1095.鍛錬篇:特異性を前面に出す

 今回も「あらすじ(紹介文・キャプション)」についてです。

 いいかげん「ぼくのかんがえたさいきょうの小説」も終わろうかと。

 あれでは内容がまったくわかりませんからね。

「ぼくのかんがえたさいきょうの小説」に関しては、後日サブタイトルを改めたいと思います。




特異性を前面に出す


「あらすじ」の一文目は二文目を読ませるため、二文目は三文目を読ませるために書きます。三文目まで読んでくれた方は「あらすじ」をすべて読んでくれる可能性が高いのです。

 では「あらすじ」をすべて読んでくれた方が、本文へと続くリンクをクリック(タップ)してくれるにはどうすればよいのでしょうか。




本文を読みたくなるあらすじ

 前回「あらすじ(紹介文・キャプション)」の「一文目」「二文目」の重要性について述べました。

 うまく「あらすじ」が書けていたら、読み手は「本文を読んでみてもいいかな」と思ってくれます。

「あらすじ」だけで読み手を満足させてはなりません。あくまでも本文への呼び水とするべきです。

 こんな主人公がこんな状況にいるのか。この先なにが起こるかわからない。この主人公はそれらをどうやって解決していくのだろう。

 そう思わせられれば、読み手は本文へ続くリンクをクリック(タップ)するのです。




主人公の特異性を前面に出す

「あらすじ」で読み手の心をつかむには、なにをおいても「主人公」が立っている必要があります。「主人公」が出てこない「あらすじ」では、どんなに状況設定を巧みに書いても読み手を呼び込めません。

 小説投稿サイト『小説家になろう』で最も人気があるジャンルは「ハイファンタジー」つまり「異世界を舞台にしたファンタジー」です。 

 そのランキング上位に位置している作品の「あらすじ」には必ず「主人公」が登場します。それだけなら閲覧数ゼロ、ブックマーク・ゼロ、評価ゼロの「トリプル・ゼロ」の作品だってしています。それなのに片や数千pt、あなたは0ptという結果です。その差はなんなのでしょうか。

 問題は「主人公」の持つ「特異性」を前面に出しているかです。

 2020年2月12日付の日間ランキングを例にしてみます。


 1位のまさみティー氏『黒鳶の聖者 〜追放された回復術士は、有り余る魔力で闇魔法を極める〜』の「あらすじ」に示されている「主人公の特異性」は次のようなものです。

「【聖者】という最高クラスの職業をもらったラセルは、その職業の相性の悪さが原因で、パーティーを追放されてしまう。」

 つまり「最高クラスの職業を授かったのにそれを活かしきれない」という「特異性」によってラセルがどんな活躍を見せてくれるのだろう、と読み手に思わせます。

 この作品は少し前に流行った「追放」「ざまぁ」ものなので、時代の先端を走っていません。「いずれ主人公最強」のキーワードが付いていますので検索キーワード「主人公最強」に引っかかるので多く読まれたのです。しかし物語としては純粋に「追放」「ざまぁ」ものですね。


 2位のなっちゃん氏『幼馴染に裏切られ勇者に寝取られたので俺は仕返しに勇者パーティーの能力全てを奪い逃走をいたします。』の「あらすじ」に示されている「主人公の特異性」は次のようなものです。

「賢者に選ばれて勇者パーティーの一員として魔王を倒しにいった幼馴染の帰りを待っていたが、帰ってくるなり婚約破棄された。幼馴染は勇者と婚約していたのだ。倒した相手の全てのステータスを奪う職業【強奪者】の俺に決闘を持ちかける勇者は余裕で勝てると思っている。」

 要約が長いですが、この「あらすじ」はここまで書かないと「読みたい」とは思われにくいのです。「倒した相手の全てのステータスを奪う職業【強奪者】」という「特異性」によって「俺」は勇者を倒せるのだろうか、と読み手に思わせます。

