358.孫子篇:二.作戦篇

 今回は『孫子』第二篇です。

「負けない戦い」を標榜する孫武は、再三にわたって「テンプレート」を重視しています。

「テンプレート」にエピソードを載せる形にすれば「負けが少ない」ことを見抜いていたのですね。





孫子篇:二.作戦篇


 今回は「リソース」と「テンプレート」についてお話し致します。

『孫子』という中国古典の兵法書で「テンプレート」を強調している点は、なかなか興味深いですね。

『孫子』という書物は過去の戦いを分析して、いかにして勝ったのか負けたのかを明らかにしたところに価値があります。

 小説投稿サイトであれば「テンプレート」の活用が勝利への近道なのです。




執筆はリソースを消費する

 連載を執筆するには時間・資金・体力・健康・食糧・電気・パソコン・インターネット回線などさまざまな「リソース」を消費します。

 これらがまかなえてこそ、連載を執筆できるのです。


 連載はたとえ人気を博していたとしても、ダラダラと結末エンディングを決めずに書いてはなりません。

 長引いてしまうと書き手は「エピソード」のストックが尽きますし、読み手もダレてきて惰性で読むだけになるからです。

 そうなると評価は急落します。

 知識の及ばない書き手が、読み手の得意分野に挑戦すると、書き手の筆力だけでは足りなくなるのです。

 だからとしゃにむに挑戦し続けても、ムダに「リソース」を費すだけ。

 そうなると苦労の割に報われず、他の書き手に漁夫の利をさらわれてしまいます。

 たとえ「文豪」であろうとも成功するはずがないのです。


 だから連載においては反響が思わしくなくて早々に打ち切ることでかえって後味を良くすることはあっても、長引かせて後味を悪くすることは避けるべきなのです。

 ムダに連載が長引いて書き手に利益があったことなど、古よりあったためしがありません。




連載はエピソードとの駆け引き

 連載をうまくやる書き手は同じような「エピソード」を何度も書きません。

「リソース」はこちらで用意する必要があります。

 それとは別に、読み手の興味を惹く「エピソード」を調べ上げるべきです。

(ランキング上位に入っている書き手がどのような「テンプレート」の上にどのような「エピソード」を展開しているのかを調べます。ランキング上位を入っているということは、現状「勝っている」小説です。そこから「エピソード」を「換骨奪胎かんこつだったい」してこちらの小説に持ち込みます)。

 だから「エピソード」が尽きて書けなくなるということがありません。

 書き手が執筆を続けるごとにどん詰まりに追い込まれるのは、書き手だけで「エピソード」を思いつこうと足掻くからです。

 こうして書き手がどん詰まりで「エピソード」が枯渇すると、発想が貧困になってしまいます。

 結果として成果が上がらない割りに、「リソース」の大半を失ってしまうのです。




テンプレートを活用する

 だから著名な書き手ほど、読み手や他の書き手から物語の構造の着想インスピレーションを得て、自らの作品の構造として活用します。

 つまり「テンプレート」を活用するのです。


 読み手から評価を得たいと思う気持ちもわからないではありません。

 しかし「換骨奪胎かんこつだったい」で「エピソード」のヒントを得たり「テンプレート」を活用したりするのは、書き手の利益を考えてのことなのです。

 最初は自らの発想力で設定を考えますが、その反響を踏まえて読み手から「エピソード」のヒントを得たり「テンプレート」を活用することがたいせつになります。

 これが読み手を獲得してますます読み手を惹きつけるコツなのです。


 以上のように、投稿するのは必ず評価を得ることが第一ではありますが、そのためにダラダラと執筆してはなりません。

 こうした投稿のあり方をよく知っている書き手は、書き手生命を左右する要素を最も知っている人物だと言えます。




―――――――――――――




 好評な連載だからとダラダラ続けていませんか。

 いつまでも終わりが見えてこない小説は、いつか読み手に見限られます。

 終わるべきポイントをしっかりと見据えて、たとえ反響が高まっているときでも、「結末」できっちりと連載を終了するべきなのです。


 書き手は小説に「エピソード」をいくつ組み込めるかが腕の見せどころと言えます。

 しかし書き手ひとりで考えても「エピソード」の泉があふれるように湧いてくることなどまずないのです。

 書き手ひとりだけでは早晩枯渇します。

 では「エピソード」が思い浮かばない書き手は連載をしてはならないのでしょうか。

 そんなことはありません。

 その小説投稿サイトで流行っている「テンプレート」を活用するのです。

 そうすれば過去に成功した作品の流れ「テンプレート」とその上で繰り広げられる「エピソード」を手に入れられます。

 「テンプレート」を「悪」と断定する書き手も多いのです。

 しかし有史以来おそらく億単位の物語が生み出されてきたはずです。

 億単位の物語すべてを記憶している人など誰もいません。

 つまりあなたが「これは誰も書いたことのない流れとエピソードだ」と思っている作品も、以前誰かが書いていた可能性を否定できないのです。

 であれば「テンプレート」は有効活用したほうがいい。

 書き手の負担も減りますし、読み手も安心して読めます。

 ウィリアム・シェイクスピアが遺した作品群も「シェイクスピアの書いた物語だから」価値があるのです。

 しかしそれぞれの物語を分析していけば、世界各地の神話や民話などに端を発した作品も数多くあります。

 つまり「シェイクスピア」も「テンプレート」を使用していたのです。

 もちろんオリジナルもありますが、たいていは「テンプレート」を用いています。

 創作において「テンプレート」は「悪」ではないのです。

 オリジナリティーはあるに越したことはありませんが、読み手がすんなり読んでくれることはまずありません。

「テンプレート」を使っているからこそ、「このテンプレートの新作が読みたいな」と感じている読み手をあなたの作品に惹き込めるのです。





最後に

「作戦篇」は「リソース」と「テンプレート」について述べられていました。

 冒頭に書きましたが、『孫子』は過去の戦いを分析してなぜ勝ったのか、なぜ負けたのかを徹底的に分析した結果をまとめて書かれているのです。

 小説投稿サイトでも「なぜ勝ったのか」を分析していくと「テンプレート」に行き着きます。

 もちろん「テンプレート」を用いずに作品が書けるのであればかまわないのです。

 でも「産みの苦しみ」の割りに反響は少ないでしょう。

 読み手も「テンプレート」を活かした小説が読みたいから、小説投稿サイトで作品を読んでいます。とくに『小説家になろう』では。

 もし「テンプレート」でないオリジナリティーあふれる小説が読みたければ、「紙の書籍」を購入しているはずです。

 また「テンプレート」で人気を博して商業デビューした後、二作品目で「オリジナリティー」で勝負したほうが読み手を楽しませられますし、書き手もラクができます。

 とくに「小説を書く」ことを職業にしたいのなら、まずは「テンプレート」を用いて「ネームバリュー」を高めることに注力してください。

「テンプレート」小説を書き慣れてきたら「オリジナル」小説を書きましょう。

 川原礫氏も『ソードアート・オンライン』をブログで公開しながら、『アルファポリス』でのちに『アクセル・ワールド』と名付けられる小説を書いていたのです。

 皆様も連載を二本抱えられます。

 たとえば平日は五日連続で「テンプレート」小説を、土日は「オリジナル」小説を書くなどと執筆する日を分けておけばいいのです。



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