● 閑 話 サシャのハナシやら色んな事を、オレなりに考察してみた。 

 コレは……、またエライ事を聴いちまった訳だけど、オレはその余りにデタラメに大きなスケールだったハナシの展開に、正直付いて行けていなかった。


 シッカリしろ、オレ! 

 今の、メッチャ大事な事ダゾ! 

 自分を鼓舞してみたが、大して役に立たなかった。

こりゃ、またオレの脳ミソは久しぶりに臨時休業状態になっちゃうかもな……。


 ハナシをした本人であるサシャの方は、後半は随分と彼女にとってもヘヴィな内容だったはずなのに、話し切った事でアル意味ふっ切れたのか、清清しい表情でカフィールを飲んでいた。

 まぁ、アレだけの長ゼリフの後だし、ノドも渇くってもんだ。

 途中から、リサが全く口を挟まなくなっていた事を今頃になって気付いたが、彼女は既にソファで静かに眠っていた。

 後で、ブランケットでも掛けてやるか、ベッドに移してやるとしよう。


 ソレはそうと……、である。

 オレは、サシャのハナシの考察を勝手に始めた。

 まぁ『』的な、モンだと思ってくれればイイかな。


 最後の言葉に間違いが無いのなら、サシャとリサそしてもう一人、サシャの双子の兄――彼は、行方不明という話だったが――コノ三人が、最後の『ギフト』能力者になるのか。

 そして、リサの能力は今のトコロ不明だが、サシャは……、このノヴェラードを他国に知られない様に隠している。


 『ギフト』能力者の寿命は、約四百年になるっていうのを前に爺ちゃんに聴いたけど、もし仮に万が一にでもサシャが寿命を全うする事無く死に至れば、即ソノ時点からノヴェラードは、数多あまたの他国にソノ存在を知られ、そうなれば彼らの目的はともかくとして、多くの人間達がコノ国に足を踏み入れる事になるだろう……。

 ソレ自体は、――侵略なんかが目的じゃなければ……だけどね――最初は確かに色々と大変かもしれないが、上手くやれば特別大きな問題じゃないだろう。


でもノヴェラードの現状は、ドゥアーム教という『闇』その物が具現化したような、残酷な教義を持つってのが正直なトコロだ。


そんな状態の国に、他国が何らかの利権を求めて押し寄せて来ればイイ様にされてしまう可能性が大きいって、少なくともこのオレは思ってる。

だからこそオレは……、いやコレはオレ独りの力なんかで出来る事じゃないだろうな。


 オレに出来るのは、せいぜい家族であり仲間でもあるサシャやリサ、そしてカイザールさんや爺ちゃんに婆ちゃん達、それからコノ『不帰の森かえらずのもり』で新たに出逢った同胞達を誰一人失う事無く、何とか守る事ぐらいだ。

 ソレだって、かなり困難だってのは承知の上だけどね。


でも

』事なんだ! 

そのためのギフトなのだから……。

 ココでやらなきゃ、サシャの一族が滅んでまでノヴェラードの未来をギフト能力者に託した意味が無くなる! そして、ソレはオレの本当の両親にも同じ事が言えるのだ。


オレ達は持てる寿命が尽きる前に、可能な限りソノ力を結集しんだ。


でも、ノヴェラード最大にして最も重要な拠点である『聖都 レーヴェンシュタット』では、カイザールさんの精神作用系最強ギフトである平和的統治の効力も、ヴァレリア婆ちゃんの天候管理の力も、のが実情な訳だ。

 

 前にサシャは『』と言ってたんだっけ……。

 そうだ……、もう一点重要な事を忘れていた。

 何故、平和的統治や天候管理の能力は無効化されているのに、サシャのノヴェラードを隠している力だけは、正常に機能しているんだろう?

 コノ点も、例のカラクリに何か関係があると考えるのが妥当だな。


ソノ謎のカラクリを突き止めるためにも、『Gの書』回収作戦は絶対に成功させなくちゃいけないな。

オレは、明日の『作戦会議』に思いを馳せながら、決意を新たにした。


ソファの方を見ると、いつの間にかサシャもリサに寄り添うようにして、静かな寝息を立てていた……。



――こうして、オレはコレまでに聴いた話や新情報に関する考察をひとまず終え、夜は静寂と共に更けていった。

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