726.事典篇:不死:ヴァンパイア

 今回は「ヴァンパイア」についてまとめました。

 もはや説明するまでもない吸血鬼です。

 民話や伝説がもとのクリーチャーなので、あなたの「剣と魔法のファンタジー」に登場させても著作権に抵触しません。





事典【不死:ヴァンパイア】


ヴァンパイア

 ヴァンパイア、パンバイア、ヴァンパイヤ、バンパイヤ、ヴァンピールは人間の血液を吸う民話や伝説などに登場する怪物。生命の根源とも言われる血を吸い、栄養源とする蘇った死人または不死の存在。その存在や力には実体がないとされます。

 生と死を超えた者、あるいは生と死の狭間に存在する者、死者の王とされるのです。

 一般に吸血鬼は、一度死んだ人間がなんらかの理由により不死者として蘇ったものと考えられています。現代のヴァンパイアのイメージは、ヨーロッパにルーツがある伝承のイメージが強い。吸血鬼の伝承は古くから世界各地で見られ、古代ギリシャのラミアやエンプーサ、古代バビロニアのアフカルを皮切りにテッサリアの巫女、ブルーカ(ポルトガル)、ドルド(ドイツ)、東ヨーロッパのヴァンパイアに加え、アラビアのグール、中国のキョンシーなどがあります。

 多くの吸血鬼は人間の生き血を啜り、血を吸われた人も吸血鬼になるとされているのです。

 一度死んだ人間が蘇ったもの、生きているもの、幽霊のように実体がないもの、魔女や悪魔、精霊や妖怪などの人間ではない存在、狼男、変身能力を持った人間、吸血動物、睡眠時遊行症者が該当します。

 古くから血液は生命の根源であると考えられており、死者が血を渇望するという考えも古くから存在するのです。

 吸血鬼の姿はぶよぶよした血の塊のようなものであるか、もしくは生前のままであるとされることが多い。両者とも、一定の期間を経れば完全な人間になるともされます。また、様々な姿に変身できるとされるのです。吸血鬼は、虫に変身する、ネズミに変身する、霧に変身するなどの手段を用いて棺の隙間や小さな穴から抜け出し、真夜中から夜明けまでの間に活動するものとされました。また、地域によって異なりますが、特定の月齢や曜日、キリスト教の祭日などの日には活動できないとされる場合が多い。吸血する際は、長い牙が出現するとされています。また、最近では、獲物である人間を惹きつけるために、美しい容姿を持つとされることが多い。

 死者が吸血鬼となる場合は、生前に犯罪を犯した、神や信仰に反する行為をした、惨殺された、事故死した、自殺した、葬儀に不備があった、何らかの悔いを現世に残している、などの例が挙げられます。またこれらの理由以外にも、まったく不可解な理由によって吸血鬼になることもあり、東ヨーロッパでは葬られる前の死体を猫が跨ぐと吸血鬼になるとされたのです。そのため吸血鬼の存在が強く信じられた地域では、墓に大量の黍を撒く、にんにくを置く、茨を置く、一定期間墓の周りで火を焚き続ける、などの予防措置がほぼすべての死者に対して行なわれました。

 吸血鬼がその活動によって与える害悪としては、眼を見る・名前を呼ぶ・なんらかの方法により血や生気を吸うなどの手段により人を殺す、家畜を殺したり病気にする、家屋を揺さぶる、生前の妻と同衾し子供を生ませるなどの例があります。

 近年では、吸血鬼に生き血を吸われた人間や、吸血鬼に殺された人間が吸血鬼になるとされることも多い。

 吸血鬼の存在を信じていた人々にとっては現実に差し迫った脅威であり、とくに農村部などにおいては、不可解な事件が発生した際に、多くの吸血鬼退治が現実に行なわれました。この吸血鬼退治は、ごくわずかですが20世紀になってからも行なわれたのです。

 具体的な退治方法としては、首を切り落とす、心臓に杭を打つ、死体を燃やす、銀の弾丸もしくは呪文を刻んだ弾丸で撃つ、などの方法が挙げられます。また、葬儀をやり直す、死体を聖水やワインで洗う、呪文などを用いてビンや水差しに封じ込める、などの死体を損壊しない方法がとられることもあったのです。

