868.創作篇:『秋暁の霧、地を治む』あらすじ作例

 今回は、企画進行中の『秋暁の霧、地を治む』の企画書・あらすじを書き出しました。

 本当はあらすじから作っています。長い時間をかけてじっくりと話の構成を考えてきた作品なので、企画書の段階まではすべて頭の中で完成した状態だったのです。

 あとは「エピソード」を見せる順番をどうするかを考えるだけでした。

 先に書いた中編小説『暁の神話』は『秋暁の霧、地を治む』の第二章からスタートしています。

 つまり第一章を付け加える必要があったのです。





『秋暁の霧、地を治む』あらすじ作例


「命題」「想定する読み手」「テーマ」「企画書」「あらすじ」の作例として、現在企画進行中連載小説『秋暁の霧、地を治む』のものを転記します。

 こんな感じで決めてもらえばよいという見本ですね。




命題

「剣と魔法のファンタジー」「戦略戦術」「大兵同士による戦闘シーン」




想定する読み手

「剣と魔法のファンタジー」を読み慣れていて、「戦略戦術」「大兵同士による戦闘シーン」にはそれほど精通していない中高生を想定。「戦略戦術」は社会人でも興味を惹かれると思われる。




テーマ

「大規模戦闘の中で単なる数字と化した一兵卒にも命が宿っている」ことを読み手に考えさせることができれば成功と言える。

サブテーマ

「異世界ファンタジー」だが魔法は出さない。

 その代わり奇策を用いて戦況を一変させる用兵術の醍醐味を味わってもらう。

 ただし生々しい表現は極力控えて中高生に受け入れられるレベルを目指す。




企画書

 幼年にして両親を亡くしスラム街でスリをして生計を立てていた主人公ミゲルが、一国の総大将となって敵対国との存亡を賭けた大戦おおいくさに勝利し、地域に平和をもたらす物語。

 身寄りのない幼年の主人公ミゲルはカートリンク将軍の財布をスろうとして失敗し捕われてしまう。ミゲルの境遇を知ったカートリンクが預かって、先に引き取っていた主人公の相棒ガリウスとともに彼自らが育てる。十五歳になったガリウスがまず士官学校へ入学し、後年ミゲル自身も十五歳で士官学校へ入る。

 戦場で少しずつ成り上がり、宿敵クレイドとの戦いを通して、戦争の悲惨さを際立たせたい。ミゲルが市井で見出だして後から加わる軍師カイによって両国のバランスは一変する。




あらすじ

1) 士官学校入学から十年の時を経て、ミゲルはガリウスとともに中隊長となり、帝国軍との戦いに臨む。ミゲル中隊が帝国軍大将を討ち取るが、結果的に参加した将軍七名が全員戦死した王国軍の大敗によって終結する。

2) 軍の最高責任者であった軍務長官アマムは将軍に降格され、カートリンクが軍務長官の座に返り咲いて王国軍の立て直しを図る。残存した中隊の中で生存者の多かったミゲル中隊、ガリウス中隊を中心に再編し、ふたりを将軍へ昇格させて先の戦いの生存者と新兵が割り振られた。しかし通常なら将軍は五千名を率いるのに対し、ミゲルとガリウスは二千五百名しか配属されなかった。

3) そのさなか、帝国軍はひと月後に再度戦端を開いた。通常いくさは一年に一回行なわれるのが通例である。率いるのは先の戦で将軍五名を自ら斬り殺して中隊長から一息に大将へ昇格した巨躯を誇るクレイドである。

4) カートリンクは残存する将軍をすべて投入して、数の有利を生み出したが、帝国軍クレイドの奇策によって王国軍は瞬時に大敗し、逸早く退却へ移行する。殿を務めたミゲル将軍・ガリウス将軍の尽力も虚しく、軍務長官カートリンクを含む将軍七名が戦死。ミゲルとガリウスが撤退戦において帝国軍を半包囲下に陥れようと画策したが、それに逸早く気づいたクレイドは帝国軍の前進を停止し、彼らの名を問うた。戦場で相手の将軍の名を尋ねることは稀であるためふたりは呆気にとられたが、名乗りを挙げるとクレイドは満足そうにうなずくと全軍を後退させて戦場を後にした。

