127.応用篇:詰め込みすぎない(補講)

 コラムNo.125「応用篇:詰め込みすぎない」にコメントが付きましたので補講致します。

 他の方もお気軽に遠慮せず「ここがわかりにくいので詳しく」などコメントを付けてくれると嬉しいです。

 二日以内に一本補講を書かせていただきます。





詰め込みすぎない(補講)


 今回はコメントがありましたので補講に致します。

「テーマに関しては滅多にないかもしれませんが、アイディアや作品の内容に関しては、タイムリーな事件や不祥事などで差し替える必要性がある際はどうすれば……と。それによって内容がすかすかになってしまう場合は、どのようにしてフォローをするべきか…。」

 現実において、心ない事件や不祥事が発生することがままあります。

 それによって小説の書き直しが必要になったときにどうすればよいのでしょうか。





注意書きをしておく

 そもそも犯罪を描いた小説を書く場合、まえがきやあとがきや「あらすじ」「キャプション」などで「この小説には犯罪行為の描写が含まれています。現実に行なえば法律により罰せられますので、絶対に行なわないでください。」のような注意書きをすることが、各小説投稿サイトの規約とガイドラインで明記されています。

 ですので、犯罪を題材やエピソードに選んだ場合は、必ず「規約やガイドラインに沿った注意書き」をしておきましょう。

 それがまず最低限必要なことです。

 それをしたうえで、以下は不祥事と事件についてどう取り扱うべきかを述べていきます。





不祥事がバッティングする場合

 「不祥事」については基本的に配慮する必要がありません。

 まず「不祥事」という言葉を『デジタル大辞泉』で調べてみると

 「関係者にとって不都合な事件、事柄」となっています。

 噛み砕いて言うと、

 「身内の人間が所属する組織や構成員に対して不利益を与える事件」が「不祥事」なのです。


 たとえば「警察官が公金を横領する」ネタはそもそも犯罪ですが警察内部から見れば「不祥事」です。

 「不祥事」をネタにして書いていて、現実に「警察官が公金を横領した」場合、責任はその警察官が全面的に負うべきものです。

 小説の書き手が「実際に『警察官が公金を横領して』しまったから差し替えるか」と考えなくてかまいません。


 「不祥事」のほとんどは内々で解決させようとします。

 それを暴くために『週刊文春』とか『FRIDAY』とかの週刊誌が盛んに「不祥事」を記事にしていますよね。


 タイムリーな「不祥事」というのは社会への警鐘であり、積極的に小説で活かすくらい「図太い神経」を持ったほうがよいでしょう。

 なので「不祥事」についてはそれほど神経質になる必要はないと思います。





タイムリーな事件を差し替える場合

 配慮が必要なのは「事件」のほうですね。

 たとえば「ある男が少女を誘拐して自宅に監禁し、自分好みの女性に育てようとする」という事件を思いついたとします。

 「プロット」まで細かく組んでいざ書き始めてみたところ自分が書こうとしていた「事件」が実際に起こってしまった、ということは実際にありうることです。


 上記の事件は現実に起こっています。

 このような場合は犯罪被害者のためにも「少女誘拐監禁育成」ネタは封印しなければなりません。

 そうなると緻密に組まれた「プロット」に大きな穴が生じてしまいます。

 ご指摘のとおり内容がすかすかになってしまうのです。


 そうなったらその事件の「エピソード」を丸々移植手術するしかありません。

 つまり「配慮が必要な事件」に関する文章をすべて削除して、まったく別の事件を物語に組み込むしかないのです。

 どのような「事件」が物語にふさわしいのかは書き手の裁量ですが、直近で発生していない「事件」を選ぶべきでしょう。

 たとえば直近で「七億円金塊強奪事件」が起きていますから、それをエピソードに入れるべきではないということです。

 直近の「事件」を扱うとピンポイントで「あの事件か」と読み手が連想してしまいます。

 なにがしかの不利益を被る可能性も否定できません。

 だから直近の「事件」は避けるべきです。


 直近で行なわれていない事件については、冒頭で述べた通り「規約やガイドラインに従った注意書き」をしていればとくに問題はありません。

 たとえば昭和43年に府中市で起こった「三億円事件」を題材にしても問題になることはないでしょう。



 すでに小説投稿サイトへ上げた後に同様の事件が発生してしまう場合もあるでしょう。

 その場合は当該「エピソード」は削除せずそのままにしてください。

 まえがき・あとがき・「あらすじ」「キャプション」などで「これは犯罪です」と明記してあれば、実際にそのような事件が起きたとしても直すに当たらないからです。


 これを直してしまうと、サー・アーサー・コナン・ドイルやアガサ・クリスティー、江戸川乱歩や横溝正史などの推理小説やミステリー小説は発表した作品に実際の事件で参考にされた事件が含まれていればそれをすべて返品回収しなければならなくなります。

 しかし現実として回収された事例は聞いたことがありません。

 それは「注意書き」をしてあるからです。





犯人の供述によって

 警察や検察に対して犯人が「この作品を読んで実行しようと思った」と供述して「犯罪を想起させてしまった」という噂が世間に流れてしまった。

 そんなこともあるでしょう。

 ですがきちんと「注意書き」をしてあれば、フィクションを現実にしてしまった犯人が悪いのであり、小説は悪くないと主張できます。


 もし「小説は悪くない」と主張できるほど自分は「神経が図太くない」と感じられたのなら、小説投稿サイトから当該「エピソード」を削除すればいいのです。


 ただし、推理小説やミステリー小説で当該「エピソード」を削除した結果、話の流れがおかしくなってしまうことがままあるでしょう。

 とくに連載小説の中に組み込まれたひとつの「エピソード」を消してしまうと本来想定した殺害方法が使えなくなり、結果最後の犯人当てのときに矛盾が生じてしまうのです。


 その場合は「削除するのではなく、内容を編集して、前後の話が繋がるような描写」に変更しておくべきでしょう。

 そうすれば話の筋は通りますし、事件に直接触れなくても済みます。





最後に

 今回は「詰め込みすぎない」の補講を行なわせていただきました。

 基本的に「規約やガイドラインに沿った注意書き」をしていれば、「不祥事」はまったく問題がありませんし、過去に投稿した「事件」についてもさほど差し障りありません。

 困るのはこれから発表しようと思っているエピソードを連想させるような「事件」が起こってしまったときと、犯人が供述してその小説が「ネタ元だ」と供述されたときくらいです。

 発表前の「エピソード」であればまったく別の事件に書き直すべきですし、投稿済みの「エピソード」が犯人から名指しされたらその「エピソード」を削除するか編集するかして話の筋が通るように改変すればよいでしょう。



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