903.文法篇:接続助詞「が」の使いどころ
今回は「接続助詞『が』」についてです。
近頃よく見る「順接」での用い方。本来は違反なんですよ。
知っている方も多いと思いますが、知っていることとやってしまうことには差があります。
接続助詞「が」の使いどころ
接続助詞「が」は一般にふたつの使い方をされます。
ひとつは逆接としての、もうひとつが順接としての使い方です。
逆接の接続助詞「が」
接続助詞「が」は本来「逆接」で用います。
「昨日高校野球を観に行ったが、あいにくの雷雨で試合が順延になったよ。」
これは前の「昨日高校野球を観に行った」なのに「あいにくの雷雨で順延になったよ」という意味です。逆接として使っていますよね。
逆接で用いる接続助詞ですから、前の文と後の文は趣旨が反対でなければならないのです。
前文はポジティブな内容で、後文はネガティブな内容になっています。
これが当たり前かと思いきや、逆に前文がネガティブな内容で、後文がポジティブな内容になることもあるのです。
「雨は降ったが、すぐ晴れた。」
これも趣旨は反対になっています。「雨は降った」けれども「すぐ晴れた」と状況は確実に正反対です。前文はネガティブ、後文はポジティブになっていますよね。
このようにポジティブな文とネガティブな文をつなげるために、接続助詞「が」は用いられるのです。
前文がポジティブな内容で後文もポジティブな内容、または前文がネガティブな内容で後文もネガティブな内容であれば、それは順接になります。
順接の接続助詞「が」
とくに意識しないで文章を書いていると、接続助詞「が」を順接で使ってしまいます。
これは話し言葉で、接続助詞「が」を順接としてよく使ってしまうからです。
話し言葉は、文法ではなく雰囲気やニュアンスで読み手に伝えるように出来ています。
たとえば「昨日高校野球を観に行ったが、完全試合が見られたよ。」のようなものですね。
分析すると、まず前文は「昨日高校野球を観に行った」というポジティブな内容の出来事を相手に語っています。そこに接続助詞「が」を付け加えることで、相手の注意を惹こうとする意図があるのです。だから逆接の接続助詞「が」を「意図的に」順接で用いています。そして後文は「完全試合が見られたよ」ですから、これもポジティブな内容になっているのです。ポジティブな内容の文同士をつなげると順接になります。
これを小説で使う書き言葉にするとき、逆接の接続助詞「が」をそのまま順接として使っても「意図的な」ニュアンスが伝わらないのです。
だから、接続助詞「が」は順接で用いると読み手が違和感を覚えます。
本来なら接続助詞「が」は逆接のときに用いるものだからです。
しかし、いつの頃からか順接でも用いられるようになりました。
学校で「話すように書きなさい」と教育された人が多いからでしょうか。
それを真に受けて、話し言葉をそのまま書き言葉にできると思って書いてしまうから、書き言葉の文法が破綻するのです。
書き言葉では、接続助詞「が」は逆接でのみ使用できます。
順接として書きたければ、接続助詞「が」を使ってはなりません。
「昨日高校野球を観に行って、完全試合が見られたよ。」
「昨日高校野球を観に行ったら、完全試合が見られたよ。」
順接ならこれでよいのです。
逆接かどうかのチェック方法
文の中で接続助詞「が」が逆接で用いられているかどうかは、「が」を「のに」「けれども(「けれど」「けど」でもよいのですが幾分口語的になります)」に置き換えるとチェックできます。
上記の例なら「昨日高校野球を観に行ったのに、あいにくの雷雨で順延になったよ。」「昨日高校野球を観に行ったけれども、あいにくの雷雨で順延になったよ。」は文として成立しますから、これは逆接の「が」です。
また「昨日高校野球を観に行ったのに、完全試合が見られたよ。」「昨日高校野球を観に行ったけれども、完全試合が見られたよ。」は文として成立していませんよね。これは順接の「が」になります。
いっそ接続助詞「が」を使わないことも
逆接の接続助詞「が」の意味がどうしてもわからないのでしたら、いっそ接続助詞「が」を使わない方法もあります。
たとえば文を分けて、接続詞でつなぐのです。
「昨日高校野球を観に行った。だが、あいにくの雷雨で順延になったよ。」
「昨日高校野球を観に行った。しかし、あいにくの雷雨で順延になったよ。」
「昨日高校野球を観に行った。でも、あいにくの雷雨で順延になったよ。」
このように文を分ければ、用いる接続詞の機能は明快になります。
順接で用いる場合も二文に分けてみましょう。
「昨日高校野球を観に行った。そうしたら、完全試合が見られたよ。」
「昨日高校野球を観に行った。すると、完全試合が見られたよ。」
これでも悪くはないのですが、順接であれば接続詞は省けます。
「昨日高校野球を観に行った。完全試合が見られたよ。」
のように分ける方法もあるのです。
「順接の接続詞は省く」という意識を持てば、わかりやすい構文に仕立てられます。
最後に
今回は「接続助詞「が」の使いどころ」について述べました。
接続助詞「が」の機能は「逆接」です。
つまり前文と後文の方向性が真逆でなければなりません。
「順接」として用いるのは誤りです。
構文がわかりづらい方は一文にこだわらず、接続助詞を省いて二文に分けることも考えてください。
そのほうが一文を短くできて、たいていはわかりやすくなるのです。
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