● 第31話 トラブルに関する簡単な考察 & サシャの仲間への想い。

 ゼット爺さんの後に続き『旅人の憩いの場』へと戻る途中で、隣を歩いていた双子コスプレのサーシャがさりげなく、ここに向かった時と同じ様に手を繋いできた。

 ……って事は、またアレかな? 教えてもらったばかりの術、『接触念話せっしょくねんわ』。


 現世には触れていなくても、この術と同じ様に直接語り掛けるテレパシーなんて超能力があるけど、コレは『触れている相手とのみの会話』ってとこがイイよね。だって、事あるごとに彼女と手をつなげる訳だし。個人的に、とても尊い術だと思うよ、ホント。

おっと、コノ重大な局面でチョット不謹慎だったかな……。


 ≪ねぇ、ユウ。さっきの橋の所、キミはドウ思った?≫

 早速、サーシャから念が飛んできた。

 ≪うぅ~んと……。思うトコロが沢山あり過ぎて、チョット長くなるけどガマンしてね。

 とりあえずは、あれだけの旅人が居たにもかかわらず流されたりケガしたりした人が居なくて良かったって事。


 そして次が、あの鉄砲水が起きた原因は何なのか? ここでは、今までアンナ事無かったって言ってたしね。ゼット爺さんは『自然のなせる力によって橋は流された』って言ってたけど、オレ個人の見解はチョット違うんだ。アレは自然の力じゃないんじゃないかと思うんだよね。


 だとすれば、考えられるのは、例えば『』とか……ね。

 でも、アレが『ギフト』の能力ならオレ達の敵になる理由はないと思うから、あんな事をした動機は何なのか? ソコはカナリ気になるね。


 後は……、やっぱり不思議に思うのはかな。オレ達を本気で狙ったのなら、橋の上に居る時に鉄砲水で襲えばいいわけだし……。もっとも、そう来たとしても結果的には『箱』の力で何とでもなっちゃうんだけどね。

今は、こんなトコかな≫


 ≪ユウは、やっぱりボクが思っていた通りの人だったのサ。あの現場を少しの間見ただけで、ソコまでの考察をするなんて……。よかった……キミがキミで!

だから、キミだけに今言えるヒミツを一つだけ伝えておくのサ。


 あの鉄砲水が何のために橋を流したのか……。ソレはネ、このまま橋を渡って向こう岸へ行けば、多数の敵――例のドゥアーム教団の連中さ――に待ち伏せをされて、襲われていたからなのサ。


確かに、ユウの『箱』の力を使えば教団の連中を倒す事ぐらい容易たやすいのは十分承知の上だけどネ。事はソレだけじゃ済まないのサ。出発前に『旅の仲間の中に悪意を持つ者が居る』っていう話があったのを憶えているだろう? 


 コノ鉄砲水は、その事でもあるのサ……。今はまだココまでしか言えないけど……ホントは、ユウには全部話すべきなのかもしれないけど、……話すタイミングについては、このボクを信じて任せて欲しいのサ。

 勝手なハナシでゴメン。でも、お願いだからボクの事を信じて!≫


 ≪まぁ、正直言えば今スグにでも全部知りたいのは山々だけど、オレは何があってもキミを信じてる。今更『信じて』なんて言わなくていいんだよ。

 話せる時が来たら、話してくれりゃそれでイイさ!


 ……それにしても、向こう岸で待ち伏せされてたとはね。オレ達の動きは、敵に筒抜けってワケだ。その情報を流してる人間が一行の中に居て、ソイツも助けるつもりでいるって事なんだね?≫


 ≪そうなのサ。ソノ人は、自分の意志で敵に力を貸している訳じゃないのだから……。たとえどんな理由があったとしても、仲間を裏切る様な真似をする事は決して許されるべきじゃないとボクも思うのサ。でも、やっぱり本当の仲間は何か事情があるのなら、何とかして救いたいのサ……。


 ボクは、今までいつも独りきりだったけど偶然ヴァレリアに再会して、あの隠れ家でユウ達に出逢って家族にもしてもらった。そして、今はこんな風にソノ家族でもある仲間達と一緒に旅をしている……。ユウは言うまでも無いけど、あの隠れ家で一緒に時を過ごした皆は、ボクの人生に『』とも言うべき光を与えてくれた大切な人達なのサ。


 だから、……だからボクは出来るなら、たとえ今は悪意を持っているのだとしても、ソレが本意じゃないなら仲間である限りは、何としても助けたいのサ≫


 ≪わかったヨ! オレに出来る事があれば何でも手伝うから、いつでも言うんだよ。だけど、ソノ人を助けるために自分の身を危険にさらす様な事だけはしないコト!≫


 そこまで話した所で、『旅人の憩いの場』に到着した。

さっき座っていた、座敷の様な場所には既に先客が居て空いていなかったので、建物の反対側にあったテーブル席に陣取る事になった。ココは店内の一番奥に位置しており、周囲の様子が把握出来る。これから『秘密の作戦会議』をするオレ達にとっては絶好の場所だった。


 皆がそれぞれ席に付き、居住まいを正した所でゼット爺さんが『作戦会議』の開会宣言の如く、重々しく言った。

 「さて、それでは我々の今後の行動について話し合おうと思うが皆、心の準備はええかの?」

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