434.深化篇:頭でわかっても体はついてこない
明日から引っ越しのためインターネットが使えなくなります。転居先でのインターネット開通は6月5日なので、そこまでにどれだけストックを溜められるかが勝負です。
今回は「頭と体はちぐはぐ」なことについてです。
先に知識がある場合、どうしても頭でっかちになります。
逆に何も考えずに書いていると、今度は体が不釣り合いに大きくなってしまうのです。『キャプテン翼』の大空翼のように。
ではどう折り合いをつけたらよいのでしょうか。
頭でわかっても体はついてこない
何冊も小説読本や小説の書き方の本を読んだのに、いっこうに小説がうまく書けない。
うまく書けたと思ったけどブックマークや評価が低い。
そういうことはよくあります。
ではどうすればよいのでしょうか。
頭でっかちなら見合った体を手に入れればよい
小説読本や小説の書き方の本をたくさん読んだのに、小説がうまくならない。
それは頭でっかちになって体とのバランスがとれていないからです。
対応策は三つあります。
一.頭を小さくする
二.体を大きくする
三.頭を小さくしつつ体を大きくする
この中でどれが最もすぐれていると思いますか。
まず一ですが、せっかく習得した技術を手放すことになります。
もし自分の体に見合うところまで頭を小さくしていったら、そこからまた技術を習得していかなければなりません。
つまりいったん手放した技術を再度習得していかなければならないのです。
非効率的ではないでしょうか。
では二を見る前に三を見てみましょう。
なぜ飛ばすかと言われれば二が正解だからです。
三の頭を小さくしつつ体を大きくする方法は最も早く調和がとれる方法になります。
つまり高等テクニックはいったん手放し、何作でも書き慣れるまで書いて中級くらいまでのテクニックを体に憶え込ませるのです。
こうなれば中級の書き手にはなります。
しかし上級の書き手を目指すときに高等テクニックを再度習得しなければなりません。
それに体を合わせるようにするにはさらなる修練が必要となります。
だから中級になれるのは最速ですが、一流になれるのは少し後れるのです。
正解の二を見てみましょう。
まず高等テクニックを含めたありとあらゆる知識を憶え込みます。
次に何作でも書き慣れていって初級テクニックから順に習得していくのです。
しかも上級テクニックの知識もありますから、ただの初級者よりも上の力が出せます。
その要領で中級テクニックを書き慣れていけば中級の中では頭一つ抜きん出る存在になれるのです。
そして上級テクニックも知識はすでにありますから、あとはその上級テクニックを用いて何作も書き慣れていけば、上級テクニックが最短で身につきます。
つまり「小説を書くのに役立つ知識」は貪欲に吸収し、その知識を技術のレベルで体に憶え込ませていくことが必要なのです。
あなたなりの小説の書き方を身につける
あなたが今お読みになっている「小説の書き方」コラムは、そのような「知識」や「技術」の位置取りを目指して書いています。
「知識」や「技術」を手に入れて、それを活かせるように小説を実作していくのです。
それがあなたなりの小説の書き方が身につく最善策となります。
「手本」を五回でも十回でも読み返す方法では、「手本」の書き手の「技術」を手に入れて、その書き手なりの小説の書き方が身につくわけです。
ただそれだけだと「あの書き手の劣化コピーだな」程度で終わってしまいます。
そのレベルにまで達したのなら、そこからあなたなりの小説の書き方を模索すべきです。
頭でわかったことを体で習慣化させるのが難しい。
ですがあなたには「あの書き手の小説の書き方」が身についています。
あとは「あなたなりの小説の書き方」を模索するだけです。
それには多くの「小説読本」「小説の書き方」の「知識」を憶える必要があります。
「知識」がなければ試行錯誤する術がないからです。
だから「知識」や「技術」は貪欲に追い求めてください。
それがあなたの将来への糧となります。
百回言っても伝わらないときがある
本「小説の書き方」コラムは、書き手の皆様にさまざまな「知識」や「技術」をお示しするために存在しています。
もちろん私も含めてです。
ですが百回言ってもこちらの真意が伝わらないことがあります。
それは「知識」や「技術」を受け取る側には、「自分が聞きたいことしか聞かない」人が存外多いからです。
つまり「興味のあることしか聞きたくない」書き手の方が多い。
これは『ピクシブ文芸』の基本システムである『pixiv小説』の閲覧数とブックマーク数といいね数を見ているとよくわかります。
あるお題のときはブックマーク数が多くて、あるお題のときはいいね数が多い。
でもあるお題のときは閲覧数自体が少ない、ということが執筆者である私にはすぐわかります。
あなたは「小説を書く」という「ゴルフ」をしているとします。
第一章は一番ホールですね。その日最初のティーショットで会心の飛距離を決めて気持ちよくラウンドを周りたい。
そう思っていますが、必ずフェアウェイにボールが載るとは限りません。ラフに入ったり林の中に飛び込んだりするのです。
それが「興味」だといえます。
「フェアウェイ」をキープしたいという気持ちが強くて、ラフや林のことをできるだけ意識したくない。
するとかえってラフや林が気になるもので、そこに打ち込んでしまうリスクが増大してしまうのです。
ホールが異なればバンカーに池、そしてOBゾーンがあります。
普通に打てば避けられるはずなのに、変に意識してしまってバンカーに打ち込んでしまう、池ポチャしてしまう、OBになってしまう。
小説だって同じです。
避けられるはずなのに手痛いミスを犯してしまいます。
「こうすればもっと良くなる」という「知識」や「技術」や忠告があるにもかかわらず、それより自分の書きたいように書いてしまうのです。
「聞いていて耳が痛い」ことは「聞かない」というのが人間の本質なのかもしれません。
ですが成長するためには「聞いていて耳が痛い」ことほど役に立つものはないのです。
「ここに池があるよ」と周りが言っているのに、池を意識しすぎるあまり池に打ち込んでしまう。
そんなこともありますが「聞かないで失敗する」よりもはるかにましです。
池を意識しすぎるのなら、池の存在をしっかりと認識しましょう。
そのうえで「普通に書けば池には落ちないんだから」いつもどおりに書けるかどうか。
意識するのはそれだけでじゅうぶんです。
最後に
今回は「頭でわかっても体はついてこない」ことについて述べてみました。
皆様はここまで本コラムをひとつ逃さず読んでこられたでしょうか。
430を超える本数にすくんで気になるコラムだけを読まれたのかもしれませんね。
いずれにしても、皆様はなにがしかの「知識」や「技術」を手に入れたことになります。
その「知識」や「技術」をあなたの体にフィットさせるために、本数を書いてください。
書けば書くほど「知識」や「技術」が肌に馴染んできて、あなたなりの書き方へと昇華していきます。
皆様も新たな「知識」や「技術」を手に入れたら、必ず短編やショートショートでかまいませんので何本か書きましょう。
そうすれば必ずあなたの血肉になりますよ。
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