1405.構文篇:設定ミスを早期に見つける
今回は「矛盾」わかりやすく言えば「設定ミス」についてです。
どんな物語でも「設定ミス」ひとつで台無しになります。
飛べない鶏が大空を舞うような出来事は、つねに落とし穴として存在しているのです。
設定ミスを早期に見つける
小説の推敲では「矛盾」つまり「設定ミス」が最も重要です。
どこかに「設定ミス」があって、飛べないペンギンが空を飛ぶような根本的な失敗を犯してしまいます。
まぁペンギンが空を飛ぶ世界観なのかもしれませんが、説明がなければ読み手は理解できようはずもありません。
プリンターで紙に印刷して推敲する
推敲を行なうとき、必ずプリンターで紙に縦書きで印刷して行なってください。
そのとき両面印刷はしないように。必ず片面印刷にしましょう。
推敲のときに赤ペンを用いるため、両面印刷にすると赤ペンがにじんで裏写りしてしまうのです。また推敲して文章の順序を入れ替えたくなったら、ハサミで入れ替える段落を切り取り、物理的に順序を変えられます。
縦書きを推奨するのは、「紙の書籍」となった際、すべての小説は縦書きになるからです。つまり縦書きで読んでみて違和感を覚えるかどうかをチェックすると、推敲がより正確になります。
インクジェットプリンターを所有している方も多いと思いますが、赤ペンで文字がにじんでしまうので、推敲ひとつとってもレーザープリンターが有利です。
カナヅチのはずが泳いで助ける
主人公をスーパーマンに仕立てていたとします。時に川で溺れている子どもを見つけた主人公が、川に飛び込んで救助するのです。
一見するとなんら問題はありません。しかしもし主人公がカナヅチ、つまり泳げない「設定」だったとしたら。明確に「矛盾」「設定ミス」を犯していますよね。
この手の「設定ミス」は有名作品でもよく見られるのです。
たとえばマンガの北条司氏『CITY HUNTER』の主人公・冴羽リョウは「飛行機に乗るのが苦手」という「設定」が終盤で披露されます。しかしアニメでは何度か平然と飛行機に乗っているのです。結局アニメでもそのときだけは「飛行機に乗るのが苦手」という「設定」にして乗り切りました。過去は訂正できないので、現在を押し通したわけです。まさに「無理が通れば道理引っ込む」。まぁマンガとアニメですから、面白ければ多少無理やりな「設定」でも皆が楽しく観ていたんですよね。
日本では、小説やマンガのドラマ化・アニメ化に際して、設定を追加するケースがひじょうに多い。キャラクターを立てようとしての脚本家の作為です。しかしときとして原作側が改変させられるような無理を通します。
もしドラマ化・アニメ化されるとしたら、原作者はキャラクターの「設定」を余すところなくきちんと脚本家に渡しましょう。配慮のできる人は他人が「設定ミス」を犯さないよう事前に動くものです。
「設定ミス」をされてから「本当はこんな設定なんですよ」では、脚本家もよい気持ちにはなりません。
小説を読んでいるとカナヅチなのに、アニメではスイスイと泳いでしまう。これでは小説に説得力が出ません。
原作が小説なら、なるべく早いうちにキャラクターの「設定」を明かしておくべきです。『CITY HUNTER』の「設定ミス」も、冴羽リョウが「飛行機に乗るのが苦手」という「設定」が出てきたのがかなり遅かったのです。それまでの間、意図してか無意識かはわかりませんが原作で飛行機はまったく描かれていません。だから脚本家は「当然飛行機にだって乗れるはず」だと思ってしまったのです。では脚本家が悪かったのか。北条司氏が作中で「飛行機に乗るのが苦手」の「設定」を早く出していれば問題はなかったのです。そのエピソードがマンガになるまで、そういう「設定」だと明かしていないのですから、脚本家は悪くありません。
「世界一のスイーパー」が「飛行機に乗るのが苦手」という弱点の「設定」は落差があって魅力的に映ります。それを物語の終盤まで引っ張ってしまったのが悪かったのです。
