58.中級篇:キャラクターに特徴を(2/3)
(前回から続きます)
五.身体的特徴(外見)
手塚治虫氏『鉄腕アトム』のお茶の水博士や石ノ森章太郎氏『サイボーグ009』のギルモア博士は常人よりも「鼻が大きい」という特徴を持っています。
同氏『ブラックジャック』では主人公の天才外科医ブラックジャックの顔は縫い目が際立ち顔も髪もツートーンですし、顔の傷といえば松本零士氏『宇宙海賊キャプテンハーロック』のハーロックも思い浮かぶはずです。
松本零士氏『銀河鉄道999』のメーテルと同氏『クイーン・エメラルダス』のクイーン・エメラルダスはライバルであったり姉妹あったりという設定で、双方腰まで届くほどの長髪が特徴です。
個性的な身体的特徴を持つキャラはとくにマンガとアニメに多く登場します。
マンガとアニメは映像で視覚に訴える作品だからです。
身体的特徴がなければキャラを瞬時に区別できません。
肌の色が白い・黄色い・茶色い・黒い、背が高い・低い、体型が太っている・痩せている・筋肉質、髪が禿げている・短い・長い・腰まであるとても長い・ポニーテールにツインテール、目がクリッとしている・三白眼・タレ目、鼻が高い・低い・太い、口が大きい・小さい・アヒル口、耳が大きい・小さいなどなど身体的特徴には数え切れないほどのパターンがあります。
他にも服装や装飾品、眼鏡かコンタクトレンズかモノクルかルーペかなどにも特徴が出るはずです。
そう考えると無限に近いパターンがあります。
それが合わさってひと目でそのキャラだとわかるのです。
まったく身体的特徴を持たないというとても稀有なキャラがいるかもしれませんが、本当に稀有な存在です。
完璧に中庸を行くようなキャラはかえってそれが特徴になりえます。
赤塚不二夫氏『おそ松くん』では松野家の六つ子がすべて同じ顔形をしています。テレビ版ではすべてひとりの声優が担当していました。それが最大の特徴になるわけですね。ただ六人すべて同じなので六つ子が実はモブキャラで、主役はハタ坊やイヤミのほうだと判断することもできます。
のちに六つ子がニートになったテレビアニメ『おそ松さん』が放送され大ブームを巻き起こしました。
こちらは顔は同じだけど声が違いますし容姿も若干異なります。性格も異なっており、純粋に『おそ松くん』の続編というわけでもありません。没個性のキャラたちに個性を与えて空前の大ヒットを生み出したのです。(第二期は失敗しましたけどね)。
キャラに特有のクセや所作があればそれも身体的特徴です。
ピーター・フォーク氏主演テレビドラマ『刑事コロンボ』の主人公コロンボ警部補(日本語訳では警部ですが本来は警部補です)はつねによれよれのコートを着て葉巻をくわえ、頭をかいていますよね。
ジェレミー・ブレット氏主演テレビドラマ『シャーロック・ホームズの冒険』の主人公である名探偵シャーロック・ホームズは考え事をするときに両手を口の前で合わせています。
ある人は貧乏ゆすりがクセになっていたり正座が苦手だったり。食べる前には必ず御膳の前で手を合わせて「いただきます」と言うのも、椅子に座る前に座面をハンカチで拭くのも所作です。こういうクセや所作はキャラの個性を引き立ててくれます。
小説であってもマンガと同様に身体的特徴を持たせるべきです。
身体的特徴を持たせてあれば説明文や描写文でその特徴を用いた表現が可能になります。
「このキャラはこういう外見をしている」と書けばそれだけでキャラを書き分けられるからです。
「このキャラは醜く太った男だ」と書けば「醜く太った男」と書くだけでその人物を指し示せます。
物語でさして重要度がなく「名前」を持たないキャラを書く場合はこのように「身体的特徴」を書くことで区別できるようにするべきです。
連載している小説が大ヒットして出版社の目に止まったらどうでしょう。
身体的特徴が書いてあれば表紙や挿絵を描いてくれる絵師さんがあまり悩まずにキャラを描けるようになります。
また知り合いの絵師さんに小説投稿サイトで連載している小説の表紙や挿絵を依頼するときにも便利でしょう。
紙の小説も大ヒットすればマンガ化・アニメ化の話も出てくるはずです。
そうなれば主人公と「対になる存在」と「立ちはだかる存在」以外のキャラにも身体的特徴が求められるようになります。
最初からそれがわかるように小説内で説明や描写がしてあれば、キャラクター原案の方に負担をかけないですよね。
あなたが書いて小説投稿サイトで連載している小説は、どんな弾みで「紙の書籍化」・マンガ化・アニメ化されるかわかったものではありません。もしものためにも登場人物の身体的特徴は必ず決めておくようにしましょう。
――という遠大な野望のために身体的特徴を設定しろ、というわけではありません。
読み手は、今まさに読んでいる場面に出てくるキャラの外見・見た目を知りたがるからです。
外見や見た目、声色などがわかれば、読み手は頭の中だけでキャラを区別できます。
ライトノベルでは表紙のほかに扉絵や口絵などが付くのも、キャラを区別してもらうのに便利だからです。
文字で表す小説だから、身体的特徴を書かなくてもいいじゃないか。という考え方は当たりません。
文字だけで勝負するには、キャラの身体的特徴をしっかりと書き分ける必要があります。
ここでも「逆ノベライズ」の利点が見えてくるのではないでしょうか。
映像で表現されているキャラの身体的特徴を書くことで、キャラを書き分けられます。書き分けない書き方はただのあらすじでしかありません。
どのような端役であろうとも、身体的特徴を無視することはできないのです。
キャラを書き分ける技術を取得したいのなら、「逆ノベライズ」でアニメやマンガを小説に書き写していくこと。
それだけでキャラは自然に書き分けられるようになります。
(次回へ続きます)
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