968.筆洗篇:他人の意見の九割は気にしない

 今回は「読み手から届いた感想やコメント」についてです。

 物語の筋書きはあなたが執筆前に書いた「あらすじ」がすべてです。

 しかしときに読み手から「こんな展開が読みたい」といった意見が届くことがあります。

 どうするべきでしょうか。





他人の意見の九割は気にしない


 感想やコメント、評価という形で、読み手からさまざまな情報が書き手に届けられます。

 それこそ絶賛から罵詈雑言まで、ありとあらゆる声が寄せられるのです。




多くの意見は的外れ

 絶賛の感想やコメントが多く届いて有頂天になっている中、罵詈雑言を目にすると嫌な気持ちになります。

 罵詈雑言を削除する方もいますが、放っておきましょう。

 言いたいことがあるなら言わせてあげたほうがよいのです。

 いちいち削除するから、罵詈雑言は加速度的に増えていきます。

 実は「他人の意見はほとんどが的外れ」です。

 この事実に気づきましょう。

 他人にはあなたの物語の「あらすじ」はすべてわかりません。

 つまり今書かれている状況が、物語の本筋のどの位置にあってどのようにリンクしているのかを知らないのです。

 だからその場その場での投稿に一喜一憂し、喜んだり憤ったりします。

 もし「あらすじ」を公開できれば、このような一喜一憂は起こらないのです。でもそんなことをしたら、読み手はあなたの小説を最後まで追ってくれなくなります。

 だって、この先主人公たちがどうなるのか、すべて知っているのですから。

 連載をしていて「これがよかった」と「これが悪かった」の割合を比べて、真偽を見極めようとする書き手もいますがオススメしません。

 それは「これがよかった」と感じている方は、取り立てて感想やコメント、評価を付けようとしないからです。反面「これが悪かった」と感じている方は、鬼の首を取ったように声高に主張してきます。いわゆるサイレントマジョリティーとノイジーマイノリティーの問題です。

 サイレントマジョリティーとは「声なき多数派」のことであり、ノイジーマイノリティーとは「声高な少数派」のこと。つまり主張してくるのは少数派なのです。




初めのうちは閲覧数だけを気にする

 小説の連載を始めたら、初めのうちは閲覧数(PV)だけを気にしてください。

 物語の初めのうちでどんな展開になったとしても、それはその小説のお約束ごとです。どんなにつまらなかろうが、説明せざるをえません。

「異世界転生」であれば、物語が始まったら主人公は死ななければならないのです。

 最近この「主人公が死ななければならない」展開が安易であることから、「異世界転生」の勢いが落ちてきています。

 だから「こんなことで死ぬんですか?」「自殺でも異世界転生できるなんて都合がよすぎませんか?」といった意見が寄せられるのです。

 ですが、主人公が死なないことには「異世界転生」は成り立ちません。

 こんな意見が届いても無視してください。かまっていると物語が成立しないのですから。

 では連載をしていて気にしなければならないのはなにか。

 閲覧数(PV)です。

 初回から閲覧数(PV)が伸びているようなら、読み手が食いついている証拠。閲覧数(PV)が尻すぼみになるようなら、読み手が離れていっている証拠です。

 食いついているのなら、今の展開を推し進めていけばよい。離れていっているなら展開を変えなければなりません。

 離れていっているとわかっているのに展開を変えなければ、完全に見限られて閲覧数(PV)の伸びが止まります。そうなってしまえば、もう誰もあなたの連載を追わなくなるのです。これ以上連載しても、誰も読んでくれません。これで連載を続けても、誰のためにもならないのです。潔く連載を畳むべきでしょう。

 こうなってしまうときは、たいてい感想やコメントで「つまらない」「テンプレに乗りすぎ」「安直」といった否定的なものが大半を占めているはずです。

 それでも最初のうちは「これから期待しています」といったよい感想やコメントもあるはずなんですよね。ですが、連載を重ねるごとにそういった肯定的な感想やコメントが少なくなっていき、いつの間にか消えてしまうのです。

 これは「ゆでガエル」と同じ状態です。

「ゆでガエル」とは、カエルは熱湯に入れるとすぐに飛び出してきますが、水に入れると飛び出してこない。そしてその水を火にかけて少しずつ温度を上げていっても、カエルは水温の変化を気にしないでそのまま水に浸かっている。そして知らぬ間に熱くなってもカエルはそのまま。そしてとうとう茹であがってしまうのです。水温がじょじょに変化していくからカエルが気づきません。

 小説も「ゆでガエル」と同じようなものです。

 連載の初めのうちは期待値込みで肯定的な意見が多く寄せられ、また否定的な意見も寄せられます。そして回数を重ねるごとに少しずつ否定的な意見が増えていくのですが、それでもまだ肯定的な意見があるのです。さらに進んでいくと否定的な意見が多数を占めるようになります。否定的な意見がじょじょに増えていくので気づかないのです。

 気づいた頃には閲覧数(PV)の伸びがピタリと止まって、誰もあなたの連載を読まない状態になってしまいます。

 だから連載を始めたら感想やコメントなどは気にせず、閲覧数(PV)の伸びだけを意識してください。

 読み手がどれだけあなたの展開についてこられるか。それを意識しないことには、正しい展開をしているのかを判断できません。




一割の意見を受け入れる

 このようにあなたの小説に寄せられる声の大半が的を射ていません。

 しかし中には正鵠せいこくを射るものもあります。そういった意見は耳を傾けるに値します。

 どのような意見が正しいのか。「改善案を示している」意見です。

「改善案」のない意見は無責任ですが、「改善案」のある意見は「この作品をもっとよくしたい」という思いから生まれます。

「改善案」のない意見はすべて無視してください。どんなに賞賛されようと罵倒されようと、完全に無視してかまいません。

 よい作品かどうかはすべて閲覧数(PV)とブックマーク、そして評価が示してくれます。ノイジーマイノリティー(声高な少数派)に一喜一憂しても、得るものは少ないのです。

 だからこそ「改善案」のある意見は貴重なのです。寄せられる意見の一割もあればよいほうでしょう。

 もちろんすべての「改善案」が正しいとは限りません。ですが考慮してみる価値はあります。

 その「改善案」を検討してあなたの物語がよりよい方向へ進みそうだと思えば採用し、不安定な方向へ進みそうだと思えば採用しなければよいだけです。

 書き手は自分の作品を自由に書けます。読み手の指図によって流されてしまえば、その後の展開がどうなるのか、書き手本人にもわからなくなります。そうなっては連載が「エタる(エターナル:永遠に終わらない)」のも時間の問題です。

 一割の「改善案」のある意見に耳を傾けながらも、その意見が正しいのかどうかはつねに慎重に検討してください。

 けっして勢いに流されないように。連載が「エタる」可能性が高まってしまいますよ。





最後に

 今回は「他人の意見の九割は気にしない」ことについて述べました。

 寄せられる感想や意見の九割は的を射ていません。読み手には物語全体の「あらすじ」が見えていないからです。

「あらすじ」を作り、その流れに従って小説を書いているのなら、感想や意見が悪くてもきちんと当初の筋書きどおりに書いてください。

 しかし感想や意見はどうしても目についてしまいます。だから感想や意見は読まないほうがよいのですが、まったくの無反応というのも読み手を軽視する行為です。

 返答しなければならない性分なら、相手の意見に同意しながら「これからの展開にご期待ください」とでも書けばよい。

 物語の筋を作ったのはあなたであって読み手ではないのです。

 そこを見誤らなければ、読み手が示してくれた「改善案」を受け入れるか否かもわかりますよね。



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