122.応用篇:二次創作と二重投稿
今回は以前からコメントでご指摘のあった『ピクシブ文芸』への二次創作投稿について見解を述べてみました。
『pixiv小説』様『ピクシブ文芸』様を主体にしていますが、二重投稿に関しては『小説家になろう』様『カクヨム』様も同様だと思いますので掲載致しました。
二次創作と二重投稿
今回は昨日いただいたコメントについて述べてみます。
「ピクシブ文芸でも二次創作が一部で投稿されているという状況ではあったりしますが……pixiv小説とピクシブ文芸の違いが分かっていないという意味で。」
ご存知の通り『ピクシブ文芸』は二次創作の投稿が禁止されています。
それでも二次創作と思しき投稿が目につくことがあるのです。
これは「二次創作」がどういうものであるのかを理解していないからではないかと思います。
オリジナル(一次創作)と二次創作の混同です。
ついでなので二重投稿についても語ることに致しました。
pixiv小説における二次創作の制限
二次創作でもなんでもOKと思われがちな『pixiv小説』ですが、実は積極的にOKというわけではありません。これはイラストやマンガの『pixiv』も同様です。
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pixiv利用規約第13条「禁止行為」1項にて「当社もしくは第三者の著作権、意匠権等の知的財産権、その他の権利を侵害する行為、又は侵害する恐れのある行為。」
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という形で表記してあり、二次創作は「第三者の著作権、意匠権等の知的財産権、その他の権利」に抵触するおそれがあるのです。
著作権や意匠権などにかかわる法律の適用にはいくつか条件があります。
とくに気をつけていただきたいのが「第三者の創作物を勝手に利用して金品を得る」形での投稿は法律の発動要件であるという点です。
どんな作品であれ、基本的に二次創作は禁止されています。
『pixiv』でのイラストや『pixiv小説』での小説で二次創作をしていても訴えられないのは、著作権保持者が「宣伝につながる」ために見て見ぬふりをしているだけなのです。
また別途『pixiv』運営が著作権保持者と個別に二次創作の許諾を受けている場合もあるのかもしれません。
それでは現在2日目が開催されている同人誌即売会の「コミケ」こと「コミックマーケット」はどうなのか。と気になる方もいますよね。
著作権や意匠権などを提訴して争う場合「金品を得る」行為をしていなければ訴訟費用を考慮しても「とくにお咎めなし」とされるケースが多いそうです。
とくに大手サークルなどでがっぽり儲けようとしていないかぎりはグレーゾーンになります。
ただし大手サークルは著作権や意匠権などの保持者であることも多いため、そこを真似して「自分たちもやっていいんだ」と勘違いしないでください。
例外的に二次創作を許諾し推奨する作品もあります。
たとえば第二期の製作が発表された『けものフレンズ』は「二次創作に関するガイドライン」において「事業性の高い営利行為」「『けものフレンズプロジェクト』に帰属する素材の直接二次利用」「『けものフレンズ』のイメージを損なう、過剰に公序良俗に反する、社会的な許容限度を超えると判断される」等の場合を除き、原則二次創作が推奨されています。
ただし、ここまでオープンなガイドラインを持つ作品は少ないことを理解してください。
小説投稿サイト『カクヨム』は指定された作品の二次創作が投稿できます。
逆にいうと「指定されていない作品の二次創作は投稿することができません」し「指定されている作品の二次創作を他の小説投稿サイトへ投稿することができません」。
これを留意しておきましょう。
現時点で『カクヨム』だけで二次創作が投稿可能なライトノベルは14作品あります。
