1033.面白篇:構成とはなにをどの順番に語るのか

 今回は「構成」についてです。

「構成」とは「なにをどの順番に語るのか」を決めることです。

 整理してから話すのが構成なのです。思いついたまま話すと、あっちへ行ったりこっちへ行ったりしてわかりにくい物語になります。





構成とはなにをどの順番に語るのか


 私たちはよく「小説の構成がわかりづらい」とか「わかりやすい構成を心がける」とか言います。

 では「わかりやすい構成」とはどんなものでしょうか。




なにをどの順番に語るのか

 構成を考えるうえでも「お笑い」と「謎解き」は欠かせません。

「お笑い」は初めに「フリ」を提起し、最後に「オチをつけ」ます。

「謎解き」は初めに「謎」を提起し、最後に「謎を解く」のです。

 もし初めに「オチ」があって、最後に「フリ」があったとしたら、あなたは笑えますか。私は笑えないかな。「オチ」はあくまでも最後にあるから「面白い」のであって、初めに「オチ」を持ってくると「面白くない」と感じます。

 どんなに笑えるネタでも、何度も観ているうちに飽きてきます。それは「フリ」の段階で「オチ」が思い浮かんでしまうからです。だから大好きな笑える話は、一言一句憶えてしまうくらい観てはなりません。忘れた頃に観返すから、何度観ても「面白い」のです。

 お笑い番組全盛期、多くの芸人が同じネタを多くの番組で演じていました。すると一週間で飽きてくるのです。

 たとえば「ユーキャン新語・流行語大賞」にノミネートされたお笑い芸人はことごとく消えていく、という法則があります。新しいところでは「ダメよダメダメ」とか「安心してください。履いてますよ」とか。これらは「新語・流行語大賞」にノミネートされたことで多くの番組で繰り返し使われることとなったのです。だからあっという間に「面白くなくなって」しまいました。彼らは今どこへ行ったのでしょうか。最近姿が観られませんよね。


 初めに「謎を解く」があって、最後に「謎」を提起していたら、支離滅裂もよいところです。

 もちろん「倒叙ミステリー」という推理ものもあります。先に「犯行シーン」を書いて犯人が誰かを読み手に見せる。そしてあるところに「死体を転がす」。ここから警部や名探偵が捜査を開始して、犯人をじょじょに追い詰めていくのです。そして犯人の最後の砦であった「アリバイトリック」を崩して終わります。

「倒叙ミステリー」の真髄は、追い詰めていく過程を丹念に描く点にあります。なにしろ「オチ」は最初に書いてあるから。と言いたいところですが「倒叙ミステリー」の「オチ」は「犯人当て」ではありません。「アリバイトリックを崩す」ことが「オチ」なのです。物語の最初に「犯行シーン」を書いて、そのときに「崩されるアリバイトリックの盲点」を潜ませます。これをさりげなく書けなければ、読み手に「あ、これを突かれるとアリバイトリックが崩されるな」とバレてしまい、「倒叙ミステリー」になりません。

 ネタバレした推理ものを読んでも面白くもなんともありません。「なんだ、やっぱりそうじゃないか」と思われたら書き手の負けです。

 ネタバレかと思いきや、読み進めていくとどうも「アリバイトリックを崩せる」と思っていたことが「早とちり」だったと気づく。ここまで読み手を裏切れればたいしたものです。推理ものの「小説賞・新人賞」に応募すれば、よいところまで行けるでしょう。




冒頭三行にすべてを込めろ

「構成」とは詰まるところ「なにをどの順番に語るのか」に尽きます。

 多くの小説が主人公から始めるのも、誰がこの物語の主人公かを読み手へ逸早く知らせて感情移入してもらいたいからです。

 嘘か真か、冒頭三行で主人公に感情移入できなければ「小説賞・新人賞」は獲れない、とさえ言われています。

 選考さんは多くの作品を読み込んで審査しなければならないため、「冒頭三行で主人公に感情移入できるか」がひとつの基準だ、というのです。

 一理はあります。しかし実際に「冒頭三行で主人公に感情移入させる」のはとんでもなく難しい。本コラムを書いている私でも「冒頭三行で主人公に感情移入させる」小説はまず書けません。