 吸血鬼退治は、聖俗の両権力から不当に死体を損壊する不道徳な行為であると考えられていたらしく、吸血鬼退治に関する禁令が出ることもしばしばであり、少なくとも近世以降は、吸血鬼という概念は知識階層にはあまり真に受けられるものではなくなっていたことが窺えます。ただし農村部などでは、農民の反発を恐れた地方領主や役人が吸血鬼退治を感化することはとくに珍しいことではなく、禁令はたいていの場合無視されていたのです。

 現代的な吸血鬼の特徴として、腕力は人間を超え、身体の大きさを自由に変えたり、コウモリや狼などの動物、霧や蒸気に変身でき、どんな場所にも入り込みます。また催眠術やフクロウ、コウモリ、狼、狐、昆虫といった動物、嵐や雷などを操るとされるのです。トランシルヴァニアの伝説を元にしたブラム・ストーカー氏の小説『ドラキュラ』の登場人物の一人であるヴァン・ヘルシング教授は、吸血鬼を「怪力無双、変幻自在、神出鬼没」と称します。

 現代の吸血鬼が持つという特徴の源泉は東ヨーロッパにあった吸血鬼に限られない様々な魔物が持っていた特徴にあるのです。


キリスト教布教以前に信じられていた魔物の特徴

 ・日光を嫌うため、昼間は墓地や洞窟などに身を隠す(日光を浴びると灰になるというのは近年の映画作品において作られた設定です)

 ・緩い水流や穏やかな海面を歩いて渡る

 ・ニンニクや匂いの強い香草等を苦手とする

  ニンニクはエジプトでは広く悪に対して効果があると伝承されており、それが世界各地に広まった。中国やマレーシアでは額に、フィリピンでは脇の下に擦り込み、スラブではドアや窓、首にかける。

 ・杭を心臓に打ち込めば死亡する(杭となる木は主にトネリコ、ビャクシン、クロウメモドキ、セイヨウサンザシなどが使われる他、ロシアではポプラが用いられることもある)

 ・鏡に見せかけの姿が映らない

 ・瞳が赤い

 ・美しい女性ばかりを好んで血を吸う

 ・赤ワインや生肉などを血の代用品としている

 などは吸血鬼の特徴に引き継がれ、ドラキュラ伯の逸話と結びつけられてヴァンパイア像の源泉となったのです。

 吸血鬼とコウモリの関連は、大航海時代以降にアメリカ大陸熱帯雨林地域を踏破し太平洋を目指したスペイン人が発見した動物の血を吸うコウモリの種類を吸血コウモリ(ヴァンパイア)と名付けたことに由来します。

 19世紀のロマン主義文学は、吸血鬼を異端として描き、その印象を確立する大きな役割を担ったのです。その中でもシェリダン・レ・ファニュ氏の小説『カーミラ』は女性の吸血鬼を描き、

 ・(女吸血鬼は)魅惑的でしたたか

 という特徴を与えた。この影響からそのような性質の女性にヴァンプという俗称を付けるようになりました。

 ブラム・ストーカー氏『ドラキュラ』ではキリスト教的な要素を加えて巧みに吸血鬼像を創り出したのです。

 ・十字架を非常に嫌い、護符や聖餅も打ち払う効果を持つ

  十字架、聖水、イコンのような宗教的象徴は、それ自体には効能が無くそれを持つ者の信仰が重要であり、また力ある吸血鬼には通用しないことがあります。

 という部分は当時のヨーロッパでは常識とも受け止められていた考えです。

 ・吸血鬼についての報告は複数の被害者の主観から語られるのみで、いっこうに詳細が見えてきません。吸血鬼とは実体がない存在であり、それは吸血鬼の力と符合しています。

 ・種などを見るとその粒を集めなければ気が済まない。縄の結び目を解こうと躍起になるという習性を利用したものとされます。

 ・映画・漫画・小説などで吸血鬼は棺桶で寝起きするというのが定番のようになっています。



 TRPG『Dungeons & Dragons』第五版では、果てなき夜に目覚めし者ヴァンパイア(吸血鬼)。それは己が失ってしまった生命を求め飢える者。生ける者の血を飲んで、その飢えを満たす者でした。彼らの肌を灼くため日光を忌み嫌うのです。彼らは影を落とさず、鏡にも映りません。それゆえ、生けるものに己の素性を気づかせまいとするヴァンパイアは、暗がりから離れようとせず、その姿を映すものを遠ざけます。

