● 第45話 緋色狼一族のために一肌脱ぐ事にしたけど……、結果は未定デス。
『
ココには、食材召喚なんていう便利なギフトを持った爺ちゃんは居ない訳だから、どうしたって何かしらの方法で食材を調達し調理するしかないからだ。
しかし、オレの考えは杞憂に終わった。
目の前には、所謂『ホテルの朝食バイキング』さながらの光景が広がっていた。
新鮮なのが一目で解る艶やかな野菜や果物、食欲を刺激する美味そうな匂いとタップリの肉汁を内包した絶妙な焼き目が付けられた様々な種類の肉。それに、現世で言う所のパスタやパンに相当する様な物。当然ながら、定番のカフィールもココにはあった。ただ、ココのカフィールは隠れ家で飲んでいた物にアレンジが加えられていて、シナモンに似た風味が特徴的だった。
シナモン風味のカフィール、オレは一発で気に入った。
エテルナの話から、食材は全て自給自足で調理は
狼なのに、人間に擬態すれば皆トビキリの美女で料理まで美味いとはね。
絶滅危惧種なのがもったいないよ……。
ココは、サシャの力で何とかならないモノだろうか?
「ねぇサシャ、緋色狼一族って狼なのに女子力メッチャ高いのな。
正直、驚いたヨ!
でも『緋色狼一族には雄が居ない』って言ってたよね? 今までどうやって子孫を残して、種を存続させてきたの?」
オレは素直なギモンを投げてみた。
「ソノ事なら、本人にきくのガ一番早いのサ」
「そぉーですガナ!
水臭い事言わんと、何でもきいておくれやす。
出番が回って来よったからには、今の問いに関してはこのエテルナが責任もってお答えしますよって。
確かに、ウチら緋色狼一族にはオスは居はらしまへん……。
でもナ、ウチらには『
一定期間ごとに、その『神狼様』んトコに皆で集まって祈りを捧げるんデス。
そしたら、毎回決まって祈りを捧げた中の十人に赤子が授かるっちゅう……まぁ、ナントモ不思議なハナシなんですワ。
コレが、ユウ様のギモンに対する答えなんデス」
こりゃ、確かに不思議なハナシだけど引き続き『神狼様』の力を借りれば事は済むんじゃないのか?
「今は『神狼様』の所には行ってないの?
コノ森に居るから、無理って事?」
「ソレがなぁ……、祈りを捧げてたアル時に『神狼様』の祀られてるトコにギフト狩りしとったドゥアーム教団の人間が入り込んでナ……。
コノ姿に擬態しとったウチらの事、ギフト能力者やと思たらしくソノ場で一人を切り殺したんヤ! そして、ソノ邪悪な思想に染まった
ソレ以来や……、どないに祈ったかてモウ赤子を授かる事は無くなったっちゅうワケや。
せやから、ウチらは絶対にアノ邪教を許せんのヤ。
そして、残された一族は皆で旅に出たんヤ……安住の地を求めて……ナ。
ソンナ時、この近くでサシャ様にお会いしてナ、ハナシしたら敵が同じっちゅう事が痛い程よぉー解かったンヤ。
ソレで、お言葉に甘えてご一緒させてもろうとるんヨ」
「なんか、悪い事聞いちまったみたいだね。
辛い事、話させて悪かった。
オレに出来る事があれば協力するから、許して欲しい」
しっかし、悪いコトには全てドゥアーム教が絡んでるとしか思えないな。
トバッチリとは言え、種の存続に関わる問題まで起こしてるとはね……今に始まった話じゃないけど、全くヒド過ぎるよ。
「なぁ、狼ハン……やなかった、ユウ様!
今のハナシ、ホンマですか?
協力してくれはるんやったら、何とかアノ
ウチらにはもう、狼ハンしか居はらへんのデス!」
「エテルナ、もう忘れてしまったのカイ?
今、ソノ事については考えてるって、ボクは言ったはずなのサ……。
コノ問題は単純な様で、実はなかなかに複雑且つ困難なのだからネ。
まずはユウが、己が内なる狼である『天狼』と語り合い、お互いに納得した上じゃないとハナシが前に進まないのサ」
サシャが、エテルナに諭す様に言った。
ソレを聞いたオレは、益々エテルナをはじめとする緋色狼一族を助けたくなっていた。だから迷わず、サシャに質問した。
「ねぇサシャ、オレ出来る事ならヤッパリ緋色狼一族を助けたいんだ。
今『オレが、内なる天狼と語り合わなくちゃいけない』って言ったよね!
具体的には、どうしたらイイの?
お願いだ、教えて欲しい!」
「ユウの気持ちはトッテモよく解かったのサ……。
だからボクは、喜んでソノ方法を教えるヨ。
まず、いつもの様に『天狼派古流』の呼吸法で内なる『天狼』を
理解出来た様な、理解出来ない様なナントモ難解な話だな、こりゃ。
まぁ、でも何事もやってみなけりゃ始まらない!
「サシャ、エテルナ、早速だけど今の話の『内なる天狼との対話』ってヤツ、やってみようと思うんだ。どこか静かで邪魔の入らない場所借りれるかな?」
「モチロンなのサ、ユウ。
ボクの部屋の奥に、瞑想用の部屋が在るからソコを使うとイイのサ」
「ありがとな、サシャ。
じゃあ、とりあえずやってみるヨ……」
こうして、オレにとって初めての挑戦が始まった。
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