1094.鍛錬篇:ぼくのかんがえたさいきょうの小説5

 あなたが投稿した作品は、多くの方に読まれているでしょうか。

 読まれていない方、読まれても評価されない方は、もう少し集客力を高めましょう。

 入り口をできるだけ広げるのです。





ぼくのかんがえたさいきょうの小説5


 今回は「いかにして本文を読ませるか」について述べてまいります。

「小説賞・新人賞」に応募するのは基本です。

 でも現状当てはまる「小説賞・新人賞」が見当たらないとか「小説賞・新人賞」の締め切りに縛られたくないとか、さまざまな理由で応募したくない方はいらっしゃいます。

 そんな方でも読まれる方法はないものでしょうか。




タイトルやキャッチコピーに凝る

 小説投稿サイトで読みたい小説を選ぶとき、あなたはなにを基準になさいますか。

 まずジャンルを選ぶ。これは当たり前です。「剣と魔法のファンタジー」を読みたいのに「推理」ジャンルで作品を選ぶ人はまずいません。でも『小説家になろう』様だと「推理」ジャンルにも「剣と魔法のファンタジー」が入っているんですよね。だからあながち間違いとも言えない。まぁこれは例外ですが。

 ではジャンルを決めたとして、次はなにを基準になさいますか。

「異世界転生」「異世界転移」「悪役令嬢」「主人公最強」「俺TUEEE」「追放」「ざまぁ」「スローライフ」などのキーワードやタグではないでしょうか。

 たとえば「剣と魔法のファンタジー(ハイファンタジー)」で、「異世界転生」もので「主人公最強」のスカッとした作品が読みたい。

 そう思えば「剣と魔法のファンタジー(ハイファンタジー)」ジャンルを指定して、検索キーワードに「異世界転生」「主人公最強」を当てはめて検索ボタンを押すのです。

 すると該当する小説がズラッとリスト化されて出てきます。

 小説投稿サイトによっては、短編・中編・長編といった分量も検索条件に含められますから、これらも利用頻度が高いでしょう。


 今液晶パネルにはリスト化された「読みたい物語」が並んでいます。

 あなたはどの作品を読みたいでしょうか。

『カクヨム』様の場合、その小説に「キャッチコピー」が付けられます。「タイトル」よりも大きくてカラフルな「キャッチコピー」が目につくのです。だからどうしても「タイトル」よりも「キャッチコピー」を先に読んでしまいます。

「キャッチコピー」は、タイトルに書かなかった、または書けなかった情報を読み手に提供できるのです。検索やランキングでは「紹介文」他サイトでは「あらすじ」「キャプション」と呼ばれる部分も表示されます。しかしトップページに掲載された際には「タイトル」と「キャッチコピー」しか表示されません。だからこそ「キャッチコピー」はとても重要です。

『カクヨム』様では「タイトル」よりも「キャッチコピー」にどれだけ凝るかで読まれやすさが大きく異なります。


 他の小説投稿サイトでは「タイトル」が重要です。

 しかしカルロ・ゼン氏『幼女戦記』のようなタイトルだとなかなか目立てません。

 小説投稿サイトは、その走りである『小説家になろう』様で執筆経験のある書き手が多く活躍しています。『小説家になろう』様でトップページに掲載された際、表示されるのは作者名・ジャンル・投稿話数そして「タイトル」だけです。ということは、トップページでいかに多くの読み手へアピールできるか。書き手が操れるのは「タイトル」だけです。だからこそ『小説家になろう』様を経験している書き手の多くは、長い「タイトル」を付けたがります。

『小説家になろう』様でクリックされるためには、「タイトル」で主人公の置かれた状況や展開の方向性といったものを織り込む必要があるのです。

 そして現在数多くの小説投稿サイトが運営されていますが、ランキング上位の「タイトル」はほとんどが『小説家になろう』様で見られるような、長いものになっています。

 しかし「文学小説」ジャンルの「タイトル」はそれほど長くありません。このあたりにジャンルの違いを感じます。

「タイトル」はじゅうぶんに考えて付けてください。いつでも改題は可能ですが、できれば初投稿時にきっちりと計算して付けるようにしましょう。




あらすじ・紹介文・キャプション

 読みたいジャンルとキーワードで検索をかけ、リストで表示された作品の中からどれを読もうか検討します。

 そのとき最初に目が行くのは「タイトル」、次に「あらすじ」です。

『小説家になろう』なら「あらすじ」、『カクヨム』なら「紹介文」、『ピクシブ文芸』なら「キャプション」と呼ばれています。

「タイトル」に惹かれたら「あらすじ」を読む。皆様もやっていますよね。

「あらすじ」の一文目は誰でも読むはずです。ここで読み手に興味を持たせられればよいのですが、一文目の役割は「読み手に興味を持たせる」ことではありません。

「二文目を読ませる」ことです。




二文目を読ませる

「あらすじ」で重要なのは、一文目を読んで「二文目が読みたく」なるかです。

 一文目だけで切られる作品のなんと多いことか。

 たとえば水野良氏『ロードス島戦記』にはおなじみの「ロードスという名の島がある。」という名フレーズがあります。今の小説投稿サイトでこれを「あらすじ」の一文目にするとどうなるか。その場で切られます。読み手は「だからどうした」という感想しか出てきません。それでは「二文目を読んで」もらえないのです。