更伊俊介氏『犬とハサミは使いよう』、丸山くがね氏『オーバーロード』、庵田定夏氏『ココロコネクト』、暁なつめ氏『この素晴らしい世界に祝福を!』、丸戸史明氏『冴えない彼女の育てかた』、谷川流氏『涼宮ハルヒの憂鬱』、志瑞祐氏『精霊使いの剣舞』、ヤマグチノボル氏『ゼロの使い魔』、井上堅二氏『バカとテストと召喚獣』、賀東招二氏『フルメタル・パニック!』、竜ノ湖太郎氏『問題児たちが異世界から来るそうですよ?』、金沢有倖氏『闇の皇太子』、カルロ・ゼン氏『幼女戦記』、橙乃ままれ氏『ログ・ホライズン』です。
(2019年5月現在では、北沢慶氏/グループSNE『ソード・ワールド2.5』、株式会社スクウェア・エニックス『グリムノーツ』、鴨志田一氏『青春豚野郎』シリーズ、冲方丁氏『第2回冲方塾対象作品』、水野良原作&株式会社スクウェア・エニックス/株式会社KADOKAWA『アカシックリコード』、KADOKAWA/グループSNE『ドレッドノート』、桝田省治氏『勇者死す。』、キミラノ『キミラノ』、けものフレンズプロジェクト『けものフレンズ』、ザリガニワークス/KADOKAWA/ホルベイン画材『石膏ボーイズ』が追加で指定されています)。
これらの二次創作は原則『カクヨム』にしか投稿してはいけない規則になっています。決して『pixiv小説』で上記作品の二次創作は投稿しないようにしてください。
(コメントでご指摘があり、鴨志田一氏『青春豚野郎』シリーズは「コンテスト専用」とのことでした。他にも確認漏れがあるかもしれませんので、お気づきになった方はご遠慮なさらずコメントを送りつけてくださいませ)。
ピクシブ文芸は一次創作のためのサイト
『pixiv小説』は二次創作が流行っています。
イラスト投稿の『pixiv』が二次創作ばかりなので、『pixiv小説』も二次創作していいんだと思っている方が多いせいでしょう。
ですが『pixiv小説』から『ピクシブ文芸』に投稿する際、「二次創作」でも投稿できてしまいます。
おそらく「二次創作」という概念が薄い層によるものでしょう。
自分以外の人が作ったキャラクターや舞台設定や世界観や物語を自作に持ち込めば他がどんなにオリジナルであってもそれは「二次創作」扱いになります。
たとえば渡航氏『やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。』の比企谷八幡を自分のオリジナル小説に登場させれば、彼以外の存在がいかにオリジナルであっても「二次創作」扱いになるのです。
会話で触れるくらいならば問題ありませんが。
キャラクターを借りてくるのは「二次創作」だとすぐ判断できる方は多いのですが、世界観を借りてくるのが「二次創作」だと判断できる人はきわめて少なくなります。
たとえばアニメ『ラブライブ!』の音ノ木坂学院を舞台にして別の物語を作る。
一見問題なさそうですが、舞台設定を持ち込んでいるためこれは「二次創作」なのです。
そこまで厳密に言うなら「剣と魔法のファンタジー」はすべてJ.R.R.トールキン氏『指輪物語』の二次創作ではないのか、と考えられますよね。
でもご安心ください。
『指輪物語』はすでに古典であり、現在では誰もが使えるパブリック・ドメインとなっています。
「剣と魔法のファンタジー」はすべて「二次創作」というわけではないのです。
ただしパブリック・ドメインになっていない水野良氏『ロードス島戦記』や田中芳樹氏『アルスラーン戦記』の舞台設定やキャラクターなどを用いれば、それは完全な「二次創作」になります。
また古典として挙げた『指輪物語』ですが、劇場版の『ロード・オブ・ザ・リング』製作陣が著作権や意匠権を主張してくることもありえますので注意が必要です。
『ピクシブ文芸』はあくまでも「オリジナル小説」(一次創作)のためのサイトです。
他の作品からあれこれ借りてきた小説を投稿すべきではありません。
ですが「剣と魔法のファンタジー」にはエルフやドワーフといった妖精・亜人や、ゴブリンやドラゴンやデビルといった魔物・悪魔が付きものです。
「どうしてもそれらを使いたい」とお思いでしたら、バックボーンとなっている存在意義や定義からきちんと描写しておきましょう。
「ドラゴン」と一言で書くのではなく「翼を生やした巨大トカゲ」のような描写をしてから「ドラゴン」という単語を使えば、「ドラゴン」そのものは同じでも「二次創作」感が薄れてきます。
北欧神話のように「神々と戦った種族」として「ドラゴン」を定義することもあります。
