57.中級篇:キャラクターに特徴を(1/3)

 基礎篇でもやりましたが「人物キャラクター設定」についてのお話をしていきます。

 分量が多いので三分冊にしました。





キャラクターに特徴を(1/3)


 キャラにはなにか「特徴」がなければなりません。「特徴」がなければただの|群衆(モブ)です。

 モブにならないためには、なにか「特徴」が必要になります。

 ではどんな特徴が必要なのでしょうか。





その他大勢とは異なるもの

 「その他大勢とは異なる」もの。それが「特徴」であり「個性」です。

 一般人とは違う職業であったり、勇者なのに気が弱かったり、億万長者だったりする。

 ミックスして億万長者で気の弱い勇者というのも展開が面白くなりそうです。臆病で金遣いの荒い勇者って物語はどうなるのでしょうか。


 他にも「あるべきものがない」または逆に「ないはずのものがある」というのも「特徴」です。

 「あるべきものがない」でよく用いられる「特徴」は記憶がない人(記憶喪失)と姿がない人(透明人間)、具体例だと免許がない外科医(ブラックジャック)になります。

 「ないはずのものがある」でよく用いられる「特徴」は空が飛べる人(スーパーマン)と瞬間移動できる人(超能力者)、具体例だと小学生なのに大人顔負けの推理力を持っている人(江戸川コナン)です。


 小説内でこういった「その他大勢とは異なる」ものを書いていけば、明確に個性を書き分けることができます。


 以下にどんな「異なるもの」があるかを列記してみましょう。




一.出身・組織

 あなたの創った世界には銀河や星系や惑星や大陸や島々や国家や領地というものがあるはず。

 人物キャラクターにとってどこの「出身」かはとても重要です。

 「出身」によって民族や言語や風習が異なります。性格にも民族性が反映されますし、キャラの話し方や基礎的な知識にも影響を与えるはずです。

 銀河規模の物語ならどこの銀河かどんな星系のどんな惑星の出身なのか。

 異世界ファンタジーならどんな大陸や島のどんな国のどんな都市の出身なのかで知識も立場も大きく変わります。


 所属する「組織」も決める必要があります。主人公陣営なのかそれに味方する陣営なのか、「対になる存在」陣営なのかそれに味方する陣営なのか、「立ちはだかる存在」陣営なのかそれに味方する陣営なのか。

 他の陣営かもしれませんし、まったくどこにも肩入れしない人たちなのかもしれません。

 もしかしたらどの陣営にも味方をしている「死の商人」かも。


 これが決まるとただのモブが大きく分類されます。

 どこ出身の人がどこの組織に所属しているのか。

 これはすべてのキャラに対して求められる「特徴」です。




二.性別

 これ以降のすべてに影響を与えうるのが「性別」です。

 性別は現在とてもデリケートなものになっています。単純に男性・女性と分けられないのです。

 以前からゲイバーなどおネエ系の方たちはそれなりに市民権を得ていました。それが現在ではLGBTQXと六種類が増えそれぞれに市民権を与えようと世界中が取り組んでいます。