 いかにして「二文目を読ませる」か。

 ここに書き手の工夫が詰め込まれています。

 試しに『小説家になろう』でいちばん人気のある「ハイファンタジー」ジャンルの2020年2月11日時点のランキング1位を見てみます。

 蒼乃白兎氏『世界最強の努力家 〜才能が【努力】だったので効率良く規格外の努力をしてみる〜』が7,139ptで1位です。

「タイトル」だけで「努力」という単語が三回出てくる「ゴリ押し」ぶり。これだけでもかなり「読みたい」と思わせる効果があります。世の多くの方は「自分は特別ではない」と思っているのです。だからこそ「努力」には強い引力が発生します。

 そんな同作の「あらすじ」は次のような一文目です。

――――――――

 この世界では12歳になると人々は女神より才能を授かる。

――――――――

 これだけを読むと「だからどうした」パターンに見えます。それでいて読みやすい。

 秘訣は「ある程度長いのに助詞が重複していない」点です。

 文章の基本ですが、できている方は意外と少ない。「助詞の重複がない」文が書けるのは一種の才能です。実際、本作の「あらすじ」をすべて読むと「助詞の重複」のある文が出てきます。でも重要なのは一文目です。

 一文目を読んで「二文目を読ませら」れれば書き手の勝ち。見切られたら負けです。

 本作の「あらすじ」の一文目は「主人公はどんな才能を授かったのだろうか」という疑問を抱かせます。読み手は無意識にそう感じるのです。

 だから「二文目を読ませる」ことに成功しています。


「二文目を読ませる」ことに成功したら、二文目で「三文目を読ませる」ことができるかどうか。それが重要です。

 本作の二文目は次になります。

――――――――

 主人公のリヴェルは皮肉にも【努力】という才能を授かった。

――――――――

 タイトルに三度出てきた「努力」という単語がここで登場します。これで「タイトル」と「あらすじ」がリンクするのです。「あぁ、タイトルの意味はそういうことか」と。

 この二文目を読むとその先が気になってきます。

 まず「努力」の才能はどういった役に立つのかについて感じるでしょう。そして「皮肉にも」と書かれているので「努力」はあまりよくない才能なのかな、と思わせられます。

 この二点で「三文目」が気になってしまう文なのです。


 テキスト広告の世界では、一文目を読んで「二文目を読む」方は一割もいればよいほうだ、と言われています。

 つまり「一文目」の役割は、いかにして「二文目を読ませる」かに尽きるのです。

「二文目を読ん」で「三文目を読む」方はもう少し割合が上がります。

 それでも、二文目の役割は「三文目を読ませる」ことです。

 三文目まで読ませられれば、多くの読み手が「あらすじ」を最後まで読んでくれます。

 だからこそ「一文目」「二文目」の果たす役割は大きい。

 一文目は「二文目を読ませる」ようになっているか、二文目は「三文目を読ませる」ようになっているか。三文目まで読ませられれば、すでに「あらすじ」を制覇したと言ってよいでしょう。





最後に

 今回は「ぼくのかんがえたさいきょうの小説5」について述べました。

 小説投稿サイトでは、そもそも掲載してもまったく読まれない、ブックマークされない、評価されないという「トリプル・ゼロ」の作品が圧倒的に多いのです。

 読まれるためには、読み手に「読みたい」と思わせなければなりません。

 ちょっと矛盾した物言いに見えます。

 しかし「本文が読まれるためには、入り口の段階で読み手に「読みたい」と思わせなければなりません。」と書けば理解できるのではないでしょうか。

 読みたいジャンルを検索して、リストアップされた中からいかにして選ばれるのか。

「キャッチコピー」「キーワード(タグ)」「タイトル」「あらすじ(紹介文・キャプション)」が揃っている必要があります。この四つの合わせ技で「読みたい」を刺激できるかどうか。ランキング上位にある作品の四つの要素をじゅうぶんに研究してください。

 本文の出来がいくらよくても、この四要素を押さえていなければ誰にも読まれません。

 正直に言うと「トリプル・ゼロ」の作品のほうがランキング1位よりも面白い、という現象も実際に起こっています。

 どうしても読まれたいのなら開催されている「小説賞・新人賞」へ応募してください。

 すべての応募作を読みたい「先物買い」の読み手はけっこうな数いらっしゃいます。

 せっかく応募したのにまったく読まれない、ということはけっしてありません。



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