 生前の記憶があるか否かに関わらず、ヴァンパイアの物事に抱く愛着の想いは薄れるのです。かつては純粋だった感情は死せざる死によりいびつに歪んでしまいます。愛情は求めるばかりの執着に、友情は苦い嫉妬にと変わるのです。彼らは薄れる想いの代わりにと、望むものを手に取れる、形あるものとして追い求めます。ゆえに愛を求めるヴァンパイアは、若く美しい乙女に固執するのです。子どもは若さと可能性とを狂おしく望むヴァンパイアにとって、その両方を備えた存在であり、羨望の的です。また、身のまわりに美術品や書物、あるいは拷問器具や自分が殺したクリーチャーの所持品や体の一部など、薄気味悪い品を集める者もいます。

 ヴァンパイアの犠牲者の多くはヴァンパイア・スポーン(吸血鬼の落とし子)となるのです。それはヴァンパイアと同じく血に渇いた貪欲なクリーチャーですが、自分を作り出したヴァンパイアに支配されています。真のヴァンパイアが己の体から血を飲むことをスポーンに許せば、そのヴァンパイア・スポーンは真のヴァンパイアに変化し、主人の支配から離れるのです。しかし、このように|落とし子(スポーン)への支配を自ら手放すヴァンパイアはわずかです。ヴァンパイア・スポーンは自分たちを作り出したヴァンパイアが死ねば自由意志で行動するようになります。

 ヴァンパイアは皆、自分の棺や霊廟、墓地から遠く離れることができません。彼らは日中そこで休まなければならないからです。正式に埋葬されなかったヴァンパイアの場合、自分が死せざる死者へと変わった場所の地中1フィートのところで眠らねばなりません。棺を運んだり、相当な量の墓場の土をよそへ移し替えることで、ヴァンパイアは自分が埋葬された場所、眠らなければならぬ休憩場所を動せます。ヴァンパイアの中にはこのようにして、休憩場所をいくつも用意している者もいるのです。

 ヴァンパイアもヴァンパイア・スポーンも空気の必要はありません。

 ヴァンパイアが住処として選ぶのは、城や要塞化された邸宅、壁を巡らせた修道院など豪奢で守るに易い場所です。ヴァンパイアはその棺を地下の納骨堂や宝物庫に隠し、ヴァンパイア・スポーンほか、忠実な夜の化け物どもに守らせます。

 ヴァンパイアの住処の周辺ではコウモリ、ネズミ、狼の生息数が目に見えて増えるのです。

 住処から50フィート(約150m)以内の植物はしなび、草花の茎や木の枝はねじくれていばらのようなトゲが生えます。影が異常なほどに不気味なものとなり、しばしば生きているかのように動き出すのです。地を這うように霧が立ち込めます。この霧はときおり、つかみかかる爪やのたうつ蛇のような、不気味な形になるのです。

 このヴァンパイアが破壊されたなら、これらの効果は数日で消えます。

 ヴァンパイアの弱点は、家屋などの建物には、そこにいる誰かから招かれない限りは入れません。

 流れる水の中でそのターンが終了したら酸ダメージを受けます。

 ヴァンパイアが休憩場所にいて無力状態である間に、そのヴァンパイアの心臓を木で出来た刺突武器で貫いたなら、そのヴァンパイアはその「杭」が抜かれるまで麻痺状態となるのです。

 ヴァンパイアは日光のもとで自分のターンを開始したなら、光輝ダメージを受けます。日光のもとにある間、そのヴァンパイアは不利を被るのです。

 ヴァンパイアは登攀が難しい表面を難なく登攀でき、天井を逆さまに歩くこともできます。

 ヴァンパイアは、ヒット・ポイントが1でも残っており、日光のもとや流れる水の中にいないのであれば、自分のターン開始時毎に20hpを回復します。このヴァンパイアが光輝ダメージまたは聖水からのダメージを受けた場合、次のターン開始時においてこの特徴は機能しません。

 休憩場所の外でヒット・ポイントが0に減少したら、気絶状態になる代わりに霧の塊へと変化します。ただし、日光のもとや流れる水の中は除きます。この場合は変化することはできず、ヴァンパイアは破壊されるのです。霧形態になって2時間以内に自分の休息場所までたどり着けなかった時もヴァンパイアは破壊されます。ヒット・ポイントが0のヴァンパイアは、自分の休憩場所で1時間過ごしたのち1ヒット・ポイントを回復し、麻痺状態からも回復するのです。

