1030.面白篇:たくさん知れば面白いテーマが見つかる

 今回は「雑学」の面白さについてです。

 人類には「雑学」を知りたい原始的な衝動があります。

 知らないことを知りたがるのです。

 小説に取り入れないのはもったいない話です。





たくさん知れば面白いテーマが見つかる


「面白い」の中に「雑学を知る」があります。

「雑学」には読み手を惹き込む魅力があるのです。

 皆様はクイズ番組はお好きですか。




雑学は人生を豊かにする

 たとえば耳かきのヘラの反対側に付いている羽毛のボンボンの名前はなんて言うでしょうか。これを「耳かきのボンボンで耳掃除する」と書くだけではいささか間抜けな印象を受けます。

 あれは「梵天ぼんてん」と呼ぶのです。だから「耳かきの梵天で耳掃除する。」と書けば読み手も「あぁ、あのボンボンは梵天というのか」と「雑学」を得られます。

 知らないことを知れば読み手は知識欲が満たされるのです。だから知らないことを教えてもらえれば「この小説は面白い」と思ってくれます。


 テレビ番組のジャンルで、創成期以来、現在まで続いているものがあるのをご存知でしょうか。

「クイズ番組」です。

 これはとくに日本で顕著ですが、欧米でもクイズ番組は一定数あります。みのもんた氏を司会に迎えた日本語版『クイズ$ミリオネア』も、元はイギリスの『Who Wants to Be a Millionaire?』(百万長者になりたいか?)というクイズ番組を端緒にしています。この番組はアメリカやインドなど世界各国で放送され、大きな話題をさらいました。ちなみにイギリスでは百万ポンド、アメリカでは百万ドルと、いずれも最高賞金は一億円以上ですが、日本語版は景品表示法の都合上一千万円までしかありませんでした。それでも素人が一千万円を狙えるクイズ番組は貴重でしたから大盛況です。現在でも放送が続いている『パネルクイズアタック25』はパネル一枚一万円ですから、破格と言ってよいでしょう。

 ここまでお読みになって、「クイズ番組」の「雑学」がひとつ手に入りましたよね。

 すでに知っていた方は「そうそう」と同意してくれますし、知らなかった方は「へぇ、そんなものだったんだ」と記憶を新たにします。


 人は「雑学」に飢えています。

 人類は「知らないことを知る」ことで進化してきた生き物です。

 どのキノコが食べられて、どのキノコを食べると死ぬのか。どの魚は食べられて、どの魚を食べると死ぬのか。

 知らないことがあると、それを知りたがるのが人類です。

 多くの挑戦者があらゆるキノコを食べ、魚を食べてきました。

 そして多くの犠牲によって、食べられるキノコと食べられる魚が分けられたのです。

 その貴重な情報があるからこそ、私たちは松茸を食べられますし、フグの食べ方もわかるようになりました。

 食べられる野草と傷を治す野草と死ぬ野草。すべて誰かが試した結果の蓄積で分けられています。

 漢方薬なんて最たるもので、なんでも乾燥させてみて、ある病気の人にありとあらゆる粉薬を飲ませた治験が数千年ぶんもあるのです。それに比べて抗生物質のような西洋医学の医薬品は、せいぜい数百年の歴史しかありません。現在西洋医学の病院でも漢方薬が処方されるのは、抗生物質に頼りすぎると耐性菌が生まれて、より危険性が増すかもしれないからです。そして数千年の治験があるからピンポイントで効く薬を処方できるからでもあります。ちなみに「漢方薬」と呼んでいますが、日本のほとんどの漢方薬は「日本で治験された日本生まれの乾燥粉薬」です。中国にも同じようなものがあるというだけで「漢方薬」と呼んでいるにすぎません。だから中国人医師も知らない「漢方薬」が日本には存在するのです。そしてかなりの効果があります。

