孫子篇〜孫武の知恵をお借りして

357.孫子篇:一.計篇

 今回から十三回にわたり、現存する最古にして最高の兵法書である孫武氏『孫子』から得た兵法風小説投稿サイト攻略法を取り上げていきます。

 初回は「篇一 計」です。

 孫武氏はまず、皆様にどのような要素がウケるのか、その概要について述べています。

 なお二千五百年以上前に書かれた中国古典からヒントを得ましたが、二次創作ガイドラインにかからないよう配慮してあります。一般的に流通している原典とは異なり十五年ほど前に自力で中国語原典を訳したものを用いています。





孫子篇:一.計篇


 世界最古にして最高の兵法書『孫子』は小説を書くうえでも指南書たりえるのか。

 長年の兵法書耽溺から導き出した『孫子』流「小説の書き方」です。

『孫子』十三篇を順にたどります。




投稿は書き手生命を左右する

 小説を投稿するのは書き手生命を左右するだけに、よくよく考えなければなりません。




読まれるための五つの条件

 小説は感情だけで突っ走って書いて投稿してはなりません。

 読み手の存在を認識して、冷静にどの小説投稿サイトに投稿するのかを考えてください。

 読み手に「読まれる」小説の条件は五つあります。

【道】そもそもその小説投稿サイトで需要のある分野の小説か

【天】一回にどれだけの分量を読めるのか

【地】小説投稿サイトで流行っている「テンプレート」にどれだけ沿っているか

【将】語り口が小説投稿サイトやジャンルに応じて使い分けられているか

【法】文法に誤りはないか

 とくに【将】は語り口に知識があること(智)、

 内容が信頼できること(信)、

 読みやすいようにルビを振ったり漢字をひらいたり適度に改行したりと配慮がある(仁)こと、

 おぼろげなイメージを断言して書ける勇敢さがあること(勇)、

 権威ネームバリューがあって威厳があること(厳)が求められます。


 上記五つの点をきちんと理解したうえで、七つの評価で具体的に勘案するのです。

 一.需要のある分野または読み手を惹き込む魅力的な作品であるか

 二.語り口は読み手に受け入れられる範囲内か

 三.いつ読んで、全体でどれほどの分量があるか

 四.読み手の許容範囲の文法を用いているか

 五.ページが適度に淡いか

 六.ウケる内容か

 七.文法や誤字脱字などの誤りはないか

 この七つを具体的な評価に用いるのである。


 もし五つの点と七つの評価が満たされているのであれば、あなたの小説は読まれます。

 しかし満たされていなければ、読まれないことが確実なので投稿しても無意味です。

 満たされていれば、あとは読み手を惹きつける書き方をすることが求められます。

 読み手を惹きつけるには臨機応変な書き方をするべきです。




読み手の予想を裏切る

 小説とは、読み手の予想を裏切るところに真価があります。


 主人公に困難を乗り越えるだけの実力があっても、読み手には能力がないように見せかけなければなりません。

 そのためには出来事が起こる前に、ほんの少しの「伏線」を張っておきましょう。

 主人公が「結末」まであとわずか、と思うところに乗り越えるのが困難な「佳境クライマックス」を配置し、「結末エンディング」には遠いように見せかけて唐突に「結末エンディング」へたどり着くなど構成に配慮する。

