1142.鍛錬篇:小説家になりたいのか小説が書きたいのか

 今回は「やる気」「モチベーター」についてです。

「モチベーター」は「動因」と「誘因」に分けられます。

「やる気」が出るには「動因」と「誘因」の割り振り方が肝心です。





小説家になりたいのか小説が書きたいのか


 人はそれぞれ「やる気」つまり「モチベーション」を持っています。

「小説を書きたい」という「動因」があれば、それに突き動かされるように小説を書くです。

 もうひとつ「やる気」を呼び起こすものがあります。

「小説家になりたい。小説をたくさん売りたい」という「誘因」です。

「動因」と「誘因」を掛け算したものを「モチベーター」と呼びます。




動因が弱いとそもそもやる気も出ない

 あなたに「小説を書きたい」という強い「動因」がなければ、そもそも小説を書こうとする「やる気」は出ません。これは「モチベーター」の値を考えればわかります。「動因」が0であれば、「誘因」がどんなに高くても「モチベーター」の値はつねに0です。

「小説を書きたい」という「動因」もないのに、「小説賞・新人賞」を獲りたいと思っても、筆はいっこうに進みません。

 少なくとも「小説を書きたい」という「動因」があれば、「やる気」が湧いてきます。

 誰に認められるでもなく、ただ単に「小説を書きたい」という気持ちだけで作品に手をつけるのです。




誘因が弱いとどこまで頑張ればよいのかわからない

 せっかく「小説を書きたい」と「動因」が強くあっても、目標である「誘因」が弱いとどこを目標にして頑張ればよいのかわかりません。

 あてもなく、単に小説を書くだけです。これだといくら小説を書いてもどこにも発表せず、あなたのPCの中にデータとして保存されるだけ。

「動因」が目指す場所を「誘因」とみなしてください。


「小説を書きたい」でいちばん弱い「誘因」は「家族に読んでもらう」です。読んでもらうのは限られた家族のみ。それでも家族を喜ばせようと「小説を書く」のもひとつの「やる気」です。

 たとえば高齢の祖父母のために書く、難病の家族を勇気づけるために書くといった状況がこれに当たります。


 次の「誘因」は「友達・仲間に読んでもらう」です。友達は「遊び友達」、仲間は「小説を書いている仲間」になります。家族より一段広がった世界に作品を読んでもらうのです。

 血のつながっていない人に読んでもらいますから、最初はかなり勇気がいると思います。その一歩が踏み出せる方は、ぜひ友達・仲間に読んでもらいましょう。


 顔の知られている友達・仲間に読ませるのはちょっと……という方は「小説投稿サイトへ投稿」しましょう。

 小説投稿サイトでは実際に顔が見られるわけでもなく、ペンネームで投稿できるため、リアルな友達・仲間に読んでもらうよりも壁は低い。しかし読まれる数が桁違いに多いのです。リアルな友達・仲間といってもだいたいのコミュニティーは十人程度ですよね。クラスの人気者だったら数十人規模になるかもしれません。しかしそういう方は承認欲求が満たされているため「小説を書きたい」と思わないものです。

 せっかく勇気を出して小説投稿サイトへ掲載しても、すぐに何百人に読まれるとは思わないでください。知名度ネームバリューのない書き手の作品なんて、ほとんどの方はスルーします。読まれるジャンル、読まれるキーワードに絞れば読まれる率は上がりますが、それは「小説を書きたい」と思って書いた作品でしょうか。

「文芸」ジャンルの作品は残念ながら小説投稿サイトで人気がありません。それでも多くの方に読まれたいなら、取得アカウント数が桁違いの『小説家になろう』の「純文学」ジャンルへ投稿してください。一番人気の「ハイファンタジー」には圧倒的に及びませんが、それでも数十人が読みに来てくれます。とくに『小説家になろう』の「純文学」ファンは、投稿作品が少ないこともあって無名の新作でも読んでくれるのです。


 しかし目標が「小説投稿サイトへ掲載する」だと簡単に達成できてしまいます。そこで「自己記録を更新する」という「誘因」を設定してください。

 今作は前作よりもブックマークを1件でも多く付けてもらう。評価を1ポイントでも多く付けてもらう。

 ランキングは当面意識しないでください。あくまでも自分だけで達成できる範囲内を目標とするのです。

「自己記録を更新する」という「誘因」があれば、何作でも書けます。前作よりもよいものを読んでもらう。そう意識すれば、さまざまな工夫も浮かんできます。


「自己記録を更新する」という「誘因」を追い求めた結果「小説投稿サイトでトップランカーになる」のが理想的です。

 総合ランキングのトップランカーは無理でも、ジャンル別のトップランカーなら狙って獲れるかもしれません。

 あなたが書けるジャンルで、今話題のキーワードはなにか。それを徹底的にリサーチするのです。あなたには書けないキーワードかもしれませんが、挑戦するだけして玉砕したほうが得手不得手を把握できる点でもよいと思います。


