1090.鍛錬篇:ぼくのかんがえたさいきょうの小説1
今回から数回「最強の小説」について考えていきます。
私の考えた「最強の小説」とはなにか。
いきなり書いていますけどね。
ぼくのかんがえたさいきょうの小説1
今回はあえて小学生っぽいタイトルにしました。
これまで小説について「伝わる文章か」「伝わらない文章か」で論じてきました。
今回のシリーズはその一線を越えたところにある大命題に挑みます。
「売れるか」「売れないか」です。
売れる小説とは
皆様は「紙の書籍」「電子書籍」を問わず、小説を買って所有しているでしょうか。
私はほとんど電子書籍へ移行していて千冊ほど、紙の書籍は三十冊あるかなというくらいです。
皆様も小説を所有していると仮定してお話し致します。
皆様は、なにを基準にしてその小説を購入しましたか。
実はこの問題。とても奥が深いのです。
「売れる小説」とは「思わず買いたくなる小説」を指します。
ハルキストが村上春樹氏の小説を毎度買うのは、彼が「ハルキストなら思わず買いたくなる小説」を書いているからです。ハルキストの期待に応えられない作品など発表できません。一度でも期待を裏切れば、二度と新作を買ってくれないかもしれないからです。
では「思わず買いたくなる小説」とはどのようなものでしょうか。
この答えもかなり難しい。
私は「冒頭で提示された問いに対する答え(結末)は、お金を払ってでも読みたい」という作品だけ購入しています。
ジャンル買い
世の中には「ジャンル買い」する方も存在するのです。「異世界転生」ならなんでもよい、「VRMMO」ものならなんでもよいという方が現実にいます。
しかし資金力がなければ書籍の「ジャンル買い」はできません。
ではどうするか。
小説投稿サイトの出番です。
質は担保されませんが、とりあえずあなたが好きな「ジャンル」の小説が山ほど読めます。
小説投稿サイトで「読み専」をされている方は、好きな「ジャンル」があるでしょう。その「ジャンル」の新作を欠かさずチェックする「先物買い」は「読み専」さん究極の楽しみ方だと思います。
あなたが目をつけた作品が「小説賞・新人賞」を受けたり出版社レーベルに認められたりして「紙の書籍」化されていく。以前ほど小説投稿サイトでの連載から「紙の書籍」化されづらい現在では、「小説賞・新人賞」応募作からめぼしい作品を見繕っているはずです。
紙の書籍化される小説
「読み専」さんの作品選びと「小説賞・新人賞」の選考さんの作品選びは必ずしも一致しません。
「読み専」さんは「読んでみて面白かった作品」を支持するのに対し、選考さんは「この作品を紙の書籍にしたらどれだけ売れるだろうか」つまり「カネになるか」という視点で評価します。
この違いをよく表しているのが、芥川龍之介賞・直木三十五賞と、本屋大賞・『このライトノベルがすごい!』です。
本屋大賞は全国の書店員が「この作品は面白いからぜひ読んでほしい」という作品に投票します。『このライトノベルがすごい!』は読者投票によって集計された「面白い」作品の番付です。つまり「読み専」さんが小説投稿サイトで「面白い」作品をブックマークしたり評価したりするのと変わりません。それによって順位付けされたのが、小説投稿サイトのランキングなのです。
芥川龍之介賞・直木三十五賞は各選考さんが「この作品はこのくらい売れるからぜひ賞を授けて大々的に売り出したい」という作品を選びます。つまり「売れる作品」が受賞基準です。
本コラムをお読みになっている皆様には「小説賞・新人賞」を目指していただきたいので、これまで「伝わる文章」について口を酸っぱくして説いてきました。
しかしこれまで語り落としてきた真実、つまり「売れる小説」でなければ「小説賞・新人賞」は獲れない真実がここにきて浮かび上がったのです。
伝わるは最低限、売れるは必須
「伝わる文章」は「小説賞・新人賞」へ応募する作品には最低限求められています。
しかし「小説賞・新人賞」を実際に授かるには「売れる小説」かどうかが問われるのです。
どんなに面白くても「あまり売れない小説」では「小説賞・新人賞」は獲れません。よくて佳作止まりです。
