69.中級篇:理想の執筆ペース
今回は「執筆ペース」についてです。
「小説賞・新人賞」に応募するにしても小説投稿サイトへ投稿するにしてもペースは大事です。
理想の執筆ペース
あなたが小説を書いたとき、どこに投稿するおつもりでしょうか。
出版社が開催する「小説賞・新人賞」に応募しますか。インターネットの小説投稿サイトに投稿しますか。
ちなみに現在では出版社は小説原稿の持ち込みを受け付けていないそうです。原稿用紙三百枚の小説を読むのはマンガとは時間のかかり具合が異なります。
誰かに読んでもらいたい、評価してもらいたいと思うのであれば、「小説賞・新人賞」か小説投稿サイトしかないと思ってください。
小説賞・新人賞に応募する
出版社が開催する「小説賞・新人賞」に応募するとします。満足のいく原稿ができるまで腰を据えてじっくりと推敲を重ねるのもいいでしょう。
しかし出版社としては「小説賞を授けた書き手に規則正しく新刊を書いてもらいたい」と思っています。
出版社がそれを求めてきたとき、書き手から受け取った原稿の質が小説賞受賞作よりあまりに程度が低かったらどうでしょうか。せっかく書いた新作は新刊として出版されず、以後依頼もこなくなって書き手は文壇から消え去るのみです。
そうなってしまったら、もう一度他の「小説賞・新人賞」を狙いにいかざるをえなくなります。これでは無駄が多いですよね。
「小説賞・新人賞」は基本的に年一回の締め切りです。一年かけて推敲を重ねた作品の質はよくて当たり前。
ただ、以後「小説家」の肩書を与えられるには前記の通り「規則正しく新刊を発行できる書き手」だけです。
出版社はどのくらいのペースで新刊を出してもらいたいと思っているのでしょうか。
まず契約しているベストセラーな書き手の出版を優先します。
それ以外は出版社の予算次第になるのです。
出版社も賢いので「ベストセラーな書き手」の新刊は発売月をズラして出版するようにしています。
これで毎月の収益を確保し、安定した経営ができるようになるのです。
そしてライトノベルでは「ベストセラーな書き手」の新刊はだいたい年に三、四冊出ています。
「小説賞・新人賞」に応募するときは、このことを念頭に置いてください。
つまり小説賞の締め切りまでの一年間に三、四冊の新作を書いて送るのです。
でも一冊出来たごとに送付していたのでは、「小説賞・新人賞」のふるいにかける「下読み」の方が別の人になる可能性があります。
これだと「この書き手は一年で三、四冊作れる書き手だ」と出版社に認識してもらいにくくなるはずです。
ということは「『小説賞・新人賞』の締め切りまでの一年間に三、四冊の新作を書いて一度に送る」のがいいでしょう。
原稿を受け取った出版社は「一年間で三、四冊の新作を書けるのか」と認識してくれます。そのうえでそれぞれの作品を「下読み」さんに渡してチェックしてもらうのです。
気の利いた出版社なら一人の「下読み」さんに三、四冊すべて渡して判断してもらえます。一作ずつの評価が百点を獲れず九十点だとしても「一年間で九十点を三、四冊書ける書き手」だと評価してもらえるのです。
「小説賞・新人賞」を授かるかもしくは佳作入選したら、すぐにでも「連載をスタートできる書き手」だと認めてもらえます。
出版社の評価はここまで大きく変わるのです。
小説賞でデビューしたいのなら、とくに「一人一作のみ」と制限をかけられているもの以外は三、四冊まとめて送ってしまいましょう。それが「小説賞・新人賞」攻略の近道になるはずです。
小説投稿サイトに投稿する
では小説投稿サイトに投稿し、人気が出て出版社からオファーを待つ場合はどうでしょうか。
出版社は「年に三、四冊のペースで新刊を出してもらいたい」意図に変わりありません。
それを計るために、小説の投稿ペースをチェックしています。
一作まるまる出来てからすべてを一挙に投稿する書き手なら、新作が「年に三、四冊のペース」で投稿されているかをチェックされます。
ただ、一作まるまる出来てから投稿すると文字数が十万字を超えることもざらです。
小説投稿サイトで小説を読んでいるのは、十万字を一気に読む時間のない中高生が多いと思います。彼らは「隙間の時間」に読みたい小説をチェックしているのです。だから一作まるまる投稿はオススメしません。
「隙間の時間」で読み終えられない小説を、あえて読もうと思う読み手はかなり稀です。
これが許されるのは相当小説投稿サイト界隈で名の通った書き手に限られます。そんな書き手はたいてい、すでに出版社と契約しているものです。
小説投稿サイトに投稿するのなら「連載」が最良の選択になります。
ではどのペースで投稿するのが最適なのか。そこが知りたいですよね。
まずこれだけは念頭に置いてください。小説投稿サイトでの「主要な読み手は中高生」だということです。(2022年では中年男性が主要な読み手です)。