 なので性別は単に男性・女性で決められるものではありません。

 また性別を持たない生物もいますし、両性具有の生物もいます。

 そのような生物には「無性別」「両性別」というようなものを作る必要も出てくるのです。

 このあたりを理解してさえいれば、キャラを性別で分けるときにも選択の幅が増えます。


 ただ性別をある程度はっきりさせていないと困ることも多いのです。

 「婦人警官」と呼ばれる警邏けいら隊員の場合は性別上女性でなければなりません。「女子水泳選手」も同様です。「大相撲の力士」も男性に限られています。

 現在では「女子相撲」という競技も登場してきていますが、それは年六場所開催される「大相撲」の中には含まれません。

 イスラム教において女性は外出する際にヒジャブなどで顔や肌を隠さなければなりません。


 このように社会によって性別でやれることできることに差が生じてくるのです。




三.年齢・家族構成・住居

 「年齢」を決めないことには「職業」を決めづらいので先に「年齢」を大まかに決めておきましょう。

 十四歳で「警察官」になるのは現在の日本ではありえません。でも「社長」や「国王」ならありえなくはないのです。

 ただ「十七歳」とか「二十九歳」とかピンポイントで年齢を決める必要はありません。「高校生」「お局様」のような大きくくくれるざっくりとした決め方でいいです。

 そもそも人物キャラクター設定は「履歴書づくり」ではありません。物語での役回りを決める際に必要になってくるというだけです。

 人物キャラクター設定の中で最もざっくり決めていいのが「年齢」なのです。「少年」「青年」「中年」「老年」などのように書いてもまったく問題がありません。

 もちろん物語の中で「誕生日イベントがある」というのなら生年月日は必要になりますが、そんなものがないのなら詳しい「年齢」も「生年月日」も決める必要はないのです。


 続いて「家族構成」です。キャラの「年齢」を決めると家族がいる可能性も出てきます。

 とくに生活を共にしている家族は物語の中で登場する可能性が高いのです。

 もし物語の中で家族を出さなければならないのなら、必ず「家族構成」を設定しておきましょう。


 一緒に暮らしているというなら、どんな「住居」かも気になりますよね。

 一軒家、シェアハウス、マンション、アパート、養護施設などさまざまです。

 それに貧乏な家族と富裕層の家族でも違います。そういうものもキャラの背骨バックボーンを支えることになります。

 とくに一人称視点の主人公の「家族」と「住居」はまず当たり前のように出てくることになるのです。

 朝起きて部屋を出てキッチンで食事して出かけるまでの流れの中でも、どんな「住居」に住んでいるか、食事を作ってくれる「家族」はいるのか。これは必ず必要になります。




四.職業・役職・能力

 「職業」が決まるとキャラができることとやるべきこと、つまり「役割」が定まります。

 「学生」なら平日は登校して授業を受けなければなりません。

 「スポーツ選手」なら大会で勝ち抜くために日夜努力しなくてはなりません。

 「会社員」でも「営業職」なら得意先の開拓のために歩きまわっているでしょうし、「事務職」なら社屋内でコンピュータと電卓を相手に苦闘していることでしょう。


 異世界ファンタジーのキャラでも「剣士」なら剣術で戦わなければなりませんし、「僧侶」なら回復魔法を唱え、「魔術師」なら攻撃魔法を放ちます。「剣士」がいるなら「刀鍛冶」も不可欠ですし、「僧侶」がいるなら信仰する「宗教」もあるはずです。

 「伝説の勇者の子孫」というのはよくある設定ですが、これも「職業」に入れてしまってかまいません。彼らはたいてい「(世の中に)欠落したものを取り戻す」旅に駆り出されるだろうからです。

 総じて「冒険者」がいるのなら「困った村人」が依頼できる「冒険者ギルド」もあることでしょう。


 いつの時代にも肉体的な悩みを治療する「医者」と精神的な悩みを相談する「占い師」は存在するでしょうし、「人類の永遠の友」とも呼ばれる酒を扱う「酒屋」と酒を飲める「酒場」もあるはずです。


 「職業」があるということはそれに応じた「役職」もあります。

 会社員ならグループの会長から社長・専務・常務・部長・課長・係長・班長・平社員といった具合です。相談役や顧問といった「役職」を用意してある会社もあります。

 学校においても生徒会だ学級委員だ保健委員だ図書委員だ飼育委員だといろいろな「役職」があるはずです。

 結構身近なところに「役職」はあります。

 どの役職にも就かないキャラもいるでしょうが、平社員と一緒でそういう「何の役職にも就いていない役職」だとも言えるでしょう。

 学校なら帰宅部も立派な「役職」です。


 「能力」はそのキャラにどんなことができるのかを示してくれます。

 百メートルを九秒台で走れる日本人とか二十メートル先の標的に一発で狙い違わず命中させる銃使いガンマンとかですね。

 何ができて何ができないか。

 それによって物語で出来事イベントが起きたときの選択肢が変わってきます。

 百メートル九秒台の人にフルマラソンを走らせようとしたり、迫り来る恐怖から逃げ切らせようとしたり。スタミナが要求されるような出来事イベントではじゅうぶんなポテンシャルは発揮できないでしょう。「迫り来る恐怖」に対しても百メートルなら逃げられますが、それでもしつこく追ってきたとしたらどうなるかわかりません。

 こういった身体能力の他にもいわゆる「超能力」や「魔法」の類が使えるかどうかも「能力」としてよく用いられます。

 百メートル九秒台の人は「百メートル走」なら長所として能力を遺憾なく発揮できますが、「フルマラソン」では持久力がないため短所として現れるのです。長所と短所も「能力」といえるでしょう。





【次回へ続きます】



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