 日光や流れる水の中以外では、超小型サイズのコウモリまたは中型サイズの霧の塊に姿を変えるか、真の形態に戻ることができます。コウモリの形態でいる間は話せません。ヴァンパイアが着用しているものは変化しますが、運搬しているものは変化しません。ヴァンパイアが死ねば真の形態に戻ります。霧の形態でいる間は、話すことも物体を取り扱うこともできません。空気が流れているのなら霧の形態のままでそこを移動することができます。水を通り抜けることはできません。

 ヴァンパイアは人型生物を魅了できます。魅了されるとヴァンパイアの下僕として立ち回り、血を吸われることも同意するのです。

 太陽が出ていなければ魔法「スウォーム・オブ・バッツ」または「スウォーム・オブ・ラッツ」を呼べます。野外なら代わりにウルフを呼べるのです。呼ばれたクリーチャーはヴァンパイアの命令に従います。呼ばれてから1時間が経過するか、ヴァンパイアが破壊されるか、ヴァンパイアが退去させるまで残るのです。

【ヴァンパイア・スポーン】

 ヴァンパイアと異なり心臓に杭を打ち込まれると破壊されます。

 コウモリや霧に変化することもできないし、他のクリーチャーも魅了できません。また動物も呼べないのです。

 それ以外はヴァンパイアに準じます。



 TRPG『PATHFINDER RPG BESTIATY』では、ヴァンパイアは生者の血をすする人型のアンデッド・クリーチャーです。ヴァンパイアの姿は生前とほとんど変わらず、たいていはいっそう魅惑的になるが、中には冷酷かつ野蛮な外見になる者もいます。

 ヴァンパイアの多くはかつて人型生物かフェイか人形怪物でした。

 ニンニクの強いにおいに耐えられず、ニンニクで囲われた範囲には入ろうとしません。同様に鏡やはっきりと見せつけられた聖印には怯んで後ずさります。これらのものはヴァンパイアを害しはしない――単に寄せ付けないだけです。怯んだヴァンパイアは鏡や聖印を持ったクリーチャーから少なくとも5フィート離れなければならず、それらのアイテムを持ったクリーチャーに対しては接触することも近接戦闘も行えません。ヴァンパイアは嫌悪感を克服し通常通りに行動できるようにもなれます。

 ヴァンパイアは家屋などの私的な居住施設には、誰かそうするにふさわしい者に招かれない限り、入ることができません。

 ヴァンパイアのHPを0以下に減少させることは、ヴァンパイアを無力にするものの、必ずしも滅ぼすに至りません(“高速治癒”があるため)。しかし、いくつかの攻撃はヴァンパイアを滅ぼせます。ヴァンパイアは皆、直射日光を浴びると最初のラウンドでよろめき状態になり、逃れることができなければ、日光を連続して浴びた2ラウンド目に完全に破壊されます。流れる水に完全に沈められてしまったら、ヴァンパイアは毎ラウンド、最大HPの1/3に等しいダメージを受けるのです。この方法でHPが0になったヴァンパイアは破壊されます。無防備状態のヴァンパイアの心臓に木の杭を打ち込む(これは1回の全ラウンド・アクションである)と、ヴァンパイアは即座に滅ぼされます。しかし、首を切り落とし聖水で清めない限り、杭が取り除かれるとヴァンパイアは蘇るのです。

【ヴァンパイア・スポーン】

 ヴァンパイアは、人型生物に対してのみ、同族作り能力を使用する際に、完全なヴァンパイアの代わりにヴァンパイア・スポーン(吸血鬼の落とし子)を作り出せます。ヴァンパイアが吸血もしくは生命力吸収を用いて適当なクリーチャーを殺した場合は、その都度フリー・アクションとしてこの決定を行なわなければなりません。

 以下の相違点を除いて、ヴァンパイア・スポーンのデータはワイトのデータとまったく同じです。

・ヴァンパイア・スポーンはヴァンパイアの吸血及び支配の特殊攻撃を得る。

・ヴァンパイア・スポーンは、エネルギー放出に対する抵抗、ダメージ減少、銀、[氷雪][雷撃]に対する抵抗、高速治癒2、およびヴァンパイアのその他の特殊能力(影がない、ガス化状態、及びスパイダー・クライム)を得る。

