892.惹起篇:書く目的を明確に掲げる
今回は「小説を書く目的をはっきりさせる」ことについてです。
なんのために書くのか。
九十九人に嫌われても一人から支持される小説を書きましょう。
書く目的を明確に掲げる
長編小説・連載小説は一日ではまず書けません。
「文豪」が活躍した頃なら、ホテルや旅館で缶詰にされて原稿が出来あがるまで外出できませんでしたから、中編小説や長編小説を一日で書くことも不可能ではなかったのでしょう。
ですが現在の書き手は缶詰にはなりません。あなたの代わりはいくらでもいます。
締切に間に合わなければ、代理原稿で埋め合わされて、あなたはお払い箱です。
長期的に観て、あなたが小説を書く目的はなんでしょうか。
それをまず認識してください。
小説を書く目的をはっきりさせる
あなたが小説を書く目的はなんですか。
小説投稿サイトに作品を掲載して、より多くの方に読んでもらいたいのか。「小説賞・新人賞」に応募して賞や賞金を得たいのか。「紙の書籍化」を目指しているのか。
これが定まらなければ、作品を書くスタンスが保てません。
小説は役割や効果を狙って書かなければ、最後まで書き通すことができないものです。
読み手層の年齢・性別・職業によって、書く目的は異なります。
成人女性が読み手なら乙女系ノベルになるでしょうし、成人男性が読み手なら官能小説になる。というのがパッと思いつくかもしれません。
しかしそれだけでは語れない裏側があるのです。
成人女性であれば少女時代に少女小説であるコバルト文庫を読んできたでしょうし、成人男性であれば少年時代にスニーカー文庫や富士見ファンタジア文庫を読んできたと想定されます。
であれば、三十年ほど前に主流だった思春期小説の雰囲気が感じられる小説に回帰してくることがよくあるのです。
コバルト文庫にはそれほど詳しくないので、少年小説について述べます。
三十年ほど前といえば、角川スニーカー文庫で水野良氏が『ロードス島戦記』を刊行した頃まで遡ります。その流れで、水野良氏を追いかけて『クリスタニア』『ギャラクシー・エンジェル』『魔法戦士リウイ』『ブレイドライン』『グランクレスト戦記』のように近年までライトノベルを読み続けている方がいらっしゃるのです。
しかも2019年8月1日に『ロードス島戦記』の新シリーズ『ロードス島戦記 誓約の宝冠』の第一巻が刊行されます。これでまた中年男性がライトノベルを買うきっかけを作ったのです。
これはひじょうにピンポイントを突いた戦略だと言えます。
過去に『ロードス島戦記』を買って楽しんだ世代に、三十年経った今改めて新作を投入するのです。
果たして中年男性は『ロードス島戦記 誓約の宝冠』を楽しんで読めるのでしょうか。
近著の『グランクレスト戦記』まで追っていた方々はもちろん買うと思います。
では『ロードス島戦記』だけを買ってきた方々に、どれだけ魅力的なアプローチができるのか。先の展開が読みづらい問題です。
また、現役の中高生が楽しめる文体で書くのか、中年男性が楽しめる文体で書くのか、という問題もあります。
現役の中高生に合わせると、旧作のファンは描写に物足りなさを感じるかもしれません。中年男性に合わせると、現役の中高生は読みづらさを感じるかもしれません。
どちらに合わせるのか。またはその中間層に合わせる可能性もありますが、中途半端になる可能性があります。
「想定する読み手層」では性別による差異が最も大きくなります。女性向けに甘々な恋愛小説を書くのか、男性向けに激しいバトル小説を書くのか。性別だけでも受け入れられそうなジャンルは変わりますよね。
職業による差異も見受けられます。サラリーマンなら企業小説や歴史小説・時代小説を読みたいでしょうし、専業主婦ならイケメンに言い寄られる華やかな恋愛小説を読みたいでしょう。
小説を売り込みたいとき、中高生向けなのか中年向けなのかシニア向けなのかで、戦略に差が出ます。
だから、小説を書き始める前に読み手層を明確に想定していなければならないのです。
百人中九十九人に嫌われてもかまわない
小説を書くときには、どうしても書き手の思想が込められてしまいます。
「命より金が大事なのか」「金より命が大事なのか」
とてもよく出る「テーマ」です。
たとえば「金より命が大事」と考えている方が九十九人いたとして、あなたが「命より金が大事」な思想を「テーマ」として小説に書いたらどうなると思いますか。
もちろん「命がなければ金の使いようがないではないか」と憤慨する方が九十九人出ます。これではあなたの小説の人気が出ようはずもない。
と考えるのは早計です。
もし読み手の中に「命より金が大事」と考えている方が一人でもいれば、百人中一人は支持してくれる作品になります。
最大手の『小説家になろう』のアカウント数は百五十八万超です。であれば百人中一人が支持してくれるのなら一万五千八百超の共感を得られます。じゅうぶんランキング一位を狙える数字です。
もちろん書き専門の方もいらっしゃいますから、一概に比較はできません。仮に一割が積極的に小説を読んでいたとしても千五百八十超の共感は得られます。それでもじゅうぶんランキング上位を狙える数字です。
だから九十九人に嫌われてもいい。百人中一人が支持してくれる小説でじゅうぶんに戦えます。
できるだけ敵を作らず、なるべく多くの読み手に共感してもらいたい。
小説を書いている方はもれなくそう思っているはずです。
しかし、そんな八方美人の小説はかえって狙いが見え透いていて、読み手の心は離れていってしまいます。
九十九人から否定されても断言して書く勇気が必要です。
最後に
今回は「書く目的を明確に掲げる」ことについて述べました。
なにを目指して小説を書くのか。役割や効果を狙って書かなければ、満足のいく作品にはなりません。
想定される読み手層の性別・年齢・職業を考慮してストーリーを練るから、読み手が「面白い」と思う作品に仕上がるのです。
そして九十九人から嫌われる覚悟を持ちましょう。たった一人から熱烈に支持される作品が書ければ、小説投稿サイトで異彩を放てます。
つまり出版社の編集さんの目にとまりやすくなるのです。
八方美人な作品に魅力はありません。なにか尖ったものがひとつはある。
それが駄作と傑作の差なのです。
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