216.再考篇:小説を書く時間帯

 今回は「小説は朝に書こう」というご提案です。

 小説は物事を想像する脳力が必要なので、朝のほうがスムースに書けるんですよ。

 夜は推敲と投稿だけにすれば一日を有効に活用できます。

 今回も樺沢紫苑氏『神・時間術』を参考にしています。他の書籍同様『神・時間術』は記憶について述べていますが、本作は「創作」で使える時間に絞って書いています。興味がありましたらぜひ原著をご購入くださいませ。





小説を書く時間帯


 小説は脳内に情景をイメージして、それを文章に落とし込んで形にしていきます。

 ですが「いざ書こう」としたとき、PCのキーボードやスマートフォンなどでスラスラと文章が書けるものでしょうか。

 これがなかなか難しいのです。なぜか。それは「集中力が発揮できない状態」にあるからです。




小説を書くには集中力が必要

 まず皆様に認識していただきたいのは「小説を書くには集中力が必要」だということです。

「脳内に情景をイメージする」という行為はかなりの集中力を要します。

 そして浮かんだイメージを「文章に落とし込んでいく」作業も右脳と左脳の連携が鍵を握るのです。

 だから脳が疲れている状態では、いくら小説を書こうとしてもスラスラと書けません。

 それがわかっていれば「脳が疲れていないときに小説を書けばいいんだ」と気づくはずです。




小説は朝に書く

 意外な言葉が出てきました。「小説は朝に書く」とはどういうことでしょうか。

 まず睡眠から目覚めたとき、脳の疲れがとれています。日中は仕事や部活、家事や作業をしているため、夜は脳が疲れきっているのです。それでも夜に脳を働かせる手段はあります。それは少し先を読めばわかるはずです。

 脳が疲れていないときは集中力が弥増いやまします。脳が疲れているときは集中力が湧いてこないのです。

 そして「小説を書くには集中力が必要」ですから、脳が疲れていない朝に小説を書くのが最も効率がよくなります。

 だからといって起きたらすぐにPCに向かっても三十分ほどはまったく浮かんできません。

 脳の疲れはとれているのですが、まだ寝ぼけていて思考力が鈍い状態だからです。

 だから起き抜け三十分は布団を畳み、熱めのシャワーを浴びて着替えをし、食事を済ませておきましょう。

 とくに熱めのシャワーは重要です。寝ぼけていた頭が一気にシャキッとします。

 寝ているときは胃腸にある栄養分が体内に吸収されて新陳代謝によって細胞が生まれ変わっています。

 よって起き抜けはガス欠状態です。ですので布団を畳み、シャワーを浴びて着替えをすることで体を動かして胃腸の動きを活性化させていきます。そうしてから食事をすると効率よく栄養分を消化吸収できるのです。食べるときはできるだけよく噛むようにしましょう。噛む刺激は脳を活性化させてくれます。スローフードは胃腸だけでなく脳にもいいことなのです。

 朝食をとり終わってから二〜三時間ほどが最も集中力の高まっている時間帯になります。

 その時間帯に小説を書けば「脳内に情景をイメージ」しやすく、それを「文章に落とし込む」作業もスムースに進むのです。

 結果として、夜に脳が疲れた状態で小説を書くよりも格段にスラスラと文章を書けます。

 よって通勤や通学のために家を離れる二〜三時間前には起きて、食事をしてから小説を書くべきなのです。それだけで格段に書けるようになります。

 ですから朝家にいる間はテレビ番組やTwitter・Instagram・LINEなどのSNSやニュースサイトをチェックするのではなく、小説を書くべきなのです。

 スマートフォンをお持ちなら通勤先や通学先でSNSなどのチェックをしてください。それだけで仕事仲間や級友などとの話題に乗り遅れることはないでしょう。

 自動車や自転車で通勤や通学をしているのでしたら、職場や学校へ早めに到着してチェックすればいいだけの話です。オフピーク通勤・通学にもなりますからゆとりをもって仕事や授業に励むことができます。

 また通勤時間・通学時間が迫ってくると人は必ず「焦り」が生じるのです。この「焦り」はきわめて高い集中力を引き出します。

「あと十分以内に完成させないと」と自分を追い込むこと。たったそれだけできわめて集中力の高い状態で執筆することができます。ただし「なんとかして書きあげなきゃ」という思考には陥らないでください。「描写不足」の文章になってしまう可能性があります。




