447.発想篇:見た目を変える

 今日は「見た目を変えてみる」発想法です。

 コラムNo.352「不調篇:人生なんて似たようなもの」で述べた「換骨奪胎」がかかわってきます。





見た目を変える


 物語とは面白いもので、話の中身は同じなのに舞台を変えるだけでまったく異なる物語を描くことができます。

 あなたも知っているあの作品はどうでしょうか。

 この発想方法はコラムNo.352「不調篇:人生なんて似たようなもの」で述べた「換骨奪胎かんこつだったい」がかかわってきます。




STAR WARSとスーパーマリオブラザーズ

 映画のジョージ・ルーカス氏『STAR WARS』は主人公ルーク・スカイウォーカーが囚われのレイア姫を助けに、敵であるダース・ベイダーのいる宇宙戦艦スター・デストロイヤーに向かい、ダース・ベイダーの手からレイア姫を取り戻す物語です。ついでに宇宙要塞デス・スターを破壊するミッションを完遂して終劇します。

 この物語、どこかで観たことありませんか?

「白馬の騎士が囚われの姫を助けるため、敵の居城に乗り込んで悪を滅ぼして世界に平和をもたらす」という典型的な騎士伝説がそのまま使われているのです。

 違いがあるとすれば、舞台が「宇宙」であることと主人公が「ジェダイ」と呼ばれる「騎士」であることです。

 この物語をそのまま用いたのでは独創性がありません。

 ジョージ・ルーカス氏はここに「日本の剣劇チャンバラ」を組み入れました。

「ジェダイ」の騎士が皆ライトセーバーを用いているのも、「剣劇チャンバラ」をさせるためです。

 世界的な名作も、企画のスタート地点では典型的な騎士物語であることを知れば、皆様も心穏やかでいられるのではないでしょうか。


 つまり企画のスタート地点では小説投稿サイトの「テンプレート」を用いてもまったく問題ないのです。

 企画が面白くなるかは舞台とアイデアを加えることにあります。

『STAR WARS』のように「剣劇チャンバラ」に主眼を置いて読み手を魅了するライトノベルも「あり」です。


 まったく同じ話をゲーム内世界で行ない人気を博した作品があります。

 任天堂『スーパーマリオブラザーズ』です。

「主人公マリオが囚われのピーチ姫を助けにクッパの待つ城に乗り込み、クッパを倒してピーチ姫を助ける」話。

『STAR WARS』とまったく同じ物語なのにゲームというだけでこうも見せ方や感じ方が異なるのです。




とある魔術の禁書目録

 現在のライトノベルは魔法に主眼を置いている作品が多いため「剣劇チャンバラ」シーンが多いというだけで差別化要素になります。

 たとえば鎌池和馬氏『とある魔術の禁書目録』の主人公・上条当麻はレベル0の無能力者とされているのです。

 しかし相手がどんな能力を使ってきてもそれを無効化できる『幻想殺しイマジンブレイカー』を持っています。

 これによって、当麻はどんな超常的な能力者を相手にしても、説教垂れてぶん殴って解決してしまうのです。

 これは「どんな魔法も効かない主人公が難敵の魔術師を倒す」話の舞台を変更していますよね。




ソードアート・オンライン

 川原礫氏『ソードアート・オンライン』はギリシャ神話のミノス島に棲むミノタウロスを倒すために「ダンジョンを攻略して人々に安寧をもたらす」話の舞台を変えているのです。

 ダンジョンはダンジョンでも、VRMMORPG『ソードアート・オンライン』内の浮遊城アインクラッドを攻略していきます。

 主人公・キリト(桐ヶ谷和人)は出会いと別れ、ときに単身で攻略していくことで、多くの人物とつながりを持つのです。

 元々あることがきっかけで人間不信に陥って『ソードアート・オンライン』をベータ版からプレイしているので、攻略手順に詳しいですし、人の本質を見抜く眼力があります。

 ヒースクリフの正体を見抜いたことで、キリトは全プレイヤーの生存を賭けた一対一の「デュエル」に臨むことになるのです。

 ギリシャ神話の話をMMORPGに投影して、そこに「VR」のアイデアを取り入れたことで、『ソードアート・オンライン』は名作となりました。 

 しかも「剣劇チャンバラ」がメインのファンタジー小説ですから、人気が出ても不思議はありません。

 そもそも「ソードアート」という言葉自体が「剣技」「剣術」「剣芸」といった意味合いを持った語ですから、最初から「剣劇チャンバラ」がメインであることに疑う余地はありません。




荒野の七人と、ライオンキングと、アナと雪の女王

 映画のジョン・スタージェス氏監督『荒野の七人』は、黒澤明氏監督『七人の侍』を西部開拓期のメキシコを舞台にした作品です。

 元々『七人の侍』がアメリカで大絶賛されていたこともあり、『荒野の七人』はいくつもの続編が作られるほどの人気を博すことになりました。

 映画のディズニー『ライオンキング』はマンガの手塚治虫氏『ジャングル大帝』の話をそのままパクっていますが、当のディズニーは盗作を否定しているのです。

 映画のディズニー『アナと雪の女王』はアニメの車田正美氏『聖闘士星矢』のアスガルド編にそっくりだと話題になりましたね。


 この三作を見ると、日本の作品はハリウッド映画に流用されやすい傾向があるように思えます。

 日本とアメリカとでは人種が異なり文化も異なります。

 とくにアメリカは建国二百四十余年と歴史が浅く、日本は天皇家の家系がわかるだけでも千五百余年ほど歴史があるのです。

 そうなると世界四大文明が思い浮かぶと思うのですが、四大文明は必ず一度は滅びています。

 エジプト文明はローマ帝国に占領されましたし、黄河文明はモンゴルのチンギス・ハーンに屈しました。

 そう考えると日本の千五百余年の歴史というのは、世界的に見ても長期的な文化継承が行なわれてきたのです。

 アメリカ人に日本好きな人が多いのも、そういった歴史面が彼ら彼女らの目には魅力的に映るのかもしれません。


 そして現在はサブカルチャーの時代です。

 手塚治虫氏の尽力により、サブカルチャーにおいて日本は先進国となりました。

 大友克洋氏『AKIRA』や士郎正宗氏『攻殻機動隊』などは多くのアメリカ人監督が映画化したいと熱望し、先年スカーレット・ヨハンソン主演『GHOST IN THE SHELL』が世界公開されました。

 日本のサブカルチャーはアメリカ人の心を捕らえて離しません。

 これからも多くの作品がハリウッドで実写映画化されることでしょう。





最後に

 今回は「見た目を変える」ことについて述べてみました。

 ありふれた物語の舞台を移して設定をちょっとアレンジすれば、まったく新しい物語が作れるのです。

 簡単かつ有用なため、あらゆる作品に向いた発想法だと言えます。

「新しい物語」は必ず「どの作品ともまったく異なる完全オリジナルな世界」でなければならない理由はありません。

 そんな物語を作れるのなら、必ずひとかどの人物となれます。

 そういう作品を読んでみたいので、ぜひ小説を書いて「小説賞・新人賞」へ応募してくださいね。



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