・ヴァンパイア・スポーンは同族作りの能力を持たない。

・ヴァンパイア・スポーンは通常のヴァンパイアの弱点をすべて得る。



 TRPG『ADVANCED FIGHTING FANTASY』第2版『モンスター事典――奈落の底から――』では、“暗黒の貴公子”の異名で知られるヴァンパイアは、すべてのアンデッド・モンスターの中でも最も恐れられています。

 ヴァンパイアは邪悪なパワーを持ち、ほぼ不死と言えるため、殺すのはひじょうに困難です。多くの勇敢な冒険者がそれを目論んだことで悲惨な結末を迎えています。ヴァンパイアと遭遇するのは、たいていは墓所の内部かその近くです。毎朝、恐ろしい太陽の光が射す前に、そこに戻って身を守らねばなりません。食欲を感じると、コウモリに変身して夜の闇を飛んでいき、獲物を探します。

 食事は温かい人間の血液です。長い犬歯で相手の首に噛みつき、頚静脈から直接血を吸い上げようとします。そのため獲物にじゅうぶん近づく必要があり、強力な催眠効果を持つ視線を備えているのです。ヴァンパイアの赤い目に睨まれた者は、そのパワーに屈して自身の意思を失い、血を吸われている間、抵抗もせず立ち尽くすことになります。3晩続けて咬まれた犠牲者は死亡した後、ヴァンパイアとなって蘇るのです。そして仲間の冒険者を探し、血を吸おうとするでしょう。

 ヴァンパイアを殺す方法はいくつかあります。直射日光にさらせばマントの中で塵となり、一瞬で殺すことができます。しかしヴァンパイア相手に、そんな好機はめったに訪れません。夜が明けるや、安全な柩へと逃げ帰ってしまうからです。十字架や一房のニンニクを振りかざしても、しばらくの間ヴァンパイアを遠ざけておけるだけです。

 ヴァンパイアを通常の武器で攻撃するのは利口ではありません。攻撃は命中するし、それによって相手を傷つけたように見えるかもしれない。しかし実際には、通常の武器ではヴァンパイアにダメージを与えることはできず、武器が引き抜かれたとたん傷口はふさがってしまいます。傷を与えられるのは銀の武器です。銀の武器で殺されたなら、ヴァンパイアは塵になって崩れ去るが、そこからコウモリが現れ、飛び去っていきます。コウモリはヴァンパイアの霊魂で、数日が経過すればまた元の姿に戻り、復讐のために戻ってくるでしょう。

 ヴァンパイアを完全に殺す最善の方法は、日中、そいつが眠っている間に杭で心臓を刺し貫くことです。もちろん、そのためには柩の場所を突き止めねばなりません。たいていは墓地の地下の古い霊廟に隠されているでしょう。杭で心臓を貫かれると、ヴァンパイアは目を覚まし、苦痛のうちに死んでいきます。再び杭が抜かれるまで、その恐ろしい生き物は死んだままです。しかし頭を切り落とし、焼き尽くされないかぎり、ヴァンパイアは杭が抜かれるとまた蘇るでしょう。



 TRPG『Tunnels & Trolls』完全版では、ヴァンパイア化は血液感染によって生じる突然変異で、ヴァンパイアに噛まれることで、新しいヴァンパイアが生まれます。この災難は最初は病気のような症状を示し、こうした初期の段階であれば、強力な治癒魔法によって治せます。いったん(彼らの言葉を借りるなら)「変化」を終え、完全にアンデッドの仲間になると、ヴァンパイアは手に入れた新たな力と能力を駆使できます。そうなると、この変異病はもはや魔法では癒せません。

 ヴァンパイアは魔法と幻覚の達人で、簡単に「周囲に溶け込む」ことができます。ひとたび本性が明かされたら、他のモンスターの種族でさえ、彼らを憎み、恐れます。

 とりわけ、グールは彼らの長命を妬み、彼らが文明社会のより上流層に受け入れられていることをうらやんでいます。ヴァンパイアはグールを、とくにおぞましい自分たちの異種とみなし、嬉々として彼らを殺します。

 ヴァンパイアは生まれつき変身能力を備えており、また短時間ですが、ひじょうに素早い反応を示せます。さらに、トロールと同じように、素早く再生します。とても魅力的な一面を持っていると同時に、瞬時に恐ろしい顔に切り替える能力を備えています。聖なる品物には影響を受けませんが、炎やニンニク、銀(とくにエルフのムーンシルバー)を彼らに対して使うと、特別な効力を発揮します。陽光は彼らに痛みを与え、目をくらませます。炎は彼らを再生の望みがなくなるまで完全に破壊します。ヴァンパイアを永遠に葬るには、頭部を胴体から切り離し、その両方を灰になるまで焼き尽くさなくてはなりません。