 ここまでお読みになって「人間は知らないことを知りたがる」性質があることと、「漢方薬」の「雑学」が手に入りましたよね。

 あなたが続きを読もうとするのも「雑学」が「知りたい」心を刺激するからです。




知らなそうなことを尋ねるテレビ番組

 それまで王道であった「早押しクイズ」だけでなく、純粋に知識力を競うクイズ番組も誕生し、テレビで「知らなそうなことを尋ねる番組」は毎日放送されています。

 視聴率がそれだけよいことの表れです。

『クイズプレゼンバラエティー Qさま!!』『林先生の初耳学』『林修の今でしょ!講座』『この差って何』『日本人の3割しか知らないこと くりぃむしちゅーのハナタカ!』『くりぃむクイズ ミラクル9』『ネプリーグ』『チコちゃんに叱られる!』『世界一受けたい授業』『東大王』『クイズ99人の壁』など、知識を問う番組が多いとわかるでしょう。住んでいる地域によっては毎日こういったクイズ番組が放送されています。

 以前は「知っていそうなことを尋ねる番組」というのもありました。『大橋巨泉のクイズダービー』『たほいや』『クイズヘキサゴン』などが挙げられます。いずれもなにが本当なのかを試す知力バトルです。まぁ『クイズヘキサゴン』は途中からバラエティー番組と化してしまいましたが。

 どのような形であっても、クイズ番組は今も生き残っています。人類に知的好奇心があるかぎり、クイズ番組は存在し続けるでしょう。

 これを小説に応用できないでしょうか。

 たとえば韓非氏『韓非子』の中に「逆鱗」という単語が出てきます。これは「硬い鱗を持つ龍であっても、たったひとつだけ逆さに生えた鱗がある。そこだけが柔らかくなっており、龍の急所である。だから龍はそこに触れられると激怒する」意味の単語です。だから「逆鱗に触れる」という慣用句が生まれました。

 似たような物語を小説で作ってしまうのです。

 それが現代にも通じる物語であれば「雑学」として使えます。

 直近で書いていて申し訳ないのですが、「大人気ない」は普通「おとなげない」と読むのだけれど、稀に「だいにんきない」と読む方もいるのです。また「敵は何人だ」は普通「てきはなんにんだ」と読むのだけれど、稀に「てきはなにじんだ」と読んでしまいます。

 この手の漢字の読み間違いは、実際に接しないと出てこない「雑学」です。

 だからこそ情報にたくさん触れていなければなりません。以前は『ヘキサゴン2』でおバカキャラがよくやらかしていたのですが、なくなってしまいましたからね。今では『くりぃむクイズ ミラクル9』でよく観られるので、漢字の読み間違いネタをやりたい方は、チェックしておくとよいでしょう。




雑学は生涯に一度だから絶えず収集する

 漢字の読み間違いネタは、生涯で一回しか小説に使えません。他の作品であっても同じネタは読み手が白けるだけです。

 だからこそ、アンテナを張って誰かが読み間違えたらそれをメモしておくなど、「雑学」を収集するようにしてください。

 もちろん読み間違いネタだけでなく「誰も知らないかもしれないネタ」全般は「雑学」として小説に書けますが、やはり生涯で一回しか使えません。

 これから小説を書こうとお考えなら、まずは「雑学」に詳しくなりましょう。クイズ番組を観まくってもよいですし、雑学本を読んでもよい。とにかく「雑学」になりそうならなんでも集めてください。

「文豪」には学校の先生が多かった。それはあらゆる教養が高かったからです。その割に庶民はそれほど教養が高くなかった。だから「雑学」を随所に散りばめられました。

 日本国憲法によって教育が三大義務のひとつとなってから、「文豪」は次第に姿を消していきました。それは庶民の知識レベルが平均的に高くなって、これまで「雑学」として使えたネタが使えなくなったからという側面もあるかもしれません。

 そんな今では、現実世界での「雑学」に苦労するはずです。

 だから「異世界ファンタジー」に人気があるのでしょうか。「異世界」なら現実世界の「雑学」がなくても書けますからね。

 しかも自分で作った「世界観・舞台」であれば、その世界の「雑学」はあなた自身がいくらでも作り出せます。

 逆に言えば「異世界を舞台にしたファンタジー」で、書き手なりの「雑学」が書けなければ評価は低まるのです。





最後に

 今回は「たくさん知れば面白いテーマが見つかる」ことについて述べました。

 小説に「雑学」が入ると面白く読めます。知らなかったことを知る楽しみがあるからです。

 とくに「異世界を舞台にしたファンタジー」では、その世界特有の「雑学」が書けるかどうかが面白さに直結します。

 だから必ず「雑学」を意識して執筆しましょう。



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