786.回帰篇:スランプは素材が尽きたから

 今回は「スランプの理由」についてです。

 書けなくなるのは、書くエピソードがなくなったからです。

 ですので、まずはエピソードの素材を集めましょう。





スランプは素材が尽きたから


 スランプはある日突然やってきます。

 どんなに足掻こうとスランプから脱することはできません。

 それはなぜでしょうか。

 きわめて単純な話。「素材」が尽きてしまったからです。




素材がないから書けない

「執筆が止まってしまう」最大の要因は「素材が尽きた」からです。

「素材」とはエピソードの種を指します。

 連載前からエピソードの種をたくさん持っていれば、それを消費しながら少しずつ溜めていくこともできるのです。

 ですが、エピソードの種を二、三個しか持っていないのに執筆を始めてしまうと、エピソードのふたつや三つ費やしただけで途端に書くネタに困ります。

「素材」の泉を持っている方なら、即座にエピソードの種を思いついて書き進められるでしょう。しかし大半の方はそんな泉を持っていません。だから事前にエピソードを十分な数用意しておかないと種が無くなって続きを書けなくなります。

 それが「スランプ」の正体です。

「素材」は「エピソードの種」であり、どれだけのストックがあるかで連載できる長さが変わってきます。




素材を蓄えるには

「素材」をたくさんストックしている方は、それだけで連載小説を書くのに向いています。

 では「素材」はどうすれば集まるのでしょうか。どうやって集めるのでしょうか。

「とにかくたくさんの物語に触れる」ことです。

「小説の書き方」コラムですから、小説を読むことはもちろん。

 ですが小説にこだわらずマンガでもアニメでもドラマでも映画でもゲームでもいいので、とにかく物語に数多く触れてください。

 童話や寓話は短いけれども物語になっていますから、それらを大量に読んでもかまいません。

 その蓄積が後で生きてきます。

 どんな主人公が、どんな仲間たちと、どんな相手に、どんなことをして、どうなったのか。

 物語は突き詰めればこの単純な要素の組み合わせです。

 とくに「どんなことをして」「どうなった」をたくさん憶えておきましょう。

 これが「素材」となって、多彩なストーリーを生み出す源になります。




素材を組み合わせて新味を出す

 また「素材」は組み合わせることで可能性を無限大に広げるのです。

 たとえば「魔王に囚われたお姫様を救い出す白馬の騎士の物語」と「銀河を股にかけるスペースオペラ」を組み合わせると、ジョージ・ルーカス氏&スティーブン・スピルバーグ氏『STAR WARS』(エピソード4)になります。

「次々と襲いかかる敵を次々と打ち負かしていく活劇」と「戦争で心に傷を生じた帰還兵の物語」を組み合わせると、シルベスター・スタローン氏『ランボー』になるのです。

 このように物語の種である「素材」を組み合わせれば、斬新な作品に仕上げられます。

『小説家になろう』で人気の高い「異世界転生」「異世界転移」の物語も、単にそれだけではありきたりで、面白みに欠けるのです。そこになにを組み合わせるか。それが書き手の腕の見せどころです。

 ただし『小説家になろう』では単純に「異世界転生」と他の「素材」の組み合わせは出尽くしていると言ってよいでしょう。これでは差別化が図れません。

 そこで「異世界転生」はいったん脇に置き、普通の「ファンタジー小説」としての「素材」同士を組み合わせてください。それを「異世界転生」で包むのです。こうすると「独創性の高いファンタジー小説」に「異世界転生」を組み合わせた独特のすぐれた作品に仕上がります。




スランプに陥ったら全力で情報収集

 スランプにならない方法が「物語のパターンをできるだけ多く憶える」ことです。

 しかし現状連載していてスランプに陥った場合はどうすればよいのでしょうか。

 まずスランプを感じた時点の現状を認識してください。そして、そこから新しい「要素」を組み合わせていくのです。ストーリーラインは変更されます。しかし、現状のストーリーラインに従って書いた結果、書けない状態スランプに陥ったのだという事実を認識してください。

 本来のストーリーラインからいったん離れたエピソードを書きます。そうやって書くことがある状態を生み出すのです。

 先を書けるようになればモチベーションも湧きます。最終的に最初に決めたストーリーラインに戻って完結してもよいですし、新たなストーリーラインに従って完結してもよいのです。

 いずれにせよ執筆を継続できれば、連載が途切れません。連載しているときは、絶対に「投稿を落とし」てはなりません。一度でも「落とす」と読み手は潮が引くように離れていってしまいます。

「落としそう」だと判明した段階で「次話は◯◯日に投稿します」と若干余裕を持って設定してください。

 そうしたら、スランプに陥った直前の出来事エピソードをテーブルに載せ、次にそれに少しでも関係しそうな「資料」を全力で集めましょう。小説では時間がかかりすぎるので、マンガやアニメが適当でしょう。

 自分が書いている小説のジャンルは、たいていあなたが好きなジャンルのはずです。であれば、あなたが所有しているマンガやアニメも今執筆している小説に関連づけられるはずです。そこからアイデアを丸パクリするのではなく、大枠だけを抜き出して箇条書きでもいいのでメモ用紙に書き出してください。そうすればじゅうぶんな「素材」が集まるはずです。

 何本も連載する可能性がある場合は、その「メモ書き」は宝の山となります。新たな連載の「要素」の組み合わせが簡単に見つかるだけでなく、スランプに陥ったときの「命綱」ともなるのです。


 行き詰まったら「情報収集」に徹してひたすら「素材」を集めまくりましょう。その努力は突破口になる可能性が高い。新たな「素材」を加えて物語は変質します。しかし、読み手は「この物語は元々こういう流れの物語なのだな」と勝手に理解してくれるのです。

 行き詰まったときにどれだけの巧みな緊急回避ができるのか。それが読み手の抱くあなたの印象をよくし、「ネームバリュー」を高めてくれます。

 そのためには、スランプに陥る前から可能なかぎり「素材」を集めておいてください。「素材」は裏切りません。必ずやスランプで書けなかった状態から脱する手がかりとなるでしょう。





最後に

 今回は「スランプは素材が尽きたから」について述べました。

 本来なら連載するに足るだけの「素材」を用意してから、連載を始めるべきです。

 しかし勢いで連載を始めてしまう方も多い。

「素材」が足りない状態で連載を始めてしまうと、早晩スランプに陥るのです。

 スランプとは「書くことがなにもない」状態を指します。それなら「書くこと」を生み出せばよいのです。そのための「素材」集めだと思ってください。

「素材」がたっぷり確保できたら、ストーリーラインを変更して新たな「素材」と組み合わせ、新しいストーリーラインを生み出せばよいのです。

 そのままの路線で完結してもよいですし、元のストーリーラインまで戻って完結させてもよいでしょう。



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