 TRPG『Tunnels & Trolls』完全版『MONSTER! MONSTER!』では、この古くから有名なモンスターは神聖なもの、とくに銀の十字架を恐れます。にんにくや日光はどちらもヴァンパイアに効果があります。流れる水を自力で渡ることはできず、人の住まいには住んでいる人間自身が一度招き入れないかぎりは入ることはできません。ヴァンパイアを完全に滅ぼすには日光にさらすか、心臓に木の杭を打ち込まなければなりません。ヴァンパイアには、コウモリや霧に変わったり、自分より能力値の低い人間を(一度にひとりずつ)催眠状態に陥れるという特殊能力があります。ヴァンパイアの餌食になって死んだ人間は、ヴァンパイアになります。こうして生まれたヴァンパイアはもとのヴァンパイアのしもべとして行動します。

 ヴァンパイアは特殊な能力や弱点の多いモンスターです。以下にヴァンパイアの特徴とされることを列記しておきますが、GMは自分の考えでこれらの特徴を取捨選択、あるいはアレンジして利用してください。

 ヴァンパイアは人間の血を吸って生きて(?)います。長期にわたって血が吸えなくなったときは、ヴァンパイアは処女の血を好む、あるいは、処女の血でなければ生きながらえないとされることもあります。

 ヴァンパイアに血を吸われ、死んだものはヴァンパイアとなって復活します。このようにして生まれたヴァンパイアはゾンビのような醜い容姿であることも。

 ヴァンパイアは相手の目を覗き込むことで、催眠術にかけ、操れます。しかし、ヴァンパイアの知性度が相手以上でなければ、この催眠術は効果がありません。また1戦闘ターンにひとりずつに限られます。

 ヴァンパイアはコウモリや霧に変身する能力を持っています。霧になってしまっったら、キャラクターには手をこまねいて見ているしかありません。

 ヴァンパイアは鼠や狼などの群れを支配し、自由にコントロールします。それによって、チフスなどの疫病を蔓延させることも。

 ヴァンパイアは傷などを受けてもすぐに再生してしまいます。再生の早さは1通常ターンに自分の幸運度の数値と同じだけです。GM選択として、さらに高い再生率を採用してもかまいません。たとえ耐久度/MRが0になっても、再生は起こります。

 ヴァンパイアは十字架やいろいろな聖なるものを嫌います。オリジナルのキャンペーン・ワールドで遊んでいて、十字架のない世界の場合でも、十字架に変わる聖印や護符はヴァンパイア除けとして役に立ちます。

 ヴァンパイアはニンニクを嫌います。臭いの強い草は魔除けの働きがあると信じられていたのです。オリジナル・ワールドの設定上の理由などで、ニンニクがない場合、GMは別の香草が有効ということにしてもいいでしょう。

 パン屑や塩などでヴァンパイアの周りに聖円を描けば、ヴァンパイアはその中から出られなくなってしまうという言い伝えがあります。

 ヴァンパイアにとって太陽の光は大きな障害です。ただし、これには段階があります。どのような姿であれ、太陽の光を浴びると灰になって破滅するものもありますし、単に無力化するだけのものもあります。中には、太陽の光などものともしないものもあります。

 ヴァンパイアは胸に白木の杭を打ち込めば倒せます。

 ヴァンパイアは鏡に映りません。

 ヴァンパイアは影を持ちません。

 ヴァンパイアは流れる水を渡れません。

 ヴァンパイアは一度家人に入るように言われてからでないと、その家に入れません。

 ヴァンパイアは銀製の武器でないとダメージを与えられません。あるいは、銀以外の武器の傷がすみやかに再生することにしてかまいませんし、単に銀がひじょうに致命的(3倍ダメージなど)としてもかまいません。

 もちろん1つのワールドのなかに、いろいろな種類のヴァンパイアがいてもかまわないでしょう。



 TRPG『ソード・ワールドRPG』完全版では、吸血鬼と呼ばれものには、「ノーライフキング」「バンパイア」「レッサー・バンパイア」の三種類があります。いずれの種類も、他者の生き血や精神力を吸って、永遠の生命を長らえています。そして、これらの吸血鬼に血を吸われた人間もまた、レッサー・バンパイアと化してしまいます。

