997.筆洗篇:不安の原因

 今回は「執筆における不安の原因」についてです。

 あなたは小説を書くときに不安に襲われませんか。

 その不安はなにが原因なのでしょうか。





不安の原因


 小説を投稿しようと現在執筆に励んでいる方も多いでしょう。

 しかし原稿が何日ぶんか完成したのに投稿しない方もおられます。

 なぜでしょうか。



伝えようと工夫しましたか

 ストックも含めて執筆に何時間もかかったとします。

 すると、もし誰にも読まれなかったらどうしよう。もし酷評されたらどうしよう。もし受け入れられなかったらどうしよう。

 そういう不安があるから、つい投稿をためらってしまいます。

 ですが多くは杞憂きゆうつまり取り越し苦労です。

 あなたはきちんと準備して、努力を重ねて執筆しました。

 投稿したい作品にはそういう裏付けがあります。

 これがもし、ろくな準備もせず、思いついたことだけをとりとめもなく書いただけならどうなるのか。

 それこそ読み手から酷評されるし、受け入れられないと思います。

 自分が納得のいく準備をし、読み手へ正確に伝わるよう工夫を重ねて執筆した作品は、まず酷評されません。

「伝わらない」から酷評されます。

「伝えよう」という意識を持って書かれた文章と、ただ無意識に書きたいように書いた文章とでは、前者のほうが明らかに読みやすいのです。

 だから読んでいてストレスを感じません。ストレスがたまる文章だから酷評されるのです。


 あなたも「伝わらない」文章を読むとストレスを感じませんか。

 たとえば英語が苦手な人が英文を読もうとするだけでもストレスを感じるはずです。たとえ英語が堪能でもフランス語となればどうでしょうか。わからない、理解できないからストレスを感じてしまいます。

「伝えよう」と工夫しているのなら、少なくとも「わからない」とは思わないのです。「わからない」と感じた段階で、それ以上理解しようとしません。そこで読みさして別の「伝わる」文章を読もうとするからです。

 小説も、ライトノベルならスラスラ読めるけど、文学小説を読むとつっかえづっかえであまりの読みづらさからストレスがたまる方もいます。

 他ならぬ私です。

 小説投稿サイトは、私のような「文学小説はストレスに感じるけど、ライトノベルならストレスを感じない」方が主に利用しています。

 だから小説投稿サイトは、敷居の高い文学小説よりも子どもにもわかりやすいファンタジー小説・恋愛小説のほうが圧倒的に強いのです。文学小説だけでなく、難しい知識が必要となる歴史小説・時代小説・伝記小説もあまり読まれません。

 推理小説もそれほど読まれていませんが、「小説賞・新人賞」の対象ジャンルとしてはメジャーなので、投稿作品もそれなりに多いのです。




あらすじが伝われば評価される

 よくも悪くも「伝わる」文章で書かれた小説は、必ず評価されます。評価されないのはなにも「伝わらない」からです。

 評価するにあたらないと思われれば、いくら待っても評価されません。

 実は評価されやすい書き手と、評価されにくい書き手に分けられます。

 その差は「あらすじ」「キャプション」の書き方に現れるのです。

 読み手へ語りかけるような「あらすじ」「キャプション」が書けば、読み手は「私のことを気にかけてくれている」と判断するので、評価を付けやすい。

 一方物語の状況だけをつらつらと書いてあるだけの「あらすじ」「キャプション」では、読み手は「自分の言いたいことだけを書いているジコチューな書き手だな」と判断するので、評価は付けてくれません。

 読み手を意識した「あらすじ」「キャプション」が書けるかどうか。それがまず求められます。

 読んで、読み手が「面白そう」「興味が湧いてきた」と思える「あらすじ」「キャプション」こそが、評価だけでなく閲覧数(PV)も飛躍的に高めるのです。


 本文なんて「あらすじ」「キャプション」の付属品でしかありません。

 それくらいの気持ちでいれば、あなたの悩みは「あらすじ」「キャプション」だけだと気づくはずです。

 本文はあなたの書きたいように書いてよい。あなたが書きたい物語を書けばよい。

 それが読みたくなリ、かつ違和感を引き起こさないような「あらすじ」「キャプション」であれば、読み手はホイホイと読んでくれるのです。

 物語自体に不安を覚える必要はありません。

 伝わらない「あらすじ」「キャプション」になっていないかを心配しましょう。

「あらすじ」「キャプション」こそが作品の評価を左右します。

 作品の顔はあくまでも「あらすじ」「キャプション」です。

 ジャンルや方向性はなにか。主人公はどんな人物でどんな状況にいるのか。読み手に「伝えたいこと」を暗示しているか。

 つまりオチ以外のものを凝縮させたものが「あらすじ」「キャプション」なのです。

 完璧な「あらすじ」「キャプション」は、連載するごとに変わっていきます。物語の冒頭が明るいトーンなら明るさを出した「あらすじ」「キャプション」、話が進んで暗いトーンに包まれたら暗さを出した「あらすじ」「キャプション」、強敵との戦いや犯人との推理バトルに差しかかったら緊迫感のある「あらすじ」「キャプション」なら適切です。

