13 リーゼ
私の住んでいた屋敷の裏庭に、小さな建物が出来ている事に気付いた。
きっと何かの倉庫か何かだと思っていた私は、始めは特に気にしてもいなかった。
しかし、その建物には見慣れない人たちが毎日来ていて、執事さんと共に何かを行っている。私はその様子を窓から眺めて、いつしか興味も持つようになった。
ある日、私は周囲の目を盗んで裏庭の建物に行ってみた。倉庫にしては少し小さく、煉瓦造りの随分としっかりとした作りで、小さな窓が高い位置にある不思議な形をしている。
入口は鉄格子で出来た扉があり、鍵がかけられていた。中を覗いてみると、人一人分位の隙間があり、すぐ中にもう一つ建物がある。二重構造の建物だった。
中の建物の入り口は、外の鉄格子の入り口からは見えない。外からは同じような煉瓦造りの壁が見えているだけだ。
中に何があるのか興味津々の私は、何とか中を覗こうとするがよく見えない。耳をそばだてると、かすかに人の啜り泣きのような音が聞こえた。
「誰かいるの?」
私は興味本位で声をかけてみた。中から返っていた声に私は耳を疑った。
「お姉ちゃん?お姉ちゃんなの?」
私が聞き間違うはずがない。それは紛れもなく妹の声だ。
妹は別の部屋にいると信じ切っていた私は、困惑し、なぜこんな所に妹がいるのか分からず理由を聞いてみた。
妹は悲痛な声で、自分は呪われてしまったから、と言った。
私は妹が突然暴れ出した事を思い出した。あれが呪いなのだろうか。
どうして、どうしてこんな事に。何故ここに入れられているの。こんな牢屋みたいな所に。
「分からない。分からないよ」
そう妹は泣き始めた。私はすぐにその場から屋敷にいる母の元に走った。
母は自室に居て本を読んでいた。私は開口一番、どうして妹にあんな酷い事をするの、と母に大声で怒鳴った。
母は突然怒鳴り込んできた私に凄く驚き、強張った表情で私の元にやってきて私を抱きしめた。
「あの子は呪われてしまったの。それが治るまでああするしかないの。分かって頂戴」
母はそう言って涙を流す。私はそれ以上何かを言う事が出来なかった。
でも、大切な妹をあのままにしておく事なんて出来ない。私は母の手を振りほどいて部屋を出て行き、執事の元へ向かった。
執事に妹の呪いとは何か、どうやって治すのか。そういう事を聞いてみたのだが、返答は何も分かりません、だった。
何人もの祈祷師や治癒の魔術師や、呪術師を呼んだらしい。私が屋敷の窓から見た光景はこれだった。
しかし誰も治せないし治療法も分からない。出来る事は手を尽くしていると言われた。
そんな事言われても私はそれで納得は出来ない。大人たちが出来なくても私が何とかするしかない。たった一人のかけがえのない妹だもの。
私はまた妹のいる建物に走った。扉の前に立ち、鉄格子を力いっぱい両手で握りながら、お姉ちゃんがなんとかするから、必ずここから出してあげるから、と大声で言うと、
「お姉ちゃん、ここから出たいよ。お姉ちゃんと一緒に居たいよ」
耳を澄まさないと聞こえないほど小さな涙声がした。
私はすぐに走って、メイドの制止する声を無視して屋敷を飛び出し、王宮の隣にある国立図書館に向かった。
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