646.文体篇:報告書や論文との比較(2/2)
今回も「
小説だけ書けるのも考えものです。
最低限「
報告書や論文との比較(2/2)
三段論法が使えるようになると、文章に説得力が出てきます。それがたとえどんなに無理やりでもです。
また、論理を進めていく接続詞の類いは本文を書くときには使えませんが、「
そんな言葉を見ていきましょう。
三段論法(そもそも〜べきだ)
「そもそも〜べきだ。しかるに〜はこうだ。それゆえ〜はよい(よくない)。」
論理の展開で最も初歩なのは「三段論法」です。
「そもそも学校は社会性を身につける場であるべきだ。しかるに、立場の弱い人をいじめることがまかり通るとパワハラ上司を生み出す母体となりかねない。それゆえいじめには反対だ。」
まず理想論や理論を「そもそも〜べきだ。」で提示します。
次にそれに対して現状や推測を「しかるに〜はこうだ。」で提示するのです。
最後に書き手の主張を書きます。
「学校は社会性を身につける場」「いじめはパワハラ上司を生み出す」「いじめには反対」という論理の推移は、読み手にとてもわかりやすいのです。
三文目の「書き手の主張」を導くために、誰もが納得できる普遍的な理想論や理論を一文目に書きます。そして二文目に、三文目へ論を進めるための現状や推測を書くのです。
「そもそもそれってそういうものだよね。でも今はこういうものだよね。だからこれはこうするのだよ。」と論理を進行します。
このままでいくと
警告を与えたいときの文型に「このままでいくとこうなる。」があります。
「お前はゲームで遊んでばかりだな。このままでいくと授業についていけなくなってよい大学に入れなくなるぞ。」と昔はよく言われたものですが、今はe−SPORTSの台頭によって警告でなくなりました。
経過を示す文型として「このままリハビリを続ければ、一か月で脚の筋力が戻って歩けるようになるでしょう。」とポジティブなものに変わるのです。
と思われているけど、実際は
あえて反対のことを例示することで、文を引き立てることができます。
「あのタレントって清純派だと思われているけど、実際は妻のいる男性と不倫しているんだよ」という出来事もありましたね。
このように「〜と思われているけど、実際は〜」と反対のことを言われると、人はそのギャップから「実際は〜」の文を明確に憶えてくれるのです。
推理小説で聞き込みをしていくと、ある人物が「あのAさん。皆から子煩悩と思われているけど、実際は家の中で虐待していたらしいのよ。」と語ります。これで「Aさんは子どもを虐待していたのか」という情報を読み手の脳に強く刻みつけることができます。
こうやって読み手は推理に頭を働かせるのです。
まったく別に見えるが、実は共通点がある
「親の言いつけを守って、いい子でいようとする。よい学校へ進学するために学習塾に通う。大会に向けてスポーツ部活動に励む。非行に走る。まったく別に見えるが、実は共通点がある。それは子どもが親の愛情に飢えていることだ。」
これも推理小説でよく見られます。聞き込みで得られた真実は、一見するとつながりが無いように見えるのです。しかしよくよく考えてみると、どうやらひとつの真実が見えてくるような気がします。そして刑事や探偵はひらめくのです。「まったく別に見えるが、実は共通点があった」のだと。
逆に「同じに見えるが、実はまったく異なっている」ということもあります。
「ジョギングと遠泳は持久力が求められるという点から同じように見えるが、実はまったく異なっています。」というような場合です。
推理小説なら聞き込みで集めた情報を精査し、一見すると同じような内容だがこの情報は根本がまったく異なっているというものを見出だします。これによって新発見をしたり、アリバイトリックの可能性を潰していったりするのです。
こそ
指示する体言をピンポイントで強調するときに用いる助詞が「こそ」です。
「愛こそが人類を救うのだ。」「金メダルを獲ることこそが彼の使命だ。」「今度こそやり遂げます。」「だからこそ治療する価値がある。」
このように、体言や用言の体言化(「金メダルを獲ること」のようにする)を強調するのに、最も適した助詞です。
「だからこそ」は接続詞「だから」に「こそ」を使うことで、主張の強調ができます。
「ゲーム終盤のコーナーキックでゴールキーパーもペナルティーエリアまで上がって失点するリスクが高まった。だからこそ、得点するチャンスが高まるのだ。」「いつもA校に負け続けた。だからこそ、選手たちは勝つための特訓に身を入れた。」
「〜こそ、〜する最善の〜だ。」「〜こそ、〜する唯一の〜だ。」という文型もあります。
「一刻も早い撤兵こそ、現在とれる最善の策だ。」「彼女が上京する明日こそ、想いを告白する唯一のチャンスだ。」
助詞「こそ」で強調しているので、続く文の必然性を高める役割をするのです。
それは〜である
言いたいことを強調したいときは、例を示してから「それは〜である。」の文型を使います。
「お賽銭として五円を入れてご縁を願う。それはただのケチである。」「専門家のご高説を賜ったが理解できなかった。それは馬の耳に念仏である。」
他ならぬ
人物を強調するときは「それは〜である。」の応用で「〜は他ならぬ〜だ。」とします。
「速水を守った人、それは玲子だった。」を「速水を守ったのは、他ならぬ玲子だった。」のように置き換えるのです。
「速水を守ったのは、誰あろう玲子だった。」「速水を守ったのは、他の誰でもなく玲子だった。」と応用できます。
言うまでもなく〜は〜
読み飛ばしてもよい文の場合に用いる文型です。
「言うまでもなく、GAFAとは、Google、Apple、Facebook、Amazonの四社を指している。」のように使います。
読み手の多くが「GAFA」を知っていれば読み飛ばせますし、知らなければこの一文で憶えることができるのです。
「周知のとおり、Appleの創業者はスティーブ・ジョブズだ。」「よく言われるように、Facebookのセキュリティーは脆弱である。」などの応用もあります。
だがそのために〜になった。そこで〜する必要がある
「一見よいことでも、実は悪いことが起こった。改善するにはこういうことをする必要があります。」という利害関係と改善法を同時に提示する文型です。
「毎朝10km走っている。だがそのために慢性の膝痛になった。そこでこれからは走る前後に入念なストレッチをする必要がある。」
逆に「一見悪いことでも、実はよいことが起こった。」というパターンもあります。
「膝痛になって走るのもつらくなった。だがそのために膝の痛まないランニングフォームが身についた。」
それに引き換え
「プランAはノーリスク・ノーリターンである。それに引き換えプランBはハイリスク・ハイリターンである。」のように対比をするときによく使われる文型です。
これは「プランAはノーリスク・ノーリターンである。一方プランBはハイリスク・ハイリターンである」と書くこともあります。
まるで〜のようなものだ
比喩を用いてわかりやすくする文型があります。
「国家を治めるということは、まるで家庭を営むようなものだ。」「株式投資で儲けるというのは、まるで霞を食べるようなものだ。」といった使い方です。
小説はただ説明するよりも、比喩を用いて表現するほうがよいとされています。
では〜はどうだろうか。もちろん〜だ
疑問形にすることで注意を惹きつける効果があります。
「では太平洋戦争はどうだろうか。もちろん検証の余地があるのだ。」
疑問形に対して反語を付けることもあるのです。
「開戦に踏み切った根拠を検証しなくてもよいのだろうか。いや、よいはずがない。」
しかしあまりにも用いすぎると鼻につきますから、一文中のここぞという箇所で用いましょう。
最後に
今回は「報告書や論文との比較(2/2)」について述べました。
この二回で挙げたのはほんの一例です。
ですが、知っていればかなりわかりやすい「
わかりやすい「
本文の差がわずかなら、「
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