432.深化篇:それって本当にスランプ?

 今回は「スランプ」についてです。

 皆様もよく「今スランプなんだよなぁ」と仰っているのではないでしょうか。

 でもそれ、本当に「スランプ」ですか?

 引越し準備もあと一週間となりました。転居の際にコラムが途切れないようにしたいのですが、なかなかうまくストックが増やせないんですよね。

 なんとかしてストックを増やしたいところです。





それって本当にスランプ?


 小説を書きたいのだが、どうしても書く気が湧いてこない。

 PCに向かっているのだけど、一文すら浮かんでこない。

 ストーリーを練っているときに、どんなエピソードや出来事を起こせばいいのかわからない。

 これらの原因を「スランプ」だと思っていませんか。




それはスランプではない

「スランプ」という言葉は「いつも成績がよいのに最近調子が落ちてきた」ときに用います。

 一作も書かずに「今スランプなんだよな」と思うのは甚だ筋違いです。

 小説投稿サイトへ載せたのにブックマークも評価も伸びてこないから「今スランプなんだよな」と思うのも違います。

 ともに実力もないのに、うまく書けない原因を「スランプ」に押しつけているだけなのです。


 今ならアメリカのメジャーリーグ・ベースボール(MLB)で活躍する「二刀流(two way player)」の大谷翔平選手を例とします。

 四月五月の好調を、六月七月に崩したら、「今スランプなんだよな」と言えます。

 大谷選手は四月五月できちんと実績を残していますからね。

 もちろんMLBの他球団は大谷選手を徹底的に研究してくるでしょう。

 そのせいで調子を落とすことはあります。

 たとえば本日日本時間2018年5月31日に勝ち投手の権利を持ってマウンドを降りたのに、後続の投手が点を取られて勝ち星が付かなかった。

 そういう状態が続くと「負のスパイラル」に陥って「スランプ」に入ることも考えられます。


 あなたは小説において、小説投稿サイトで人気が出た作品を持っているとします。

 小説投稿サイトで企画され開催されている「小説賞・新人賞」で一次選考を通過した実績がある方。

 それであれば「書く気が湧いてこない」「一文すら浮かんでこない」「どんなエピソードや出来事を起こせばいいのかわからない」というのは「スランプ」と言えるでしょう。

 実績のない人の言う「スランプ」ほど言い訳がましいことはありません。




文豪だって壁にぶつかった

「スランプ」だろうと「スランプ」でなかろうと、「書けなくなる」という壁にぶつからない人はいません。

「文豪」だって皆、壁にぶつかってきたのです。

 そのとき「文豪」はどうしていたのか。

 旅籠はたごやホテルなどに「缶詰め」になって自分を追い込み、続きを書いていた人が多かったようです。

 住む場所を変えて日常生活のレベルから根本的に変えた「文豪」もいました。

 近くに山と海が控える鎌倉に住む「文豪」も多かったのです。

 夏目漱石氏、芥川龍之介氏、横溝正史氏、川端康成氏、中原中也氏、小林秀雄氏など錚々たる「文豪」が鎌倉に居を構えました。

「文豪」から壁を突破する術を学ぶとすれば「書く環境を変えてみる」ことです。


「文豪」が引っ越したからといって、現代の書き手が「スランプ」に陥るたび引っ越していたのでは、引っ越し費用だけで原稿料なんて吹っ飛んでしまいます。

 せいぜい「缶詰め」程度にしておくべきでしょう。

 ですが追い込みをかけたいだけなら、図書館やコーヒー屋などで執筆するのも、気分が変わってよいと思います。

 自宅の自室に籠もってPCへ入力しているだけでは、どうしても習慣化・慢性化してしまう。

 今はApple MacBookやTOSHIBA Dynabookなどのノートパソコンでも小説が執筆できる時代です。

 ノートパソコンだと大仰だと思われる方は、Apple iPadやMicrosoft Surfaceなどのタブレット端末でもよいでしょう。

 それを持って自宅から外へ飛び出すのです。

 小説を考えて入力する場所を変えるだけで、今までがウソのようにスラスラと書けることに気づくでしょう。




書けないのならあらすじを練る

 場所を変えたけどうまくアイデアが出てこない。

 これもよくあることです。

 その場合は、小説作りの鉄則である「企画書」「あらすじ」「箱書き」「プロット」を改めて見直してください。

「この『あらすじ』だと展開が急すぎるから、ここでちょっと歩を緩めるエピソードを入れてみよう」とか「この『あらすじ』だと亀のようにゆっくりと進みすぎるから、このエピソードは削除しよう」とか。

「あらすじ」で「エピソード」を出し入れしてみましょう。

 するとすんなりと淀みなくストーリーが進むようになり、執筆のスピードも上がるようになります。

 中でも良い「プロット」を書くための「エピソード」は珠玉です。

 どんな「エピソード」を入れると流れが良くなるのか。

 ジャンルや作品ごとに異なります。

「テンプレート」に従って執筆している場合は「テンプレート」を守ればいい。

 それでも書き詰まってしまうようなら、「独自(オリジナル)」の「エピソード」を差し入れてみてください。

「テンプレート」で詰まる人はそれだけで苦境を突破できるはずです。

「オリジナリティー」を重視している人は、あえて「テンプレート」な「エピソード」を混ぜてみましょう。

 完全な「オリジナリティー」を追求するあまり、書けなくなってしまうのでは本末転倒です。

 ちょっとした息抜きとして「テンプレート」な「エピソード」を入れるのも、連載小説では必須のテクニックになります。




長編小説なら後回しにする

 小説投稿サイトで企画されている「小説賞・新人賞」を狙っている場合、まず長編小説を指定された分量で書く必要があります。

 それに見合う「企画書」を書き、必要となる「エピソード」を並べて「あらすじ」を作るのです。

 この「あらすじ」をしっかりと作り込めば、続く「箱書き」「プロット」はすらすらと書けるようになります。

 どうしても「あらすじ」をうまくつなげられないようなら、いったんそこを後回しにして、前後の「エピソード」を先に決めて執筆していきましょう。

 そうすれば「飛ばしたエピソード」をどのようなものにすれば前後の「エピソード」とつながるのかがわかるようになってきます。

 書けるところから書いていく。

 まるでパズルの「数独」のようですね。




連載小説なら手を動かし続ける

 連載小説ではこの手は使えません。

 途中で「エピソード」を飛ばすことができないからです。

 どうしても「決められていないエピソード」が間近に迫ってきます。

 どうすればいいのか。

 がむしゃらに、とにかく手を動かしてみてください。

「こんな『エピソード』はどうかな」「あの作品のあの『エピソード』からインスピレーションを得られないかな(丸々パクってはなりません)」「定番の展開はこうだけど、いっそ正反対のこんな『エピソード』はどうかな」と連載期限ギリギリまで粘ってみましょう。

 そうすればいつか「決められていないエピソード」を埋められるときがやってきます。

 そのための「アイデア出し」の方法は後日『発想篇』として投稿する予定です。





最後に

 今回は「それって本当にスランプ?」について述べてみました。

 実績を残しているから、書けなくなったときに「スランプ」となるのです。

 実績もないのに、書けないから「スランプだ」と言うのはお門違いもいいところ。

 どうしても書けないようなら、「執筆場所を変える」「あらすじを見直す」「後回しにする」「とにかくさまざまな『エピソード』を当てはめてみる」ことをやってみましょう。

 いずれ書けるようになりますよ。

 私もとにかくひたすら本コラムのネタを考えており、なんとか432本目まで連載を続けることができたのです。

 手を尽くせば、やってやれないことなどありません。



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