脳が疲れを感じる前に休憩する

 キーパンチャーをやっていた頃に感じたことがあります。打ち込みを最初から最後まで目いっぱいの時間をかけて続けるよりも、適度に休憩を挟んで少し歩いてきたりストレッチをしたりして脳をリラックスさせながら打ち込んだほうが入力できる書類の数が多くなるのです。

 脳をリラックスさせれば疲れがとれて集中力が強まります。集中力が高ければ作業効率は格段にアップするのです。

 小説を書くときも、二〜三時間をぶっ続けで書くよりも、疲れを感じる前に休憩を挟んでいったほうが効率がよくなります。

 疲れを感じる前に休憩を入れるべきなのですが、その境目を感じ分けるのはなかなか難しい。

 毎朝小説を書く習慣が身につけば、だいたい何十分くらい疲れを感じずに書けるのかがわかってくるはずです。

 一般的に学校の授業時間が疲労を感じる時間帯だとされています。中学校・高校は一時限が五十分ですから、五十分で疲れを感じて集中力が途切れるわけです。

 小学校・中学高校・大学と進学するほど一時限の長さはどんどん長くなっていきます。それも年齢による集中力の差が反映されているのです。なので一時限のマイナス五分を目安に休むようにすれば、脳が疲れる前に休憩をとることができます。

 また一度途切れた集中力を取り戻すには十五分かかるとされているのです。

 時限の合間にある十分の休憩時間は、一時限五十分の末尾五分と合わせて十五分になるように設定されています。

 つまり授業のラスト五分ほどムダなものはないのです。このラスト五分で雑談をして生徒をリラックスさせられない教師は教育意識が足りないと言わざるをえません。

 実際ラスト五分で笑いを誘うような授業を受ける教科は試験結果もよくなるものです。

 授業が楽しくて点数も高くなる。その教科を好きにならないほうがおかしいでしょう。

 また高い集中力はどんな頑張っても十五分しか保てないそうです。

 ここぞというシーンを書いているときに高い集中力を発揮して一息に書きあげる。

 書き終えたらリラックスして脳の疲れをとるのです。

 そうすればひじょうにレベルの高い説明や描写が可能になります。


 つまり五十分マイナス五分の正味四十五分を、高い集中力を維持する十五分が三セットあると考えるのです。

 もちろん十五分を休みなく三セットこなしても高い集中力は維持できません。

 高い集中力は十五分しかもたないのですから。一セット十五分のうち三分はリラックスタイムに当てて息抜きと脳の疲れをとることに使うべき。体を動かしたりお茶を飲んだりして心底ホッとする時間を作ってあげましょう。




集中を途切れさせる雑念

 集中力を持続させられるのは四十五分、高い集中力は十五分しかもちません。そして一度集中力が途切れると取り戻すのに十五分かかります。

 他にも小説を執筆している最中に集中力を途切れさせてしまうものがあります。それが「雑念」です。

「雑念」が頭の中に浮かぶと、それが気になって仕方なくなります。集中していられなくなるのです。

 そこで「雑念」が浮かんだらとりあえず付箋にでもメモすることをオススメします。

 紙に書いておけばその「雑念」をいつまでも憶えておく必要がなくなるのです。ということは頭の中から「雑念」がたちまち消えていきます。

 もし紙に書いてもまだ「雑念」が浮かんでしまうようでしたら、脳が疲れているサインです。ただちに作業をやめて日光を浴びたり運動をしたり何か飲食したりしましょう。




お昼休みは書くか仮眠

 お昼休みは気分転換のチャンスです。かるくストレッチしたり歩いたりして、できれば職場や教室から出て外で食事を済ませましょう。

 そのときできるだけ毎日別の飲食店で別のメニューをよく噛んで食べるのです。それだけで気分転換が効果的に行なえて脳がリフレッシュされます。

 そうなったら朝の続きを書いていきましょう。朝ほどではありませんが、かなりスラスラと文章が書けるはずです。

 もちろん仕事仲間や級友などとの談笑を楽しんでもかまいませんし、いっそ二、三十分昼寝してしまってもよいでしょう。そのほうがより気分転換できて脳の疲れが抜けやすくなります。午後の仕事や勉強がより捗ること間違いなしです。

 土曜日・日曜日ならお昼はお弁当持参でもいいので外食して、食べ終わったら歯を磨いて二、三十分の仮眠をとれば脳の疲れがとれて、朝起きたときに匹敵する集中力を得られます。

