● 第4話 記憶が無いので、異世界で爺さん二人と同棲します!
しっかし、世の中には不思議な事があるもんだよねぇ~。
これからの人生、不思議な夢には気を付けた方がいいかもしれないな。
相手の都合で、突然どっか別の世界に連れて来られちゃうかも知れないんだから……。
でもさ、コレって一種の誘拐って事になるんじゃないか?
まぁ、身代金の要求は多分無いと思うけどね。
夢に呼ばれて、所謂『異世界』ってヤツに来てしまった――来たくて来た訳じゃないんだけどね――オレは、次第に自分の頭の中が通常営業に戻っている事に
気が付いた。
何故かは不明だが明らかに冷静さを取り戻していて、自分が大学生である事も今が夏休みだって事もちゃんと認識出来ていた。
つまり、少なくとも『現世での記憶』はある訳だ。
奇妙だったのは何故かこの世界の空気に、何処か懐かしさに似た感覚を抱いていた事ぐらいかな……。
その様子を見て取ったのか、はたまた心中を察したのかはわからないが、
「どうじゃ、お主コノ世界の事を憶えておるかの?」
さっき『ギフト』と言った方の老人の声だ。包み込まれる様な優しさを持った
声だった。
「いや、あの……全く憶えてません。
そもそも、さっきムリヤリ連れて来られた訳だし、全然知らない場所だし『憶えてる』とかって、全く別の問題でしょう」
正直に答えたオレに飲み物らしきモノを手渡しながら、もう一人のジーサンが
「やはりアノ時に、記憶を失った様ですな。
最初から全部説明して、それを理解するまでには少々時間が必要かもしれませんが、ココは今言える全てを話した方がよいでしょうな」
妙に重々しく響く声で、そう言った。
「うむ。少なくとも今は、それしか無いかのぉ……。
と、なれば始めるのは早い方が良かろうて。
少し長うなるやもしれぬが、ワシの話を聞くがよい。
その前に、名乗っておこうかの……。
ワシの名前は、カイザール・ゼニス(Z)・ノヴェラードという。
今は世捨て人の様な身の上故、ミドルネームの頭文字『ゼット』と名乗っておる。まぁ通称という奴じゃ」
続いてもう一人の方が
「エルネスト・ヘルブロス・バーンじゃ。よろしくのぉ」
こっちのジーサンは、常に重々しい感じの口調で語る人なんだなぁ……なんて思った。
「えぇと、オレ……いや自分は、カミハラ・ユウと言います」
こちらも、ちゃんと名乗っておかないとね。
そう、どこの世界でも礼儀は大切。
「ほほぅ、ソレがお主のアチラの世界での名前というわけじゃな。
我らの世界に馴染む様、お主の事は今後『ユウ・カミハラ』と呼ぶ事にする故、お主も他人にはそう名乗るがよいぞ」
何か勝手に名前がひっくり返されちゃったよ。
でも、異世界で生きるためにはしゃーないか。
不思議と、違和感無く受け入れられたしね。
この時はとりあえず互いに名乗り合っただけだが、この出会いがこの先コノ異世界に大いなる変化をもたらす事になるのだった。
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