645.文体篇:報告書や論文との比較(1/2)
今回と次回は「
小説の文章と「
「
ですが「
こうした「
報告書や論文との比較(1/2)
小説を書くことと直接結びつきませんが、効果的な「
わかりやすい「
結論を真っ先に書く
報告書や論文では、結論を真っ先に書きます。
小説でも「
「この小説は、騎士を夢見る辺境住まいの少年が、幾多の戦いを経ることで本物の騎士として人々から認められる、剣と魔法のファンタジー物語です。」
これがわかっていれば、下読みさんは「この小説はそういうお話なのか」と理解したうえで選考に臨めます。
もしわからなければ、一読して内容を正確に記憶しながら読むのは困難ですから、二度読みをする必要が出てきます。つまり「
それが選考で有利に働くと思いますか。明らかに不利ですよね。選考さんに二度手間をかけさせているわけですから。
だから「
「結論」がわかれば「この先どう展開するのか」「キャラクターが立っているか」ということに注力して読めます。
ただし「結論」から書くのは「
小説投稿サイトたとえば『小説家になろう』の「あらすじ」でいきなり「結論」が書いてあったとしたら。あなたはその小説を読んでみようかと思いますか。
読まなくてもどんな「結末」の小説なのか読み手にバレていますから、興醒めもいいところです。「物語の展開」や「キャラ立ち」を見たくて読んでいるわけではありません。「この先、どんな展開になるんだろう」とわからないからワクワク感を味わえるのです。
小説投稿サイトで企画されている「小説賞・新人賞」への応募作には「
確かに
理屈を述べたいとき、一般論を先に述べてから私見を綴るのが鉄則です。
「確かに」はこの作用を引き起こす言葉になります。
「グリフォンは確かに鷲の翼と上半身をしているが、ライオンの胴体と下半身を有している。」と書けば、魔獣グリフォンはパッと見で鷲に見えるのです。しかし胴体と下半身はライオンなんですよと伝える一文になります。
「確かにプランAを採用すればリスクは最小限にできます。しかし多少のリスクを背負ってでもより利幅の大きなプランBを採用すべきです。」
「確かに」を用いるときは「断言する」ことがたいせつです。
「確かに多少のリスクを伴うかもしれませんが、プランBの利幅は魅力的ではないでしょうか。」と「断言せず」判断を他者に委ねようとすると「確かに」が効いてきません。
「確かに多少のリスクを伴いますが、プランBの利幅は魅力的です。」
と書くのです。
私見に自信がなく、とりあえず反対意見が出るだろうことを織り込んであらかじめ反対意見を潰しておきたい。そういう理由で「確かに」を用いるのは書き手の「逃げ」です。
三例
説明するときに、とくに知っておいてもらいたい事柄を三つに絞る方法があります。
二つでは説得力に欠けますし、四つ以上では多すぎて主論が忘れられやすいのです。三つが最も説得力を持ちます。
「TRPG《テーブルトーク・ロールプレイングゲーム》で六面体のダイス(サイコロ)だけを使うシステムにした理由は三つあります。第一に多面体ダイスは入手しづらいのでプレイヤーが限られてしまうのです。第二に六面体ダイスは同じ形と色のものを十個でも二十個でも揃えられます。第三に同じ多面体のダイスを複数個振れば釣鐘型の確率が現れるのでシステム設計が簡略化できるのです。」
実は事柄を三つに絞るのはとてもたいへんです。それだけ問題点を整理するのが難しいと言えます。
小説ならたとえば主人公には、とるべき選択肢が「右へ行く」か「左へ行く」かの二つしかない場合。三つめの選択肢として「その場に留まる」か「真ん中を通る」かを入れるだけの柔軟な発想も必要です。
『一休さん』で有名な「このはしわたるべからず」と書かれた立て札のある橋では、みんなが「橋を渡らない」という選択しかしていません。たまに立て札を見落として橋を渡ってしまうと捕まって咎められます。
しかし一休さんは堂々と橋を渡りました。「橋を渡らない」「橋を渡る」という二択以外の「第三の選択肢」を提示したのです。
この立て札がひらがなで書かれていたことがミソで、一休さんは「第三の選択肢」として「この端渡るべからず」つまり「橋の真ん中を渡る」を選びました。当然お咎めを受けそうになりますが「端を渡ってはならないと書いてあるから、真ん中を渡ったんですよ」と涼しい顔。
この場合選択肢は「橋を利用するかどうかには三つあります。まず橋を渡らないこと。次に橋を渡って怒られること。最後に堂々と橋の真ん中を渡ることです。」
このように「三例」を挙げるときは、最も重要なものを三番目に持ってきましょう。
ひとつずつ重要度が高くなる順に提示することで、説得力のある言いまわしとなります。
「第一に」が最も重要だと、「第二に」「第三に」と弱まってしまい説得力がなくなるのです。順々に重要な例を挙げることで「あ、こんなことがあるのか」「そこまでは気がつかなかったな」と読み手がうなるような例を挙げることで説得力がいや増します。
のは・かといえば
例は三つあることが望ましいのですが、ひとつしか思い浮かばないこともあります。
その場合は「〜のは、〜」という表現を使いましょう。
「私がそのように考えるのは、他社と差別化を図るためです。」「彼がそう感じたのは、玲子のなにげない一言からだ。」と用います。
他に「〜かといえば、〜」という表現もあるのです。
「組織の横のつながりを促進してください。なぜかといえば、縦割り行政の弊害で多省庁による合同チームが形だけのものになっているからです。」
「チームの団結が求められる時期に来ています。いつからかといえば、リオ・デ・ジャネイロ五輪で4×100メートルリレーで日本代表が銀メダルを獲得した頃からです。」
「他業種でもそのような働き方が増えています。どこでそうなのかというと、クラウドソーシングを活用することによって満員電車に揉まれて職場へ出勤する人を減らそうと大都市が積極的に取り組んでいるのです。」
「〜のは、〜」「〜かといえば、〜」は、直前で改行するのが最もよい用い方です。前段とは話の主張が切り替わっています。
「言いたいことが異なるのなら改行する」のがいちばんわかりやすいからです。
具体的に言うと・まとめて言うと
ちょっと難しい概念や抽象的なものを説明するときは、具体例を出すとわかりやすくなります。
「私はコンピュータ・スキルが高いのです。具体的に言うと、自作パーツから一晩で新たなPCを組み立てることができます。」
「私は野球のセンスがあります。具体的に示すと、一シーズンで投手として時速160km以上の速球を操り、打者として20本以上のホームランを放り込めます。」
逆に具体例を列記して、最後に抽象的にまとめて説明するとわかりやすくなります。
「パーツから一晩で新たな自作PCを組み立てられます。各パーツをWindows10で扱えるようにするドライバを用意できます。つまりまとめて言うと、私はコンピュータ・スキルが高いのです。」
「一シーズンで投手として時速160km以上の速球を操れます。打者として20本以上のホームランを放り込めます。つまりまとめて言うと、私は野球のセンスがあるのです。」
この具体化と抽象化を使い分けることで、読み手の理解が深まっていくのです。
最後に
今回は「報告書や論文との比較(1/2)」について述べました。
「
先がわからない状態で選考さんに読んでもらうと、その場では意外な驚きに満ちているかもしれません。しかしもう一度読んでみないことには冷静に判断ができないのです。
しかも先がわからないから、その場その場で判断していかなければなりません。「ここはどうかな」と小さなマイナスが積み重なって、最後まで読んで集計したら落選だった、ということもあります。
だから「
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