116.応用篇:タイトル付けが最重要課題(補講)
今回はコメントが付きましたので補講を行ないます。
「タイトルがかぶる」ことをテーマにしました。
タイトル付けが最重要課題(補講)
今回もコメントが付きましたので補講致します。
「タイトルに関しては、あまりにも有名過ぎる物以外での被りはありなのでしょうか。ピクシブで投稿されている二次創作の小説ではよくあるらしいので。(さすがに商標権が絡む物は該当箇所を変更するかもしれませんが)」
という内容でした。
一般名詞に商標権は発生しない
小説のタイトルに限らず楽曲のタイトルや絵画にも「商標法」という法律が適用されています。
小説では主に「タイトル」と「内容」に分けられるのです。「内容」は著作権法の範囲内になります。
ここでは「タイトル」が扱う「商標法」について述べましょう。
小説の「タイトル」にも「商標権」は存在します。
ただしタイトルが一般名詞の場合はその範疇にありません。
『月光』とか『居酒屋』の類いです。
たとえば『寿司』という小説のタイトルが既存していたとします。自分の小説にも『寿司』と付けたという場合は「『寿司』という単語が一般名詞であり、商標権は及ばない」と主張できるのです。
たとえ著名なタイトルであろうとも、それが「一般名詞」であれば誰が同じタイトルを付けても商標権違反になることはありません。
吉幾三氏の大ヒット曲に『雪国』があります。
タイトルを『雪国』と付けたとしても川端康成氏や氏のファンの方からお叱りを受けることはまずないでしょう。
だからパクられたくない原著者はタイトルに固有名詞を混ぜておくことを最優先で考えるべきなのです。
「主人公の名前」や「主人公の置かれた状況」をタイトルに入れるのは、まさに商標権のために行なう面もあります。
夏目漱石氏の作品なら『坊っちゃん』は一般名詞なので誰が使ってもかまいませんが、『吾輩は猫である』は「主人公の置かれた状況」を入れ込んであるのでパクったらダメだということです。
ただし実際の『吾輩は猫である』はすでに著作権保護期間が過ぎているため、現在『吾輩は猫である』を自分の小説のタイトルに使っても法的に問題は起こりません。
タイトルの固有性
これに対し、固有名詞を用いている場合は基本的に「商標権」が認められています。
ただし「商標権」は適用分野を先に指定しておかなければならないため「楽曲のタイトル」が「小説のタイトル」に使われたとして、アーティスト側が「小説のタイトル」としてもプロテクト対象として特許庁から許諾されていない場合には手が出せません。
先述の吉幾三氏と川端康成氏の『雪国』が好例です。
毛色は違いますが太宰治氏『走れメロス』が、楽曲ソルティー・シュガー『走れコータロー』になり、さらにマンガ『みどりのマキバオー』のアニメ主題歌『走れ!マキバオー』となった例があります。
「メロス」は固有名詞ですが「走れ」は一般名詞と見なせるのです。
なので太宰治氏のエージェントが『走れコータロー』を非難できませんし、同様にソルティー・シュガーが『走れ!マキバオー』を訴えることもできません。(まぁ『走れ!マキバオー』は『走れコータロー』の公式パロディつまりオマージュであることは周知の事実ですが)。
マンガの手塚治虫氏『ブラック・ジャック』『ブッキラによろしく!』がマンガの佐藤秀峰氏『ブラックジャックによろしく』としてタイトルをパクられた例があります。
これは手塚プロサイドと一悶着起きた事例です。
「ブラック・ジャック」は固有名詞ですしジャンルも「医療漫画」としてかぶっているため『ブラック・ジャック』へのタダ乗りではないかというものでした。
ですので「固有名詞」をそのまま転用してくるという行為は非難されてしかるべきです。
今はインターネット社会ですので、使いたい単語があったらまずはネット検索をしてかぶっていないか確認しておきましょう。
また最近では「語感が似ている」という理由で商標権を主張してくるケースがあります。
(たとえばファストフード店で『ワクドナルド』と書けば『マクドナルド』からケチがつきます。三十年ほど前にハドソンから『デゼニランド』というパロディ満載のパソコンゲームが発売されました。その後に続編として『デゼニワールド』が発売されています。これらはディズニー側からクレームがつけばよくて販売停止、悪ければ慰謝料と損害賠償を請求される事案です)。
こちらは避けようがないので、先行者側が強硬なときはこちらからタイトルの変更を申し出るべきでしょう。
二次創作での商標権
二次創作において、基本的に「原著のタイトルをそのままパクってはならない」「登場人物のセリフをそのままパクってはならない」と肝に銘じてください。これは原著とは著者も内容も異なる二次創作が「いかにも公式然としている」ようでは、原著の商標権を明らかに侵害していると認定されるからです。
とくに『コミックマーケット』略して『コミケ』などで販売する際は商行為と見なされて商標法違反が確定します。
だから二次創作のタイトルは、原著が何かわかるけど「タイトルはちょっと違う」ことが多くなります。
商標法や著作権法は親告罪なので、原著者が訴えない限り裁判になることはありません。だからといってタイトルとしてそのままパクっていい道理はないのです。
(商標法や著作権法はすでに非親告罪に改められているので、当事者以外が意義を申し立てることができるようになっています)。
なによりその無節操さに小説投稿サイトのコメント欄が炎上することは必定でしょう。
前記しましたが、今はインターネット社会です。
事前にタイトルがかぶっていないかくらいは検索しておきましょう。
二次創作同士での商標権
商標権は特許庁に申請して許諾されないかぎり権利を手に入れられません。
なので二次創作同士で「同じタイトルになってしまう」場合が往々にしてあります。
これは一見すると「同じ作家の二次創作」と誤認する可能性があるのです。
訴訟には発展しないまでもコメント欄が炎上する可能性は否定できません。
だから二次創作者同士で犬猿の仲になってしまうケースが生まれることもあります。
でも利害関係者以外が見れば「どちらも二次創作なんだから、どちらがパクリだではなく、どちらもパクリなんですよ」と見られますよね。
『コミケ』には多数のサークルが数多くの一次創作と二次創作の作品を持ち寄るのです。
当然「タイトルがかぶる」なんて当たり前のように出てきます。
そんなときは「あなたの作品も僕の作品と同じタイトルですね」と融和的に切り出してお互いの作品を交換するなんていうフェアプレイの精神が欲しいところです。
「この二次創作はブックマークがたくさん付いていていいな」という安易な気持ちからそのタイトルをパクるなんていう出来心はもってのほかです。
確実に炎上しますし最悪アカウントが削除されるおそれもあります。
最後に
今回は「タイトル付けが最重要課題」の補講を述べました。
まずタイトルがかぶることは現在では避けられないものです。
小説投稿サイトにはすでに累計百万以上の作品があります。
それらといっさいかぶらないタイトルなんてものはもうないのかもしれません。
それでも避けられるマイナス評価はあらかじめ避けることをオススメします。
インターネットでタイトル候補を検索するだけで済むのですから。
それだけでタイトルがかぶることをある程度防げます。
あとは書き手であるあなたの
趣味で小説を書くだけの人も将来ライトノベル作家になりたくて書く人も、ご自身の心と照らし合わせて、できるだけタイトルがかぶることを避けるようにしてくださいませ。
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