「小説賞・新人賞」は面白い作品のナンバーワンを決める場ではありません。
主催・共催する出版社レーベルから「紙の書籍」を出版して、どれだけ売れるか。その想定部数が最も多い作品を決める場なのです。
その証拠に『ピクシブ文芸』の「ピクシブ文芸大賞」は第一回が開催されただけで、以後開かれていません。おそらく大賞受賞作が、共催し紙の書籍化した幻冬舎の想定部数よりも売れなかったからでしょう。もしビッグヒットになっていたら、一年間隔で「ピクシブ文芸大賞」を開催しても元は取れたはずです。それが第一回以降開かれていないのであれば「大赤字になった」と考えるのが筋だと思います。
「小説賞・新人賞」は主催・共催する出版社レーベルが受賞作の売上を見込んで資本投下し、行なわれているのです。
マルチメディア展開
現在多くの出版社レーベルが独自の小説投稿サイトを開設して、人気作品を確保しようと必死になっています。
必ずしも「小説投稿サイトのランキングで一位になる小説」が「売れる作品」とは限りません。しかしより「売れる作品」が集まってくる呼び水にはなります。
小説投稿サイトの運営にはそれなりのリソースつまり資金が必要です。しかし大ヒットシリーズを手に入れてマルチメディア展開ができたら、その程度の資金はすぐにでも回収できてしまいます。
本コラムをお読みの皆様は、ぜひとも「マルチメディア展開が盛んな小説投稿サイト」を選んで、そこで開催される「小説賞・新人賞」へ応募してください。
小説投稿サイト黎明期は明らかに『小説家になろう』の独り勝ち状態でした。
しかしすでに『小説家になろう』の一党独裁体制は崩れています。
近年は『アルファポリス』発のアニメも増え、また三十年ほど前から小説のマルチメディア展開を行なっている先駆けとなった出版社・KADOKAWAが『カクヨム』の運営を共催しているのです。
現在『カクヨム』で累計ランキング三位の土日月氏『この勇者が俺TUEEEくせに慎重すぎる』は、前期にアニメ化されましたので記憶に新しいと思います。このようなマルチメディア展開が期待できる作品こそ「紙の書籍」化されていくのです。
小説投稿サイトを利用する「読み専」さんは、純粋に「面白い小説」が目当てでしょう。しかし「小説賞・新人賞」主催・共催の出版社レーベルは「売れる小説」を望んでいます。
「面白い小説を執筆すれば、『小説賞・新人賞』は必ず獲れる」ではないのです。
いくら小説投稿サイトでランキングトップになれたとしても、「マルチメディア展開」が見込めない作品は必要ない。そのくらい出版社レーベルは厳しい経営判断のもとで小説投稿サイトを運営しています。
出版社レーベルは本音では「売れる小説」がわんさか集まる夢のような窓口を「小説投稿サイト」と定義しているのです。
『ピクシブ文芸』のような壮大な爆死はできません。株式を保有する投資家のためにも、利益を生み出し続けなければならないのが株式会社の出版社レーベルなのです。
最後に
今回は「ぼくのかんがえたさいきょうの小説1」について述べました。
小説投稿サイトに求められるのは「面白い小説」ですが、そこで開催される「小説賞・新人賞」に求められるのは「売れる小説」です。
この違いをよくよく考える必要があります。
ランキングで一位をキープしているのに、いっこうに「紙の書籍」化の話が来ない。
よくあることです。
それは「面白い」のかもしれませんが「売れない」と出版社レーベルに思われています。
「売れる」か「売れない」かは、過去の似たような書籍の販売実績をもとに判断されるのです。
今人気を博している作品が、過去の爆死作品によって正当に評価されない。
これもよくあることです。
では今「売れる作品」とはどのような小説なのでしょうか。
謎を残したまま次回へ続きます。
※なお今回も今日執筆したぶんをその日に投下するだけでストックがありません。ですので今回のシリーズも何分割になるのか見当がつかないので、あえてスラッシュを付けませんでした。少なくとも次回へ続くので「1」とだけはしてあります。
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