79.実践篇:商業ライトノベルの分析(2/3)

 今回は「商業ライトノベル」の続きの話です。





商業ライトノベルの分析(2/3)


 商業ライトノベルの分析の続きです。





売りがあるか

 商業ライトノベルはとにかく「売り」があるかどうかにかかっています。

 なにせ「紙の書籍」を五千部作るだけでも数十万円が印刷代で飛んでいく世界です。「売り」がなければどうやって主要読者層にアピールしていいのかわかりません。

 「異世界転生」「俺TUEEE(主人公最強)」「チート」「ハーレム」といったありきたりな「売り」は今ではそれほど通用しないと考えてください。

 もちろん「異世界転生」「俺TUEEE(主人公最強)」「チート」「ハーレム」を否定してはいません。

 それよりも際立つ「売り」が欲しいということです。



 たとえば主人公が冴えない中年であるライトノベルというのは、それはそれで「売り」にできます。

 その場合でも「異世界転生」「俺TUEEE(主人公最強)」を踏まえて「普段は冴えないけど、いざとなったらとてつもなく強い」ことがほとんどなのですが。

 「異世界転生」「俺TUEEE(主人公最強)」「チート」でありながらも主人公は中年。そんなカッコイイ中年になってみたい。

 そう中高生に思わせられれば大成功です。


 まぁ主人公が中年だと「紙の書籍」ではまず冒頭で切られます。

 そのため冒頭では中高生にしておいて、エピソードが変わったとき一気に中年にしてしまうとよいでしょう。

 「この主人公が中年になったらどういう人物になっているのだろう」というワクワク感を持たせることができます。





題名を全角十六字以内で表す

 ライトノベルの題名は現在どんどん長くなってきています。

 著者はその作品を多くの人に読んでもらいたい。

 でも平凡なタイトルでは読み手が手にとってくれません。

 小説投稿サイトでの検索の関係で、そうやって題名がどんどん長くなってきました。

 そこで、あなたの三百枚を全角十六字以内で的確に表せるか考えてみましょう。

 全角十六字に規定したのは、iPhoneなどを手がけるAppleの電子書籍アプリiBooks Store(現ブックストア)で新着を見た際、一覧に表示される一冊の文字数が全角十八字だからです。

 残り全角二字を削った理由は巻数を表示しても省略されないためです。『とある魔術の禁書目録』(十字)の後に「_(1)」と書けば巻数が全角2字で収まります。

 もちろん十巻を超えると「…」で省略されてしまうのですが。まぁ十巻まで連続刊行してもらうくらいなら、固定ファンも多いことでしょうからそれほど支障は出ません。

 「_1」と付ければ三桁まで省略されずに題名が表示されます。





題名の考え方

 ライトノベルの題名を考える際はその小説の「売り」をいかに表せるかがポイントになります。

 「主人公が最初に出会うエピソードや境遇」か「主人公の特殊能力」か「キーアイテム」を用いることが多いです。

 逆に「最後のシーン」に絡めた題名にする手もあります。読み手は不思議に思いながらも読み進めていき、最後のシーンに直面したときに「そういう意味だったのか!!」とびっくりして納得するのです。

 その効果は絶大です。ぜひ挑戦してみてください。

 それには綿密な「プロット」が不可欠ですけどね。


 伏瀬氏『転生したらスライムだった件』(十三字)は最初の出来事や境遇がそのままタイトルになっています。わかりやすいですよね。


 鎌池和馬氏『とある科学の超電磁砲』(十字)も主人公・御坂美琴の特殊能力に付けられた通名『超電磁砲』を活用したわかりやすいタイトルになっています。


 川原礫氏『ソードアート・オンライン』(十二字)は作中に登場するオンラインゲームの名称です。こちらはキーアイテムといえますね。


 このように論理的にわかりやすいタイトルは読み手のミスマッチを防げて有利です。



 「題名自体を面白くしよう」というアイデアから出発した題名もあります。


 渡航氏『やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。』(二十字)、暁なつめ氏『この素晴らしい世界に祝福を!』(十四字)などは題名自体が面白いですよね。


 しかもそれぞれ略称が『俺ガイル』『このすば』とこちらも面白くなっています。


 まぁ『やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。』は題名が決まるまで紆余曲折していた経緯があり「通称の『俺ガイル』のほうが先に定着してしまった」という面白い事例です。





テーマが背骨バックボーンにあること

 ライトノベルにかぎらず小説には「テーマ」が必要です。

 「プロット」を作る段階で「エピソード」を考えます。

 その際「エピソード」が「テーマ」と結びついているのかを確認してください。


 「テーマ」と結びつかない「エピソード」は必要ありません。

 バッサリとカットしましょう。


 でも「読み手に楽しんでもらいたい」という意図であえてそういう「エピソード」を差し挟むのは「あり」です。

 読んでいて楽しくない小説を読み続けられる読み手はまずいません。


 「テーマ」を見せつけられてくたびれてきた読み手を和らげるための「純粋に楽しいエピソード」は心のオアシスです。

 小説投稿サイトでの連載では必ず入れておきたい「エピソード」になります。


 緊迫一辺倒では本当に読んでいてくたびれるだけです。

 それが二十万字も三十万字も続いていく。書き手の気が知れません。


 そういった小説を読むたびに「たまには息抜きをさせてくれ」と思って読んでいます。

 読み手としてそう思う人がいるという意識を置くだけでも「エピソード」作りは変わってくるはずです。



 でも優秀な作品はその「純粋に楽しい息抜きエピソード」でも手を抜きません。

 物語最大のきっかけやヒントを入れ込んできます。


 読み手を楽しませているかのように見せて、実は主人公と「テーマ」について重要なことが書かれているのです。


 これも心がけるだけで効果が現れるので、ぜひ「純粋に楽しい息抜きエピソード」に「重要なきっかけやヒント」を入れてみてください。





最後に

 今回は「商業ライトノベルの分析」(2/3)を述べてみました。

 次回は「主人公とロマンスと不思議とハッピーエンド」について述べていきます。



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