 また仕事では会議が必要になることがあります。

 そのときせっかく集中力の高い朝方に会議してしまうと作業効率を落とすことになるのです。

 会議は午後の仕事時間が始まってから一、二時間ほど経ったときを目安にしてみましょう。

 午後の疲れやすい時間帯を会議に費やすことで頭もリフレッシュされます。

 会議の後は終業時間までラストスパートをすればいいのです。




夜は書く前に運動する

 仕事や学校や塾から帰ってきて食事や入浴などを済ませてから小説を書こうとする人が多いと思います。

 ですが夜は脳が疲れきっていて「脳内に情景をイメージ」しづらいのです。

 そして夜に無理して集中力を費やすほど脳の疲労は激しくなっていきます。その状態で就寝しても、脳が冴えてしまいなかなか寝つけません。また起きたときに脳の疲れがまだ残っている状態になってしまいます。

 脳の疲れを振り払うにはいくつか手順があるのです。

 まず有酸素運動を1時間前後行なう必要があります。少し汗をかくと成長ホルモンが生まれて脳と体の疲れを取り除いてくれるのです。

 そして運動が終わったら熱めのシャワーを浴びましょう。シャワーから出てきた頃には頭がリフレッシュされています。

 その後に夕食をとるのです。この状態なら集中力がとても高まっているので、小説をスラスラと書けます。

 できれば夜は連載の続きを書くよりも推敲に当てたほうが効率がいいでしょう。朝勢いよく書いた文章には当然勢いがありますが、表現が適切なのかまで気を回す余裕はなかったと思います。だから夜は朝書いた文章を推敲に当てて表現をブラッシュアップしてください。

 しかし就寝時間の一時間前までには終わりましょう。

 寝つくギリギリまで執筆していると睡眠が浅くなってしまい、翌朝は脳の疲れが残った状態でスタートすることになります。就寝までの一時間の間はぬるめの湯船にゆっくりと浸かり、家族と団欒したりペットと遊んだり買っておいた小説を読んだり録画しておいたアニメを観たりして気楽に過ごしましょう。

 小説を書きたい方は小説を多く読むようにすれば有意義に息抜きできます。

 日中ひじょうに脳も体も使い込んできたわけですから、息抜きする時間も必要です。




六〜八時間睡眠を心がける

 小説家は睡眠にあまり時間をかけないようなイメージが皆様にはあると思います。

 しかし睡眠時間が短いと脳の疲れが完全に抜けず残ってしまって効率が悪くなるのです。

 実際には六〜八時間きっちりと眠ったほうが筆は進みます。

 ではいつ寝ていつ起きればよいのでしょうか。二十一時から五時までの八時間を目安にします。朝起きてから二時間の執筆タイムを確保するためには五時起きするのがベストです。そこから八時間遡れば二十一時には寝入っておきたい。六時間睡眠で行くのなら二十三時ですね。

 そして就寝一時間前までに推敲を終える必要がありますから推敲は二十時まで(六時間睡眠なら二十二時まで)です。

 仕事をされている方は十七時終業して十八時にまっすぐ帰宅します。この帰宅時にウォーキングをしていれば一時間の有酸素運動もクリアできますし、その後熱めのシャワーを浴びて夕食をとっても一時間以上の推敲時間を確保できるのです。

 寝床に入ったら今書いている小説の先々の展開をあれこれ妄想してみてください。

 その中で最も良さそうな展開を翌朝書くようにすれば、朝はその展開を頭の中でイメージして文章に落とし込むだけの簡単な作業になります。

 小説を連載するというのはそのくらい自分のために使える時間を小説に振り分ける覚悟が要るのです。無理な方は週間連載または土日連載にしておきましょう。

 朝二時間執筆、夜一時間推敲となれば合計一日三時間の執筆タイムが創出されます。これなら書ける分量は人によりますが日々の連載を書きあげることが可能なはずです。つまり土日にストックを作ることができます。

 投稿忘れさえしなければ毎日投稿が可能になるのです。読み手を待たせずに連載も無理なく続けていけます。





最後に

 今回は「小説を書く時間帯」について述べてみました。

 朝が最も執筆に向いた時間帯です。朝どうしても執筆時間が満足にとれない場合は、早く出発して空いている電車内でスマートフォンやタブレットやノートPCなどを使って執筆しましょう。わざわざ混んでいる電車内で書く必要などないのです。なにごともゆとりをもって当たることで満足した成果が残せます。

 私もこれからは朝に執筆して夜に推敲したいと思った次第です。



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