 ノーライフキングは「リッチ」の項目で説明しています。

 バンパイアは、暗黒神のしもべの中から自然発生的に現れたものです。これらの吸血鬼に血を吸われたり、精神力を奪われた者が、レッサー・バンパイアとなります。また、レッサー・バンパイアに血を吸われても、やはりレッサー・バンパイアが誕生します。

 吸血鬼には共通する特徴がいくつかあります。まず吸血鬼は青白い肌を持ち、目に赤い光を宿しています。この赤い目は、見た者に激しい恐怖を起こさせます。吸血鬼と視線を合わせてしまった者は、抵抗ロールに失敗すれば恐怖に麻痺してしまい行動できなくなるのです。この麻痺はいったん吸血鬼が視線を外しても、姿を消すまでは持続します。

 吸血鬼は普通の武器では傷つきません。倒すには、銀か魔法の武器が必要です。また、吸血鬼の攻撃がキャラクターに命中したら、通常のダメージに加え、精神力にも被害が及びます。このダメージには鎧の防御力は役に立ちません。冒険者レベルと魔法的な防御力だけが有効で、この攻撃で精神力が0になった者はそのまま死亡し、レッサー・バンパイアとして24時間後に復活します。

 吸血鬼は人間の生き血を吸うことで、精神点を維持しています。魔法などで精神点を一時的に失った吸血鬼は、他の人間の生き血を吸うか、他の人間の精神力を奪取しなければ、回復できません。吸血鬼は、抵抗不能の人間ひとりぶんの生き血を10分間で吸いつくすことができ、それによって精神点を完全に回復できます。生き血を吸われた者は、精神点を失い、そのままレッサー・バンパイアとして24時間後に復活します。また、吸血鬼は通常の攻撃でも精神力を奪取でき、それはそのまま吸血鬼の精神点に加えられます(ただし上限を超えることはありません)。

 もし丸一日の間こうした精神力の奪取が行なえないときは、自動的に精神点を一点失います。

 吸血鬼の負の生命力は強い再生力を持っていて、0にならないかぎり、1ラウンドあたり3点の割合で自然に再生します。

 吸血鬼は太陽の光を嫌います。太陽の光のもとにさらされると、吸血鬼は毎ラウンド生命点と精神点に1点ずつのダメージを負います。太陽のもとでは生命点は再生しません。

【レッサー・バンパイア】

 レッサー・バンパイアは、他の吸血鬼に血を吸われた犠牲者が変化して出来るモンスターです。そのきっかけとなった(いわば親にあたる)吸血鬼の命令には必ず従います。痩せ衰えた不健康な青白い肌をしており、赤く光る目は見るものに激しい恐怖を起こさせます。レッサー・バンパイアと視線を合わせたキャラクターは恐怖に麻痺してしまい、行動できなくなります。

 レッサー・バンパイアは普通の武器では傷つきません。倒すには、銀か魔法の武器が必要です。またレッサー・バンパイアの攻撃が命中したキャラクターには通常のダメージに加え、精神力にも被害が及びます。

【バンパイア】

 バンパイアは、暗黒神のしもべや、暗黒神に特に気に入られていたような者が、死後アンデッドとして復活したものです。生前の能力はほとんどそのまま保持します。加えて高レベルの暗黒魔法を使用する力も得ます。神聖魔法は使えなくなりますが、もし暗黒魔法以上の神聖魔法レベルがあれば、そちらのレベルを優先します。バンパイアは空中を浮遊しながら移動する能力を有しています。

 バンパイアの負の力は「|邪な土(アンホーリー・ソイル)」と呼ばれる土に強く結びついています。生命点が0になった場合や、「ターン・アンデッド」の魔法をかけられた結果、肉体が崩れ去った場合には、パンパイアはもやとともに消滅しますが、一日後にはその「土」のある場所で完全再生します。バンパイアは、生命点が0になる前に自分の意志で靄と化し、「土」のある場所での再生を図ることもできます。「パラライズ」などの魔法で動きを封じられていても、靄となることは可能です。