小説賞・新人賞の締め切りまで余裕を持つ
本編を書きあげるのに締め切りギリギリまでかけてしまう方が多いと思います。
しかし作品の質を高めたければ、締め切りには余裕を持つべきです。余裕がないと中途半端な推敲しかできず、とても粗い物語にしかなりません。
今年の「小説賞・新人賞」の募集が始まってから執筆を始めるのでは遅すぎます。どうせ同じ「小説賞・新人賞」は毎年、もしくは二年に一度は開かれているはずです。つまり次回に応募するつもりで書くくらいの余裕が欲しい。
どうしても今年の「小説賞・新人賞」へ応募したいのなら、期日の一か月前までには本編を書き終えてください。その後一か月間は推敲に血道をあげるのです。徹底的に推敲しましょう。一か月間も毎日推敲していれば、期日までにはあらかたの推敲が終えられるはずです。
そのためにも速筆家はかなり有利です。
そもそも「紙の書籍」化されてヒットしたら、短時間で続編を書かなければお払い箱になってしまいます。
年に単行本四冊がだいたいの目安です。つまり三か月で十万字を書きあげて推敲して校正する。これを年に四回繰り返すだけの能力が必要です。
即戦力を目指すのなら、「小説賞・新人賞」の募集開始を知ったらすぐに書き始め、応募期限まで徹底的に推敲した作品を応募するのがベスト。
こうして書きあげられるだけの速筆家であれば、「紙の書籍」化が決まっても滞りなく出版まで漕ぎつけられます。せっかく大賞や優秀賞で書籍化のチャンスを手に入れても、その後一年も推敲と直しを続けていると、そのうち読み手から忘れられてしまうのです。
「小説賞・新人賞」を開催した出版社レーベルが最も恐れるのは、このせっかく賞を授けたのに「読み手から忘れられてしまう」ことです。これでは「小説賞・新人賞」を開催した資本投下が水泡に帰します。
来年二〇二一年に消滅する『ピクシブ文芸』はなぜ第一回が開かれただけで「ピクシブ文芸大賞」をやめてしまったのか。まさに編集と書き手が推敲と直しに時間をかけすぎて、「大賞授与作」という話題性が遠く過ぎてからの出版となってしまったからです。せっかく開催したのにかかった費用の割に幻冬社へのリターンが少なすぎました。話題性がなくなってから出版したのですから当然と言えば当然です。
その逆なのが「第5回ポプラ社小説大賞」の大賞作・齋藤智裕氏『KAGEROU』です。すでにご承知の俳優・水嶋ヒロ氏の作品となっています。
この作品は書籍をコンビニで立ち読みしましたが、支離滅裂もよいところ。よくこのレベルの作品に一千万円の賞金を与えようとしたものです。こちらはろくな推敲や直しをせず、話題性があるうちに出版して大々的に売り出そうと、商業主義が先行しました。結果として悪評が立ってしまい「ポプラ社小説大賞」はこの第5回が最後となったのです。そして改めて「ポプラ社小説新人賞」がスタートします。
つまり商業的に成功させようと、ろくな推敲も直しも入れなければ「小説賞・新人賞」の格を落とします。それを他山の石として完璧な推敲と直しを加えるだけの時間をかけてしまえば、「大賞授与作」という話題性が忘れられた頃の出版となるため商業的に失敗するのです。
だからこそ推敲と直しの時間をじゅうぶんとるのが「小説賞・新人賞」応募での至上命題なのです。
最後に
今回は「設定ミスを早期に見つける」について述べました。
「小説賞・新人賞」への応募作は、とくに推敲と直しに時間をかけられるよう、締め切りの一か月前には書きあげてしまいましょう。そして一か月を丸々使って徹底的に推敲し、直しをして、そのまま「紙の書籍」として販売できるレベルにまで質を高めてください。
現在の「小説賞・新人賞」は即戦力な作品以外、評価されない時代となったのです。
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