 ほとんどの方には無理な話でも、やり遂げてしまう人はいます。奇跡のような偶然が働いてはいるのですが。

 では「やり遂げてしまう」にはどうすればよいのか。

「冒頭三行」だけはとにかく何度も書き直してみてください。

 長編小説であれば、物語をすべて書き終えてから「冒頭三行」を工夫しましょう。長編小説の「伝えたいこと」つまり「メッセージ」を「冒頭三行」に込めるのです。

 そうすれば「小説賞・新人賞」だって夢ではありません。

 一話限りの短編小説も、できるだけ「冒頭三行」をとにかく書き直してみてください。

 短編小説は長編小説ほど厳しくはありませんが、それでも「冒頭三行」で読み手の関心を呼ばなければ評価されづらいのです。

 ここで「お笑い」と「謎解き」に話が戻ります。


「冒頭三行」は「フリ」と「謎」を提示する場所です。

 笑える短編小説なら「冒頭三行」で主人公と「オチ」につながる「フリ」を盛り込みましょう。どちらか一方が欠けても、満足度は低まります。「オチ」は「冒頭三行」に書かれた「フリ」に呼応しているべきです。そのほうが内容がびっしり詰まっているように感じられます。贅肉のない短編小説になるのです。短編小説賞に応募すると想定しても、「冒頭三行」にきっちりと「フリ」を書いて、結末にしっかり「オチ」を置いた作品は高く評価される傾向があります。

 推理小説なら「冒頭三行」で「死体を転がせ」です。まず「謎」を置き、それから主人公が登場する。「謎」と主人公のどちらを先に出すかですが、推理小説では基本的に「謎」を先に出したほうがよい作品に仕上がります。推理小説は「謎」を「解く」物語です。よって「謎解き」役は「謎」の後に登場したほうが「謎」のインパクトをより高めてくれます。だから推理小説はまず「死体を転がせ」と言われるのです。見方を変えると、推理小説の主人公は「謎解き」役の名探偵や警部ではなく「謎」そのものだと言えます。


 笑える短編小説も推理小説も「冒頭三行」にすべてを込めましょう。

 そして「異世界ファンタジー」であっても「恋愛小説」であっても、「冒頭三行」が結末へきちんとリンクしていれば、読み終えたときの印象がよくなります。

 連載小説では「冒頭三行」を連載の最終話最終行とリンクさせるのは、かなり難しい。書き始めたときの構想がいっさいブレずに最終話最終行までたどり着けるのであれば、当初想定していた「最終話最終行」はそのまま使えます。しかし小説投稿サイトに掲載していくとさまざまなリクエストが寄せられるのです。そちらに寄り道したほうが面白くなりそう。そう感じて寄り道したがために、当初想定していた「最終話最終行」が使えなくなるのです。

 そこで連載小説では、ひと段落するところの「最終行」とリンクさせればよしとしてください。もちろん「最終話最終行」とリンクできたら言うことはないのです。でも連載の性質上、どうしても寄り道をしてしまいます。そうしないと読み手の興味を惹きつけられないからです。だからこそ「冒頭三行」は当初想定していた「最終話最終行」とリンクするようにし、そのうえでひと段落するところの「最終行」とリンクさせるようにするのです。つまり「冒頭三行」に二倍働いてもらいます。

 連載小説では、長編小説の二倍「冒頭三行」が重要になるのです。





最後に

 今回は「構成とはなにをどの順番に語るのか」について述べました。

 構成とは「フリ」と「オチ」、「謎」と「謎解き」のように、なにをどの順番に語るのかを決める作業です。

 構成を疎かにして読み手を満足させる作品は書けません。

 ではどのようにして構成すればよいのでしょうか。

「あらすじ」と「箱書き」です。

「企画書」に出来事エピソードを書き加えて「あらすじ」として仕立てます。

「あらすじ」を場面シーンに分けて「箱書き」とするのです。

 どの順番に出来事エピソードを起こせばよいのか。出来事エピソードの順番が決まったら、どの順番に場面シーンを並べれば読み手へわかりやすく伝えられるのか。

「あらすじ」と「箱書き」にはじゅうぶん時間をかけてください。

 書き始めてから順番を入れ替えようとすれば、どうしても無理が出てきます。先に順番を確定させておけば、スムーズに物語は流れていくのです。



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