 いくら「小説投稿サイトでトップランカーになっ」てもほとんどの場合一円にもなりません。『カクヨム』では「ロイヤルティ・プログラム」が導入されていて、作品に広告を表示させられるのです。PVに応じて広告料が受け取れる仕組みが出来あがっています。これなら「トップランカーになって収入を得る」ことも可能です。

 しかし他の小説投稿サイトには同じ仕組みはまだありませんので、小説投稿サイトで開催されている「小説賞・新人賞」へ応募してみましょう。

「小説賞・新人賞で大賞を獲る」という「誘因」はかなり高い目標です。これが達成できれば、賞によっては「プロ」の書き手つまり「小説家」にもなれます。


 そして「プロ」の書き手つまり「小説家」になるのを目標にしてもよいでしょう。

 昔は小説投稿サイトでトップランカーになれば出版社レーベルからお呼びがかかったそうです。しかし現在では各出版社レーベルが小説投稿サイトを運営しているため数も増え、トップランカーになるだけでは「プロ」にはなれません。

 その小説投稿サイトで開催されている「小説賞・新人賞」で大賞を射止める以外に「プロ」になる手段がないのです。


 ただ「プロ」になるだけでなく、「たくさん売れる小説が書ける小説家」を目指す。おそらくこれが「小説家」の最上位だと思います。

「ノーベル文学賞を獲る」というものもありますが、これは名誉が得られるだけです。もちろん「ノーベル文学賞」を獲れば既存の作品も爆発的に売れますから、「たくさん売れる小説が書ける小説家」にはなれます。でもそれは結果でしかありません。

 あくまでも一作一作「たくさん売れる小説が書ける小説家」を目指すべきです。

「ノーベル文学賞」を獲りにいって失敗している村上春樹氏を見ても、狙って獲れるものではないとわかりますよね。




いくら誘因が強くても動因が弱ければ意味がない

「ノーベル文学賞を獲る」でも「たくさん売れる小説が書ける小説家になる」でもかまいません。

 いくら「誘因」が強くても「小説を書きたい」という「動因」が及ばなければ、きっと途中で挫折します。

「自分の思い描く小説を書きたい」と思いを強くしなければ、目指す場所にはたどり着けないのです。

「誘因」を強く設定するなら、「動因」はそれに匹敵するだけ強くなければなりません。

 先ほども述べましたが、「動因」と「誘因」を掛け算したものが「モチベーター」です。

「モチベーター」が高い状態が最もよい。

 では「動因」と「誘因」の配分は何対何がベストだと思いますか。

 ちょっと考えてみてください。

 わかりましたか。

 正解は5対5です。掛け算すると25になります。

 0対10は0、1対9は9、2対8は16、3対7は21、4対6は24。逆になっても同じなので以下は省きます。

 こう見ると5対5が最も「モチベーター」が高いとわかるはずです。4対6、6対4も24なので、やはりできるかぎり五分五分を理想としたほうがバランスはとれますよね。

「動因」に見合った「誘因」を設定していけば、成長していけます。

 たとえば目標を実力よりも少しだけ上に設定する。配分を4対6にして24の「モチベーター」を目指すのです。こうすれば書けば書くほど実力は高まります。

 目標までたどり着いたら、そのときに5対5にして意欲と目標のバランスをとればよいのです。




10パーセント増・達成率6割

「誘因」としてふさわしいのは、実力の10パーセント増、達成率6割だとされています。

 10パーセント増は、やってやれないことはない絶妙な高さです。ブックマーク10件なら11件、100件なら110件を目指しましょう。

 また前作は100件のブックマークが獲れた。今作は110件のブックマークを目指そう。結果106件のブックマークに終わっても「達成率6割」をクリアしているので「よし」としてください。

 最初から「106件」を目指すのではなく、「110件」を目指して結果として「106件」に落ち着けば「よし」とするのです。

 ブックマーク「106件」が獲れたら、その10パーセント増の「117件」を次の目標とします。その「達成率6割」は「112件」です。「112件」の10パーセント増は「123件」で、その「達成率6割」は「119件」となります。つまり3回目で初回の「20パーセント増」が達成できた計算です。

 これなら「達成率6割」でもじゅうぶんに成長が見込めますよね。





最後に

 今回は「小説家になりたいのか小説が書きたいのか」について述べました。

「小説家になりたい」という「誘因」と、「小説が書きたい」という「動因」がともに必要です。「誘因」と「動因」の掛け算が「モチベーター」だからです。

 最も高い「モチベーター」は「誘因」5対「動因」5ですが、成長しようと思えば「誘因」6対「動因」4の配分を目指しましょう。



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