● 第43話 命題:『コノ世界に、本当にギフトの力は必要だったのか?』

 「ソノ顔だと、ボクの話をとりあえずは受け入れてから、後で考察する事に落ち着いた様ダネ。

 では、続けるよ……。


 ボク達の種族は、このノヴェラードという島国だけが他国に比べ圧倒的に文明レベルが遅れている事を危惧してね……。少しでものサ。

 モチロン、『ギフト』を授ける事が出来たのは、種族の中でも本当に極限られた一部の者だけだったのだけれどネ。


 はじめは、あのカイザール様に『』の能力を授けたり、ヴァレリアに『』を出来る様にしたおかげで、それまで正にカオスと言ってもイイ状態だった、コノ島国は徐々に統率が取れていきソコに生きる民達の生活レベルも向上していったのサ。

 コノ事は、既にカイザール様から聴いているヨネ?

 こうして、ただの島国だったコノ場所に『統一国家 ノヴェラード』が建国され、コノ国はどんどん豊かになっていったのサ……」

 サシャは、ここで一息つきカフィールを一口飲んだ。


 「そしてある程度、国が富み文明度も上がって来た所で、ボク達の種族はアル事を試したンダ。

 それはネ……『』というモノだった。

 ユウは、もう解っているハズなのサ。

 コノ試みが在ったせいで、二代目元首を務めた『クリストフ・ロイス・ノヴェラード』には、ギフトが与えられなかったという訳なのサ……。


 コノ試みには、モチロン理由があってネ。

 ノヴェラードの民がいつまでも『ギフト』の力に頼り切りでは、結局のトコロ自立出来ずじまいで、いつか訪れるであろう『』が来た際に、他国に易々と侵略を許す様な目に合わない様にスルためだったのサ……。


 そして、結果は……ボク達の種族が想定していた以上の物だった。

 そんな風に言って、喜びまた安心していた父の顔を今でも思いだすのサ。

 コレに関しては、一重にクリストフ様の人柄や志に因るトコロが大きいのだけれどネ。


 そう、……コノ時点までで言えば『ギフト』と呼ばれる能力は、ノヴェラードで生活を営む民達にとって本当にイイ意味での助けになっていたし、ボク達の種族が抱いていた危惧を払拭するに余りある『真の君主』と呼ぶべき存在をも、生み出す事が出来た訳なのサ。


 でもネ……、このノヴェラードでこの後に起きた一つの出来事をきっかけに、ボク達の種族までもが真っ二つに別れてしまい、後の大きな悲劇に繋がる事になるんダ。

 ソレは、順を追って話すからもう少し待って欲しいのサ……」


 ここまで話したサシャは、遠い目をしていて何処かとても哀しげだった。

 ハナシを始めた時の、アノ決然とした表情は見る影も無かった。

 ソレに気付いたオレは、


 「サシャ、大丈夫かい?

 今のキミの顔からは、話し始めた時のが、明らかに無くなってる。って事は、これからサシャが話そうとしている事はトンデモなく辛い事なんじゃない?

 無理して話す事なんて無いんだよ。

 ソノ話を聴かなくたって、オレはずっとキミと一緒だよ!」

 今のオレに出来る事は、彼女を励ます事だけだった。

 もっと、……もっと彼女の支えになる様な事は出来ないのか?


 「ユウ、ボクには……ネ。

 今の言葉だってモチロンそうなんだけど、キミにノヴェラードで出逢えた事、そして出逢ってから今までの時間ソノ全てが、ボクがこれからも生きていくための拠り所よりどころになっているのサ。

 だから、心配しなくても大丈夫なのサ」

 そう言って、いつもの笑顔を返してくれた。

 

 「……じゃあ、ハナシを続けるのサ。

 そう、アル時ノヴェラードで、ボク達の種族を正に二分する様な出来事が起きてしまったんダ。

 『二代目元首 クリストフ・ロイス・ノヴェラード』の毒物による暗殺、という事件がネ。

 そしてユウも知っての通り、コノ国の内情は加速度的に、更に悪化の一途を辿って行ったのサ。


 ソノ悪化が進む中で、キミのご両親は亡くなってしまった。

 もしボク達の種族が人間達に『ギフト』の力を与えていなかったら……、キミは今もご両親と幸せに暮らしていたかもしれないネ。



 『



 コノ命題については、今もソノ答えは閉ざされた扉の中に在って……ボクは、今現在ソノ扉を開ける事が出来ていないのサ。

 でもネ……、ボクはユウに出逢えてコウ思ったんダ。


 『コノひととなら、いつかソノ扉の鍵を手にして中に眠っている何らかの答え……というか景色の様なモノを目にする事が出来るだろう……』ってネ。チョットばかり、表現が大袈裟になっちゃったけどソノ点は気にしないで欲しいのサ」

 サシャは、同じ場所に座り疲れたのか立ち上がって、思い切りノビをしてから足を組んでソファに座り直した。


 「さぁ、いよいよボクのハナシも佳境なのサ。

 ノヴェラードの内情が悪化し、あまつさえ反ギフト思想を掲げる邪教なんていうモノが広まるに至り、ボク達の種族もまた『』と考える者達と、逆に『』という意見を持つ一派に二分されてしまったのサ。


 コレは哀しい……、ホントに哀しい出来事だったのだけれど、事ココに至っては、誰にも止められなかったと思うのサ……。

 でもマサカこの後、二分された種族の過半数を占めていた後者『ノヴェラード抹消派』の連中によって逆の考えを持っている者達が狙われ、命を奪われる様な事にまでコノ対立が発展してしまうなんてネ。

 コレは、サスガに想定外だったのサ。


 ボクらの両親は、前者の考えの持ち主だっタ。どうしても、みたいなのサ……。だから、当然の様に自分の子供達に危険が及ぶという予測をしていてネ。

 実は、ボク達の家族には子供が三人居たんだけど、父も母もボクらを守るのに必死だったのサ。

 ソノ点は、ユウのご両親と気持ちは全く同じだったと思うのサ……。


 一方で、父はもっと大局を見ていたんダ。

 この世の力関係や、文明レベルにまで干渉出来てしまう『』……。

 父はそう考え、ボク達種族の命の源となっていた『神珠オーブ』ってヤツを破壊する事を決意したのサ。

 我が父ながら、何とも大胆なコトを考えたモノだと今もボクは思っているヨ。


デネ……、一方の母はボク達の種族の中で、人間に『ギフト』の能力を授けることが出来る数人の中の一人だったのサ。

母は、自分の子供であるボク達三人の命を守るために、アル決意をしたんダ。

 彼女は、『』のサ。

 そして、コノ事は、種族の中で『』とされるモノだったのだけど、母がソノ罪によって罰せられる事は永遠になかったんダ。


 父が母とタイミングを合わせた上で、同志達と『神珠』を破壊したからなのサ。

 

 そして、ボク達三人は人間に転生した事で生きながらえる事が出来たというワケなのサ……。


 コノ事が起きたのが、ボクが五歳でリサが一歳、そしてボクには双子の兄が居るのだけどネ……、ナゼか行方が分からないのサ。

 何かが起きて、上手く転生出来なかったのかもしれないし、他に別の理由があるのかもしれないネ。


 理解の早いキミならもう解っているハズなのサ……。


 『』という事をネ……」

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