彼らはまとまった時間がまずとれません。学校で授業を受け、部活動をし、塾に通い、宿題をこなしています。
それらの中でわずかに残されている「隙間の時間」が読書タイムです。
「授業の休み時間だから五分くらいしかない」ときもありますし「塾へ行くために電車で移動しているから二十分は読める」ときもあります。
どの「隙間の時間」にアクセスするかで、一回の投稿に使える文字数が変わってきます。
速読ができる読み手なら十分しかなくても一万字読めてしまう人もいるでしょう。文字を追いながら読んでいる読み手なら二十分で五千〜八千字くらいかもしれません。
読むスピードは読み手の読書スキル次第なので一概に判断するのは難しいのです。
仮に一秒間で五字読めると計算すれば五分で千五百字は読めます。十分なら三千字、二十分なら六千字です。これがだいたいの目安といっていいでしょう。つまり二十分の「隙間の時間」にアクセスするなら六千字前後で投稿すれば読んでもらえます。五分の「隙間の時間」にアクセスするなら千五百字前後といった具合に字数を制限します。
一日に六千字を読んでもらう
小説を読むひとつの目安が「六千字」です。六千字で「起承転結」のいずれかを書きます。「起承転結」すべてを合わせて「二万四千字」強にするのが適切です。これを一章とします。
十万字前後が小説賞の目安となるので、そのまま書けば四章仕立てで「起承転結」の簡潔な書き方ができるようになるのです。
たとえば二十分の「隙間の時間」にアクセスするなら一回に六千字を投稿すればいいことになります。
五分の「隙間の時間」にアクセスして一日六千字を読ませたいなら千五百字の投稿を一日四回行なうのです。
そのペースを守ってあれば、読み手は読み続けてくれます。
本コラムで以前「五千字」を目安としました。
この場合だと「起承転結」の四章構成が「小説賞の下限」である八万字前後での投稿になります。
そこで「起承転結」の後に「惹」を付けて「起承転結惹」の五部構成にするのです。こうするとその章のラストで「惹」が提示されるので読み手は続きが読みたくなります。
「このように状況が変化してしまったけど、主人公はこれをどうやって切り抜けるのだろうか」という具合に。
これは後述する四日連続投稿をした際に五日目に「惹」を持ってくることで、翌週初日まで読み手の心を離さないことにつながります。
つまり連載を追い続けてくれるわけです。
とりあえず以下は「一日に六千字」書くことを想定して話を進めていきます。
一日に六千字で、「起承転結」すべてを合わせて「二万四千字」とするのです。
それを一週間に四日連続で投稿する、つまり「週四日連載」することをオススメします。
具体的には日曜に起を執筆し、月曜に承を執筆します。
承を書き終えたら起を推敲して小説投稿サイトへ投稿します。
そして火曜に転を執筆したら承を推敲して投稿するのです。
このようにすれば月曜から木曜までの四日連続で投稿することが可能になり、四日間できっちり起承転結が収まります。
「一日に五千字」なら五日連続で投稿し、「起承転結惹」の五部構成にするのです。
投稿の空く金曜・土曜・日曜は時間がもったいないので、別の作品を連載しましょう。こちらは一日一万二千字を投稿するのです。
二日あれば二万四千字で一章の「起承転結」が揃いますので読み手の時間が空きやすい土日に読んでもらえるように調整します。
木曜と金曜で起承を執筆。土曜日に転結を執筆した足で、そのまま起承を推敲して投稿するのです。
そして日曜に転結を推敲して投稿すれば、土日で一章ぶんを読ませることができます。
実に合理的だと思いませんか。
そして日曜は月曜から木曜までの四日連載の起を執筆すればいいのです。
今の人気作をチェックする
書き手の側にも都合があるでしょう。
二本の連載を持つのはたいへんだと思ったら、まず月曜から木曜の四日連続で投稿するほうだけでも行なってください。
そして空いた金曜と土曜で積極的に他の書き手が書いた人気作をチェックしましょう。
現在ウケのよいトレンドもわかりますし、こういうふうに書けばいいのかと勉強にもなります。
上質な
人工知能がよい例です。Microsoftが開発した人工知能がインターネットで公開され、そこに反社会的な言葉を多数
それほど
そして感じたことを「ネタ帳」にためていきます。
人生はつねに勉強です。
向上心を持った書き手だけが、他の書き手より上へ行けます。
ぜひ人気作をチェックしましょう。
最後に
今回は「理想の執筆ペース」について述べてみました。
できるだけ一週間に二本の連載が回るようにしたほうが有利です。
しかし最初のうちは一本の連載で手いっぱいになるでしょう。
そのときは連載は一本にして残り時間で上質な
「ネタ帳」の中身は多いに越したことがないからです。
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