 満足感が欲しい読み手には「あらすじ」「キャプション」で「佳境クライマックス」をちらつかせて気を惹きつける。

 主人公の置かれている状況シチュエーションに戸惑っているなら、一気に畳みかけて納得させる。

 腰を据えて読みたい場面シーンでは、丁寧な筆致を心がける。

 読み手がこの作品の分野に詳しいのなら、フィクションを盾にして争おうとしない。

 前のめりで読み込んでいるのなら、さらに展開を盛り上げる。

 浅くしかのめり込んでいないのなら、ウケる(燃える・萌える)要素を混ぜて深くのめり込ませる。

 リラックスしながら読んでいるようなら、適度に緊張感をみなぎらせる。

 周囲に迎合して批評を下すようなら、特定の人にとって魅力的な作品にして少しずつコアな読み手に分断して、ピンポイントに支持を得ていく。


 こうして読み手の不意をつくのが「文豪」の勝利の法則なのです。

 状況に応じて行なうべきことなので、事前に策を授けることはできません。




投稿する前に冷静に勝敗を予測する

 投稿する前に作品と読み手の需給バランスを比較して勝敗を判断します。

 冷静に比較した結果、勝ち目が多いのならウケる可能性が高くなるのです。

 冷静に比較した結果、まったく勝ち目がないのでは話になりません。

 書き手がこのように冷静に判断することで、事前に勝敗を見極められるのです。




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 小説投稿サイトにはさまざまなところがありますが、それぞれに想定される読み手層がはっきりとしています。


 『小説家になろう』であれば「男性向け異世界ファンタジー小説」が最も読み手層が多い。

 もちろん分母が百二十万アカウント超と途方もなく大きいので、他ジャンルにも相当の読み手が存在するのです。

 だから『小説家になろう』なら、どのジャンルでもじゅうぶんに勝負ができます。

「女性向け異世界恋愛小説」にも相当な読み手が存在するため、恋愛要素を組み込んだ「ハイファンタジー」小説を「異世界恋愛」小説として投稿することも考えておきましょう。


『カクヨム』はファンタジーが強く、異世界ファンタジーと現代ファンタジーのどちらもよく読まれています。どちらかと言えば異世界ファンタジーのほうが強いです。これは『小説家になろう』から流れてくる移民が多いからです。

 俗に言う「なろう系」「なろう小説」がランキングの上位に多くあります。その中から「紙の書籍」化された作品も多いのです。しかし「カクヨムオンリー」の小説のほうが支持率は高めになっています。


『ピクシブ文芸』は「女性向け恋愛小説」が最もウケるジャンルです。

 でも現在は分母がとても小さいので、なかなか読み手がついてくれません。

 閲覧数も少ないし、いいねやブックマークが付くことも稀です。

 だから自己承認欲求(たびたびですが心理学用語では単に「承認欲求」と書きますが、わかりやすいようにあえて「自己」を付して書いています)の強い方は、現時点では『ピクシブ文芸』を選ぶべきではないのかもしれません

 それでも『ピクシブ文芸』において「ファンタジー小説」で勝負をかけたいというのは、相当なバクチになります。

 よほどタフな精神力をお持ちでなければ「こんな小説を書いたのにまったくウケなかった」と落ち込むこと必至です。


『エブリスタ』も「女性向け恋愛小説」に強い小説投稿サイトですが、老舗であり現在の分母は『ピクシブ文芸』よりも圧倒的に大きいのです。

 だから「女性向け恋愛小説」は『エブリスタ』を投稿先の第一候補にしましょう。


 分母が小さくては、いくら苦労して小説を書きあげて投稿したとしてもブックマークも評価も付きませんし、感想やコメントも付きません。

 かなりの徒労感を味わって「自分には才能がないのだ」と思い込んでしまいます。

 でも本当にあなたには「才能がない」のでしょうか。

 勝負する場所つまり投稿する場所を間違えていませんか。

 あなたの書きたいジャンルの小説はなんでしょうか。

 そのジャンルを読んでくれる人がたくさんいる小説投稿サイトへ投稿してください。

 ご自身の才能は適切な小説投稿サイトに投稿してから判断しましょう。





最後に

 今回から十三回にわたり、兵法書『孫子』を小説書きに応用することを目的にした短篇「孫子篇」を提示していきます。

 兵法の研究をしていて、その知識を小説に役立てられないかと先日閃きました。

『孫子』はさまざまな競争に勝ち残る術を教えてくれます。

 皆様にもその叡智をお裾分けできれば幸いです。



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