか?

 我は、お主の心に棲まう内なる天狼なれば……」


 オレの心の問題?

 何ソレ?

 意味ワカンネーって。

 チャント解説してくれよ、炎狼!


 「ソイツに関しての説明は、このオレからしてやんヨ、ユウ。


 しっかし、オマエさんは『ギフト』だけじゃなくて、何だっけ……あぁ、そうだ。

 『天狼派古流』とかって武術と、その象徴たる天狼『炎纏狼牙』にも選ばれたって事カ。いや、これはホントにすげぇゼ。

 ……。


 俺がホンキでそう思うのは、これから言う事も関係してるからなんダ。

 さっきの『心の問題』についてのハナシなんだけどヨ。

 コイツには、サッキ渡した【カスタム・カランビットナイフ】が関係してるんダ。

 何つっても、アレは本来なら、そんじょソコイラに転がってる様なシロモンじゃねぇからナ。


 オレも、オマエから受け取って見た時、正直ジブンの目を疑ったゼ。

 何で、こんな伝説級の一級品がココに存在してるのか……ってな。

 ありゃあヨ、相当に古い時代のモンでな。

 こんな言い伝えが付いて回ってる、ホンモノの逸品なのヨ。


 言い伝えってのはヨ……、ってヤツだ。

 だから、ユウは例の【カスタム・カランビット】に相応しい持ち主として選らばれたって事ヨ。


 ……


 あの『武器屋』には他にも沢山のカランビットナイフが在ったよナ。

 だけど、ユウは一発でソイツを手にして気に入った。

 これはもう、互いが呼び合い運命の力――ソンナもんが在ればのハナシだけどヨ――みたいなモンで引き寄せられたとしか考えられネェ事だゼ」


 そこまで一気に話したユーリは一息付き、カフィールを一気にあおった。

 『自分で持ち主を選ぶ』伝説級の【カスタム・カランビットナイフ】だって?

 にわかには信じられない様な内容の話だったが、傭兵経験の長いユーリが言う事だしな。

 何か知らんが、……。


 「ハナシ、続けるゼ。

 何でコノ『炎纏狼牙』が、急に大きくなったのか?

 この狼は『オマエの心の問題』って言ったよナ。

 実は、それは大正解でヨ……。


 ――簡単に言うとダ……。

 !」


 「あのさ、ユーリ……素人にも解かる様に解説してくんないかな?

 全然、イミ不明なんだけど……」


 「おぅ、ソイツぁ尤もだナ。

 まぁ、こっからのハナシで理解してもらえると思うから、ヨク聴いとけヨ。

 コノ事は、今後のユウにとって重要な事になるかもしれねぇしナ。

 まぁ、悪い話じゃネェから、安心してくれヤ。


 


 と、言っても俺ぁ実際にソイツの分析だの研究をした訳じゃねぇから、コ難しい理屈ナンカは不明だがヨ。


 ……コンナ時に、あのサシャ・ガラード先生が居て下さったら、もっと上手い具合に説明出来るんだガ。俺が知ってる最後の消息は、ビューレンシュタットで『ギフト』能力者じゃないかって噂が立っちまってソレっきり行方知れず……おい? 

 何だよ? またむせてんのか?


 サッサと落ち着けヨ。

 このハナシはここからがイイトコなんだゼ!

 よし、落ち着いたみてぇだナ。

 続けるゾ。


 ――その【カスタム・カランビット】はな……、

 使う者の精神力を飛躍的に上昇させたり、精神状態によって使える技や威力も変化するってェ、正にトンデモねぇ武器って訳ヨ」


 精神感応金属だって? 

 現世で言う所のオリハルコンだったり、昔はヒヒイロカネって言われてたアレか?

 確か『オーラを発する、生きた金属』だってのも、どっかで聴いた事あるな……。

 っていう訳なのか。


 「でヨ……、ソイツ今はカランビットの形してるガ、ユウの精神力が何らかの要因で増大したとしたら、恐らくソノ姿形を変化させると思うゼ。

 何つっても、精神感応金属ってのは『』って言われてるぐらいだからナ。


 いずれにせよ、ソイツぁ一生モンの宝みてぇな武器だ。

 コノ先、必ずユウの助けになってくれるはずだゼ!

 まぁ、コノ俺は言うに及ばずだがヨ。



 ――さて、結論だが……よ。


 ……、コレが俺の導き出した答えだゼ」

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