「土」のある場所で再生している途中に冒険者などに発見された場合、バンパイアは実体をとることができません。靄のままです。

 靄となったバンパイアに対しては、太陽の光やその他のいかなる攻撃を用いても傷つけられません。靄はやがて薄れて、キャラクターには見えなくなってしまいます。

 多くのバンパイアは、棺桶を用意してその中に敷き詰めるという方法でこの「土」を保存していますが、中には部屋の中に盛り土にしてあるだけの者もいます。バンパイアの知識があるセージは、「知識」の能力によって「土」を見てその正体を完全に見抜けます。そのためにはバンパイアを知っている必要があるのです。

 シャーマン技能を持つ者が「土」を見れば、それが普通にあらざるものであることをすぐに見抜けます。バンパイアを知っているセージなどが同行していて、なおかつこの「土」が普通にあらざる土だとわかれば、その正体を推理できるでしょう。

 バンパイアは精神点を0にするか、「土」を本来の場所から取り除いたうえで生命点を0にすることで倒すことができます。ただし、慎重なバンパイアはいくつかの場所に「土」を用意しているのが普通です。



 TRPG『ロードス島戦記RPG』では、バンパイアはいわゆる「吸血鬼」です。痩せて青白くなった肌に、闇夜に輝く赤い瞳、発達した犬歯を持ちます。暗黒神のしもべが、暗黒神の儀式や奇跡を経て死後に復活した姿です。永遠に老いることはなく、生前の記憶を完全に保持しています。バンパイアの「レベルドレイン攻撃」で「死亡状態」になった者はレッサー・バンパイアになるのです。バンパイアは「死亡状態」になったとき、その体が「霧」になる。「霧」になると飛べるようになり、周囲のいっさいの効果や自身の他の特殊能力の影響を受け付けず、太陽光の影響も受けません。バンパイアは「邪な土」と呼ばれる土のある場所で24時間の休息をとると、それがたとえ「霧」の状態であっても、LPとMPが最大値の状態で復活します。「邪な土」には邪な精霊力が働いており、バンパイアを知っている者なら【見識】判定に成功すれば「邪な土」であるとわかるのです。「邪な土」は太陽光にさらされるか「ターン・アンデッド」の効果範囲になると、ただの土に戻ります。

【レッサー・バンパイア】

 レッサー・バンパイアは痩せて青白くなった肌に、闇夜に輝く赤い瞳、発達した犬歯を持ちます。バンパイアに吸血された犠牲者で、バンパイアの奴隷となっています。生前の記憶を持ってはいますが、主の命令には絶対服従します。

 レッサー・バンパイアの「レベルドレイン攻撃」で「死亡状態」になった者は、レッサー・バンパイアになるのです。



 TRPG『ログ・ホライズンRPG』では、吸血鬼ヴァンパイアは貴族然とした人型のアンデッドモンスター。青白く美しい容姿と高い知性を持ち、魅了の力を秘めた邪眼で人間をたぶらかし、爪や牙で傷つけて生き血をすすります。『大災害』によって彼らの行動範囲は大きく広がり、従者を増やして街ひとつを支配するまでになった個体も存在するのです。

吸血鬼ヴァンパイア従者・サーバント

 吸血鬼ヴァンパイアが作り出す従者で、外見は吸血鬼ヴァンパイアとほぼ変わりません。主である吸血鬼ヴァンパイアに忠実に仕えており、主や仲間と巧みに連携しながら闇の魔法を用いて外敵を排除します。『大災害』以後は執事やメイドとして才能を見せる者が多く、主の世話や棲み家の管理を行なうほか、邪悪な趣味の手助けをするために棲み家の外へと派遣されることもあるようです。

吸血鬼ヴァンパイア伯爵・カウント

 人間とよく似た外見のアンデッド「吸血鬼ヴァンパイア」の一種、紳士然とした物腰とシルクハットが特徴。黒い旋風に姿を変えて高速で移動しながら切り裂いたり、霧に姿を変えて攻撃を無効化できます。



 TRPG『ゴブリンスレイヤーTRPG』では、吸血鬼ヴァンパイアは、最も著名で、最も恐るべき怪物であり、真の意味でのアンデッドです。人を襲い、血を吸い、同族を増やすことで多くの伝説に名を残していますが、弱点については慎重に隠匿されています。





最後に

 今回は「ヴァンパイア」についてまとめました。

 著名な「吸血鬼」ですが、その特徴は作品ごとに違いが現れています。

 あなたの「剣と魔法のファンタジー」にヴァンパイアを出したいときは、自分の作品に合わせた形の特徴を持たせられるよう、メモ書きして特徴がブレないようにしましょう。



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