 物語が進んだら「あらすじ」「キャプション」はつねに更新してください。

 毎回投稿したら書き直してもよいくらいです。




本文は中高生がわかればよい

 作品の評価を決めるのは、上述どおり「あらすじ」「キャプション」です。

 では本文はどうでもよいのか、と思いますよね。

 本文は中高生が理解できればよいのです。

 インターネットで小説を読む時間があるのは、主に中高生だと言ってよいでしょう。

 社会人は勤務時間、残業、ラッシュでの通勤と忙しく、なかなか小説を読む時間が作れません。

 今の中高生は親からスマートフォンを与えられていますから、インターネットでさまざまな情報を得ています。ニュースから辞書、ゲームもスマートフォンでまかなえるのです。しかしスマートフォンのゲームは「基本プレイ無料/アイテム課金」というものが多く、中高生ではなかなか手を出せません。社会人なら自分でお金を稼いでいますから、いくらでもアイテム課金できます。お金の自由度がない中高生が暇つぶしにしているのが、ニュースサイトを読む、TwitterやInstagramなどのSNSやLINEでコミュニケーションをとる、それに小説投稿サイトで小説を読むことです。

 つまり小説投稿サイトの閲覧者の多くが中高生になります。

 しかし書き手は大学生や社会人の方が多い。そんな大学生や社会人の教養レベルで書いた小説は、主な閲覧者である中高生には難しいのです。だから初回の閲覧数(PV)が高くても次話以降で激減します。

 小説投稿サイトに小説を掲載したいのなら、主な読み手である中高生がわかるレベルで書きましょう。

 中高生が主に読んでいることは、人気のジャンルやタグにも現れています。

「異世界転生ファンタジー」は現実世界が息苦しく感じている方がよく読むのです。これは思春期である中高生だけでなく、社会人にも当てはまります。

「現代ファンタジー」のおおかたの舞台は高校です。「中高生が感情移入しやすい」のもありますし、高校を卒業した大学生や社会人にも「こんな高校生活を送ってみたかったな」と思わせます。

「主人公最強」タグが人気なのも合わせて考えれば、中高生が主な読み手だと想定できます。「チート」「俺TUEEE」タグも含めれば、「ゲーム感覚」で読める小説に需要があるからです。

 最近のライトノベルは「ゲーム感覚」のものが増えました。タイトル、あらすじ、タグなどで「ステータス」「スキル」「レベル」といったゲーム用語が多用されているのです。これなどは「ゲームがやりたいのに勉強しなければならない」中高生の息抜き以外のなにものでもありません。

 だから小説投稿サイトに作品を掲載したいのなら、本文は中高生がわかるレベルで書いてあげてください。

 中高生は難しい言葉が書いてあったら、補注されているか確認します。補注がなければ、せっかく時間をかけて書いた小説が読み飛ばされるのです。何度も読み飛ばしていると、その小説から離れていきます。


 小説投稿サイトで求められる本文のレベルは、中高生に合わせてください。

 中高生が続きを読みたくなるような書き方をしてください。

 中高生が息抜きできるようなギャグやジョークやちょっぴりエッチな描写も混ぜてください。

 そうすれば本文を執筆するときに不安がなくなりますよ。





最後に

 今回は「不安の原因」について述べました。

 書き手の不安は、詰まるところ「読み手に伝わったか」です。

「読み手に伝わったか」な? という心境では不安しか覚えないでしょう。

 そこで物語が進行したら「あらすじ」「キャプション」を必ず更新するようにしてください。読み手を本文へ誘うのは「あらすじ」「キャプション」がすべてです。

 中高生が読みたくなるような「あらすじ」「キャプション」であれば人気が出ます。中高生は同級生との情報交換が頻繁に行なわれるので、面白い小説を見つけたら友人へ積極的に勧めるのです。だからひとりがウケたら爆発的に読まれるようになります。

 そういった「ご新規さん」が読みたくなるような「あらすじ」「キャプション」へ毎回更新していくのです。

 そのうえで本文は中高生がわかるレベルで書きましょう。

 表現に凝りすぎれば「よくわからない」という理由で切られます。難読漢字を多用すれば中二心はくすぐられますが、必ずルビを振らなければ「よくわからない」という理由でやはり切られるのです。

 中高生に「よくわからない」と思わせた時点であなたの負け。

 だからこそ、中高生にわかるレベルで書かなければなりません。



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