5) 王都へ帰り着いたミゲルとガリウスは国王に敗戦の報告をする。国王ランドルは次期軍務長官に年下のミゲルを指名した。当初拒否するも、結局は引き受けざるをえない。

6) 戦いながら陣形を変化させるクレイド大将に対する策が思いつかないミゲルは、ガリウスに誘われて王城内にある競馬場へと赴いた。ふたりとも競馬とは無縁で生きてきたが、気分転換になればとのガリウスの配慮であった。ふたりとも試しに勝馬投票券を購入してみたが三レースとも予想は外れた。しかしミゲルはボサボサの黒髪で黒装束の男に気づいた。彼は毎レース購入していたわけではないが、購入したレースはすべて勝っていたのだ。受付と黒髪の男との会話を聞き、興味を覚えたミゲルは彼に話しかけた。男はカイと名乗り、競馬の勝ち方を教え出した。そして勘を磨くためにミゲルとガリウスが競馬をしにきていると勘違いして、余計な用兵論をつい口走ってしまう。それを聞き逃さなかったミゲルは、クレイド大将に勝つ方策をカイに求めると、少し憚ったのち作戦を語り出した。ミゲルはカイこそ救国の英傑であると確信し、軍務長官の自らを補佐する役に就くよう懇請した。ミゲルの熱意に負けたカイは承諾し、国王ランドルに引き合わせて正式な役職を求めたが、軍務長官補佐という立場には苦い思い出があるため、国王と宰相は難渋を示した。そこで「作戦が失敗したらカイの責任」「カイの作戦を正確に遂行できなければ軍務長官の責任」と役割を明確化し、新たに「軍師」の地位を用意して軍務長官と同列の権限を有する立場とすることで落ち着いた。

7) 翌月帝国軍がまたしても戦場に侵入するという情報を手に入れた。カイは帝国軍の動きに先立ち、こちらから出撃して小兵に有利な地形を戦場に設定した。これを迎え撃つ格好になった帝国軍はクレイドではなくヒューイット大将とマシャード大将のふたりの大将が兵を率いるという奇策に打って出た。しかしこれは軍師カイの思惑通りである。三倍する帝国軍に勝つためには、山陵地域に誘い込むことが最善であるとして戦場を決定したのだ。

8) 「カンベル山陵の戦い」において、当初兵を四分割して配置していた王国軍は秋暁の霧を味方につけて、帝国軍に気づかれることなく一箇所に集合、帝国軍の準備が整わないうちに王国軍から仕掛けた。これにより帝国軍は壊滅的な打撃を受けるが、それでも双方に残された兵力差はおよそ三倍である。

9) クレイドは逃げ延びた兵士たちの話をまとめ、王国軍の狙いが帝国軍の分散にあったことを看破する。しかし帝国軍が分散せざるをえない絶妙の用兵であり、クレイドをもってしても敵するのは難しかろう。

 皇帝レブニスはクレイド軍務大臣に翌月の再戦を指示する。この一戦で王国軍の戦闘力を見極めてこいというのである。

10) クレイドは主戦場たる「テルミナ平原」に全兵力を集結させた。これは純粋な果たし合いである。仮に王国軍が迂回して帝都を攻めたら、さしもの兵力も生かせずに敗戦してしまうだろう。その意気を認めた王国軍は軍師カイの用兵をもって軍務大臣であるクレイド大将に挑むことになる。軍師カイの柔軟な用兵によって帝国軍は名将クレイドといえども後手に回り、気づけば帝国軍と王国軍の兵力差は無きに等しくなっていく。

11) もともと皇帝レブニスからの指令は「王国軍の戦闘力の見極め」であり、勝つことではなかった。そこでクレイドはただちに撤兵し、戦場を後にしようとする。

 そこへミゲル軍務長官から一通の書簡が届く。

12) 帝国軍に届けられたミゲルの提案を皇帝は受け入れることにする。こうして和平が成立したのだ。





最後に

 今回は「あらすじ」の作例として、現在構想中の連載小説『秋暁の霧、地を治む』の「あらすじ」をご覧いただきました。

 細かく書いたエピソードと、少ししか書いていないエピソードがありますね。

 これがエピソードの重要度の差と言ってよいでしょう。

 第12エピソードが少ししか書いていないのはネタバレになるからです。本来はもっと書くことがあります。

 次は「箱書き」の際に、このエピソードを「箱」に割っていきます。



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