1206.技術篇:テーマを信じろ

 今回は「テーマ」を信じることについてです。

 あなたが書きたい作品はマイナーな「テーマ」かもしれません。

 それでは多くの方に読まれない。だからメジャーな「テーマ」に挑まなければ。

 そう考えているうちは大成しません。





テーマを信じろ


 ある「テーマ」を据えて小説を書いているのに、なかなか読み手が増えなくて困っている。よくあります。

 ここで「今の流行りは「主人公最強」だから、自分も「主人公最強」をテーマにして書こうかな」とは思わないでください。

 それは書きたい「テーマ」と、人気のある「テーマ」がごっちゃになっているだけです。

 書き手は読み手に合わせようとし、読み手はこなれていない文章を読まなくてはなりません。双方にとってあまり好ましくない作品にしかならないのです。



 

マイナーでも信じ抜く

「テーマ」にはメジャーなものとマイナーなものがあります。

 小説投稿サイト『小説家になろう』の「ハイファンタジー」ジャンルで、メジャーな「テーマ」は「主人公最強」「俺TUEEE」「チート」「無双」の類いと、「追放」「ざまぁ」「復讐」の類いがあります。とにかく主人公がとんでもなく強い、裏切られたら必ず見返してやる。そういう「テーマ」がウケるのです。「勧善懲悪」ものはまさに「主人公最強」系「ざまぁ」系の見せどころでしょう。

 池井戸潤氏『下町ロケット』『半沢直樹』シリーズなどの企業小説も、基本的には「勧善懲悪」ものです。

 ですが群像劇が書きたい場合、これらはとても使いづらい「テーマ」になります。「成り上がり」「立志伝」の類いは群像劇に向いた「テーマ」です。吉川英治氏『三国志』は劉備が蜀の皇帝に「成り上がる」物語。マンガの弘兼憲史氏『島耕作』シリーズも主人公が「成り上がる」物語。

 一見すると「成り上がり」はマイナーな「テーマ」です。しかしハイファンタジーのランキング上位にひとつは入っている「テーマ」でもあります。

 マイナーな「テーマ」でも人気はとれるのです。

 意外かもしれませんが、マイナーな「テーマ」で検索をかけている方は多い。

 なぜならメジャーな「テーマ」で検索をかけると、作品数がありすぎてどれを読んでいいのかわからない。でもマイナーな「テーマ」なら引っかかる作品数がそもそも少ないので、じっくりと吟味できます。

 だからマイナーな「テーマ」しか書けない書き手でも、ランキングに載るチャンスはあるのです。

 たとえマイナーでも、あなたが書きたい「テーマ」を信じてください。

 その「テーマ」を待ち望んでいる読み手は、想定外に多いかもしれません。

 どういった「テーマ」なら、の基準は過去のランキングにしかないので、ランキングを定点観測しておきましょう。

 またランキングに入っている作品の「キーワード」をチェックしていれば、ウケる「テーマ」がなんとなくわかります。

 先ほどのマイナー「テーマ」である「成り上がり」もちゃんとランキングに載っているのです。




信じきれなければ説得力が出ない

 マイナーな「テーマ」にも一定の需要はあります。

 少ないながらも需要は確実にあるのです。

 ですが「反応が少ないから」「他のほうが読まれるから」という理由で、人気のある「テーマ」へ流される方が一定数います。

 それではいつまで経っても、あなたの作品に説得力が出ません。単に人気に流されるだけのミーハーでしかないのです。

 どんなに人気のない「テーマ」でも、信じて書き続けていれば、数少ない読み手が確実に愛読者となります。

「群像劇」より「勧善懲悪」が好まれるからといって、「勧善懲悪」にばかり作品が集中したら、「群像劇」ファンはどうすればよいのでしょうか。

 投稿される数少ない「群像劇」をたいせつにするのではありませんか。

 つまりあなたが書きたい「テーマ」がどんなにマイナーでも、投稿して掲載すれば少ない読み手が確実に読んでくれるのです。

 この例として映画化もされた住野よる氏『君の膵臓をたべたい』があります。

「難病」ものという、ひじょうにマイナーな「テーマ」でしたが、そういうものを読みたがる「プロ」がいて、その方に推薦させる形で「紙の書籍」化を果たしたのです。そして 実写映画になり劇場アニメにもなりました。

「マイナー」だから誰にも読まれないのではないか。

 住野よる氏はそんなことを考えたのでしょうか。

 おそらく考えたはずです。『小説家になろう』で「難病」ものを読みたがる方は少ない。それでも自分を信じて作品を仕上げ、完結させたのです。

 信じ抜いた作品だからこそ、マイナーな「テーマ」でありながらも抜群の説得力を持ちました。

 あなたは流行りに流されそうではありませんか。

 自分を、考えた物語を信じきれているのでしょうか。

 少しのためらいも、読み手にはすべて筒抜けです。

 たとえマイナーな「テーマ」でも、その物語を信じきりましょう。いつか誰かが読んでくれる。読んでくれた方が評価してくれたらそれでいい。それがいつになってもかまわない。

 一心不乱に信じきって書き続けていれば、いつか日の目を見るでしょう。

 それは書いたことすら忘れてしまった頃かもしれません。

 ですが信じきれなければ評価される日は永遠にやってこないのです。

 どんな「テーマ」であっても、需要は必ずある。

 信じきれれば、書き進める意欲にもつながります。

「評価されるのは今でなくてもよい。一週間後でも一か月後でも一年後でも三年後でもかまわない。きっと誰かが読んでくれて評価してくるだろう」

 そのくらい強く信じきれば、たとえ連載している今が無評価でも腐る必要なんてありません。

 あなたが次の『君の膵臓をたべたい』を書いているかもしれないのです。

 とくに「プロ」は自分の得意な「ジャンル」や「テーマ」の感度がひじょうに高い。

 小説投稿サイトも「プロ」にとってはおおいに刺激を受ける場でもあります。

 そんな「プロ」が今流行の「主人公最強」「ざまぁ」を読んで、どんな刺激を受けるのでしょうか。おそらくなんの刺激も受けません。単に「今ここではこんな小説が流行っているのか」と確認するくらいなものです。


「プロ」が小説投稿サイトを利用するのは、刺激を受けるため。けっして模倣するために利用するのではありません。もしそうなら、その「プロ」は「主人公最強」「ざまぁ」ものを書いて小説投稿サイトの人気作品との差別化も図れない。つまり埋没してしまうのです。「プロ」が一度埋没してしまうと、ほぼ引退状態になります。次の作品がよほど斬新でないかぎり、「プロ」でい続けられないのです。

 だから「プロ」が小説投稿サイトのトレンドを追うようになったら末期症状だと思ってください。程なくして引退するでしょう。





最後に

 今回は「テーマを信じろ」について述べました。

「テーマ」にはメジャーとマイナーがあります。当然メジャーな「テーマ」は多くの人に読まれるのです。しかしマイナーな「テーマ」を好むツウは必ず存在します。彼ら彼女らはそういうマイナーな「テーマ」を読みたいがために小説投稿サイトを利用しているのです。

 どんなに読まれなくても「テーマを信じて」ください。

 信じ抜けばいつか好転する日が来るものです。



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