そういった背景描写もなく記号として「ドラゴン」「エルフ」という言葉を安易に用いることが「二次創作」なのだと捉えてもいいでしょう。
ですので『ピクシブ文芸』に限らず『小説家になろう』『エブリスタ』『アルファポリス』『カクヨム』へ小説を投稿する際は、前フリもなく記号として「ドラゴン」「エルフ」などの言葉を用いないようにしてください。
どういった外見で、どういった成り立ちを持つ存在なのかをきちんと描写すべきです。
二重投稿とは
二重投稿とは「他の投稿サイトや自身が保有するWebページまたはブログ等に掲載して人目に触れられる機会がある作品を、別の小説投稿サイト等に投稿する」ことを意味しています。
たとえば『小説家になろう』『エブリスタ』『カクヨム』などに投稿している小説を『ピクシブ文芸』に投稿することが可能かどうかということです。
『ピクシブ文芸』には明確な「二重投稿禁止」の規約がありません。
これは同じ利用規約を用いる『pixiv』にも『pixiv小説』にも当てはまるのです。
ただし『小説家になろう』では二次創作の投稿が禁止されています。
オリジナル小説(一次創作)であれば他サイトや同人誌にした小説でも投稿することが可能です。
つまり原則二重投稿は認めらています。
『エブリスタ』『アルファポリス』の規約にも「二重投稿禁止」の規約はありません。
ここは女性向け恋愛小説が強いため『ピクシブ文芸』以外で評価が欲しいのなら『エブリスタ』『アルファポリス』への二重投稿がオススメです。
『カクヨム』の規約やガイドラインにも「二重投稿禁止」の規約はありません。
ただし『pixiv小説』で連載した小説を「BOOTH」で販売する場合、『カクヨム』上でそれを宣伝すると規約違反となります。
また「カクヨムオンリー」のタグを付けると他小説投稿サイトへ二重投稿できなくなるので注意してください。
積極的に二重投稿しよう
基本的に著名な小説投稿サイトなら二重投稿はできます。
なので『ピクシブ文芸』に載せたファンタジー小説だけど反響が今ひとつだからファンタジーに強い『小説家になろう』にも投稿しておこう、とか女性向け恋愛小説だから『エブリスタ』「アルファポリス」にも投稿しておこうとかいうのは書き手の裁量に任されているのです。
各小説投稿サイトを有効に利用することがより多くの読み手に読んでもらうチャンスを増やすことにつながります。
ただし各小説投稿サイトでは、二重投稿していることをキャプションなどで明記することが求められているのです。
キャプションなどで書いていなければサイト運営側が「これは○○に投稿されている小説と同じじゃないか」と判断して削除やアカウント停止の警告が来る可能性があります。
なので二重投稿をするのなら「キャプションなどで二重投稿していることを明記」しましょう。
明記さえしてあればどの小説投稿サイトでも基本的に二重投稿が問題になることはありません。
『カクヨム』で「カクヨムオンリー」タグを付けた場合は別ですが。
最後に
今回は「二次創作と二重投稿」について述べてみました。
二次創作を『ピクシブ文芸』に投稿してくる人がたびたび見られます。『ピクシブ文芸』はあくまでもオリジナル小説(一次創作)に限られているのです。
少しでも読み手を増やしたいから『pixiv小説』に投稿する際『ピクシブ文芸に投稿する』にチェックを入れてしまう人がけっこういらっしゃいます。
でもそれは規約違反です。
せっかく書いた小説なのですから、規約違反で削除されないよう、オリジナル小説(一次創作)と二次創作の違いをじゅうぶんわきまえてください。
少しでも読み手を増やしたいなら他の小説投稿サイトへ二重投稿すればいいのです。
ただし他の小説投稿サイトでは基本的に二次創作は投稿禁止になっています。
二次創作で勝負したければ『pixiv小説』『カクヨム』だけで戦ってください。
『pixiv小説』はとくにそのためのプラットフォームなのですから。
(ここまで書いていますが、すでに『ピクシブ文芸』はサービスを終了しております)。
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