 この「あらすじ」は典型的な「寝取られ」「裏切り」「ざまぁ」ものです。それだけなら他にも同じような作品は山ほどあります。しかし「職業【強奪者】」という見慣れない「特異性」が読み手の興味を惹くのです。

 2位になったのは「主人公最強」という単語がないからでしょう。「タイトル」にも「あらすじ」にも「キーワード」にも「最強」が使われていないため、最も検索されているキーワード「主人公最強」で検索をかけても引っかからないのです。この点は少し惜しい気もします。

『小説家になろう』の検索システムは、「タイトル」「あらすじ」「キーワード」のいずれかに検索キーワードが含まれていればヒットする仕組みです。

 そう考えると登録キーワードの「魔王」「勇者」は必要ありません。「男主人公」があるため「主人公最強」のうち「主人公」はこれでヒットします。あとは「魔王」「勇者」のどちらかを削って「最強」または「主人公最強」を入れるだけで、この作品は今よりも確実にポイントが稼げます。「あらすじ」に「最強」という単語を追加しても同様です。


 3位の蒼乃白兎氏『世界最強の努力家 〜才能が【努力】だったので効率良く規格外の努力をしてみる〜』の「あらすじ」に示されている「主人公の特異性」は次のようなものです。

「【努力】という才能を授かったリヴェルは、《英知》というスキルを生まれ持っていた。」

 つまり「英知のスキルと努力の才能」という「特異性」によって主人公リヴェルはどんな活躍を見せてくれるのだろう、と読み手に思わせます。

 だから多くの読み手が本文へとクリックするのです。

 なぜ3位を獲れているのか。「タイトル」に「最強」の文字が、「あらすじ」に「主人公」の文字が入っているため、検索キーワードに「主人公最強」と入れると引っかかるからです。


 上記したとおり、ランキングの上位にいる作品は「主人公の特異性」を前面に出した「あらすじ」を書いているのです。




あらすじで出し惜しみしない

 小説投稿サイトで揉まれていない書き手の「あらすじ」は、「主人公の特異性」がほとんど書かれていません。

 しかしランキング上位の「あらすじ」を冷静に分析すれば、ランクインしている作品は「主人公の特異性」が必ず書かれていることに気づけるはずです。

 小説投稿サイトに慣れていないと「本文を読んでからのお楽しみ」と考えて「あらすじ」で「主人公の特異性」を書かない方が殊のほか多い。それでは読む意欲が湧かないのです。本末転倒だと思いませんか。

「主人公の特異性」を前面に出せば、「ほう、こんな特徴のある主人公なら面白い展開になりそうだ。ひとつ読んでみるか」となります。読み手の食いつきがまったく違ってくるのです。

 本文を読んだときにあっと言われたい。その気持ち、わからなくもありませんな。私も前作までは「主人公の特異性」を伏せたままの「あらすじ」を書いていましたから。

 しかし本コラムを執筆してきて、小説投稿サイトの仕組みを理解するようになると「出し惜しみしている場合ではない」と気づきました。

「読み専」の方は、自分が読みたいジャンルの、読みたいキーワードの作品を検索します。そしてリストアップされた作品群から「あらすじ」を読み、「主人公の特異性」に惹かれて本文を開くのです。

 つまり「あらすじ」に「主人公の特異性」が書かれていない時点で、その作品は読まれなくなるのです。閲覧数ゼロ、ブックマーク・ゼロ、評価ゼロの「トリプル・ゼロ」はこうして生まれます。

 現在連載している作品で、もし「トリプル・ゼロ」やそれに準じる成績しか残せていない方は、まず「あらすじ」で「主人公の特異性」をしっかりと書きましょう。

 それとともにランキング上位作品の「キーワード」をチェックして、自作にも使えないか検討してください。





最後に

 今回は「特異性を前面に出す」について述べました。

「あらすじ」には「主人公の特異性」を必ず書きましょう。

 読み手が興味を惹かれるのは「主人公の特異性」です。「特異な主人公」がどのような状況に置かれているのか。それだけで読まれやすさは格段に違ってきます。

 あとは検索「キーワード」も必ず確認してください。



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