16. :小説投稿サイトに載る小説(中略あり)

【注意】

 本投稿も『pixiv』の小説傾向を書いてあるため、その部分をバッサリと削りました。

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 GW直前企画として「小説投稿サイト」における小説のスタイルについて述べてみました。人気のある連載小説でも紙の書籍にはならない理由がわかるかも。





小説投稿サイトに載る小説


 ゴールデンウィーク特別企画ということで「小説投稿サイト」の傾向を書いてみたいと思います。

 インターネットで運営されている小説投稿サイトはたくさんあります。古参は『小説家になろう』『エブリスタ』、それに『アルファポリス』や『カクヨム』などですよね。現在では『pixiv』でも小説投稿機能を持ち、オリジナル小説だけを投稿する『ピクシブ文芸』の運営も始まっています。(すでに稼働を終了していますね)。

 現在『pixiv』でランキングのトップはなにがしかの二次創作に限られているのが現状です。これはオリジナル小説は『ピクシブ文芸』に集めて書籍化できる作品を確保し、ブランドを確立したい『pixiv』側の意図が感じられます。




〜(中略)〜




『pixiv』小説で人気の文体

 試しにランキング上位の文体を各見てみました。一般的に「紙の書籍でこれをやったらダメだろう」と思われるものばかりです。代表的な四つをご紹介いたします。


 まず「やたらと改行する」作品が多い。一文で改行していくものがほとんどです。

 紙の書籍でこれをやるとページ数は稼げますが、実際に原稿用紙へ書き込める内容として換算すれば三割は減るでしょう。つまり三百枚の小説を書いたのに、内容は二百十枚程度の分量にしかならないのです。

 長編小説を募集しているのに中編小説しか来なかった、という状況です。

 『ピクシブ文芸』は紙の書籍化を狙っていますから、大賞応募の際にこの問題を「文字数制限」で処理していました。「やたらと改行する」作品を本来の小説スタイルに校正したときに三百枚の分量を確保できるようにとの配慮でしょう。


 次に「やたらと空白行を入れる」作品も目につきます。

 紙の書籍で空白行を入れるのは「段落を変える」ためです。つまり視点や主人公の切り替えのために空白行を入れてそれを読み手へ認知させます。

 これが『pixiv小説』で流行りの文体だと「少しの間をとる」から入れているようです。

 これは本来「改行」で処理すべき。なのですが一文で改行を続けていくため、改行では「少しの間をとる」が表現できません。

 「やたらと空白行を入れる」のも、ネット小説での苦肉の策なのでしょう。


 三つ目に「会話文が何連続もする」作品も目立ちます。

 登場人物が二人だけならなんとか理解できるのですが、三人以上いる状況で地の文において断ることもなく「会話文が何連続もする」と、どれが誰の発言なのか読み手にはさっぱりわかりません。

 口調が違えばまだなんとかわかりますが。

 また会話のやりとりは感情のやりとりですから、投げた言葉で相手の感情にも変化が生じて当たり前です。

 それが説明もなく「会話文が何連続もする」ようだと感情の変化を追いづらいという弱点を有することになります。

 「ちょっともったいないな」という感想です。


 最後に「改行後全角で一文字下げてから地の文を書く」ことができていません。

 これも「やたらと改行する」の副作用です。一文ずつ改行するから「わざわざ一文字下げなくてもいいや」となってしまっています。

 これは携帯電話のEメール機能や『Twitter』『LINE』からの派生でもあると思います。

 これらは一回の送信に文字数制限がありますから「改行後全角で一文字下げて地の文を書く」をするとその一文字を損した気になってしまうのです。

 またスマートフォンから投稿する方も多いので、本文を入力する際に「空白スペース」を入力しても「半角の空白スペース」が挿入されるという制限がかかっている面もありますね。



 以上四つがとくに気になった点ですが、他にも「紙の書籍でこれをやったらダメだろう」という書き方が山積しています。

 これらはもう「ネット時代になったのだから、小説の文体もそれに合わせていいや」となっているのでしょうね。


 ランキング作品を読んでもわかるように、すでに「紙の書籍」で必須の書き方は「小説投稿サイトではウケない」という現実に直面しています。


 小説投稿サイト側で投稿者に「紙の書籍」スタイルを正しく教えるか、「紙の書籍」を小説投稿サイトの文体に改めるか。その潮目に来ているのだと思われます。

 どちらが選ばれるのか私にはわかりかねますが、すでに「小説はネットで読まれる」時代です。

 「紙の書籍」側が折れるしかないのかもしれません。

 ある意味では「革命」とも呼べる事態です。





一回の投稿でひとつのエピソードしか書かない

 これは前回にも書いたことですが「一回の投稿ではひとつの出来事イベントしか書かない」で投稿している方が多いのも小説投稿サイト特有の現象です。


 そのほうが気楽に連載できるので小説投稿サイトに向いてはいます。

 しかしそこまで断片化してしまうと、過去に書いた伏線を憶えている読み手はかなり少なくなるはずです。


 思い出すためにいくつ投稿を巻き戻して読めばいいのかわかりません。

 その行為自体が過去連載の閲覧数を増やす要因にもなるので、なおさら「一回の投稿では一つの出来事イベントしか書かない」で投稿するスタイルが流行している一面がありそうです。

 また、ともすれば書き手自身が伏線の存在を忘れたり伏線そのものを張ることすらしなくなったりするのではないでしょうか。


 書きっぱなしの小説は「紙の書籍」を買う読み手が読んだ後の満足度が低いのです。


 「とても面白い連載」だからといって「紙の書籍にしても面白い」保証にはなりません。

 おそらく「このように書き直してください」と出版社から言われるはず。

 せっかく時間をかけて小説を書くのに、お金に変わらなかったら趣味でしかないですよね。


 二次創作は同人誌即売会でしか売る機会がありません。

 しかも経費は自腹なので儲けが出るかどうかは売ってみないとわからない。

 かなりリスクの高い賭けですね。



 また「一回の投稿ぶんだけで読み手を満足させられればそれでよい」という意識が書き手にはあるのでしょう。


 確かに連載していても全投稿が必ずランキングに入る保証はどこにもありません。読んでくれるのは評価が高まった一片のエピソードだけになるかもしれないのです。

 一方で一万字を超える長文のエピソード単位で投稿すると、文字数が多いことで読むのに時間がかかると判断され「読まれなくなるリスク」が高まるという判断もあると思われます。





最後に

 今回はゴールデンウィーク特別企画として「小説投稿サイト」に投稿される小説の特徴について述べてみました。

 そこにある小説は、「紙の書籍」の小説とは明らかに異なります。

 これを「紙の書籍」側に改めるのかネット小説側に合わせるのか。

 今後の出版社と書き手の課題と言えるでしょう。


 ゴールデンウィーク期間中はやや実践寄りのコラムを書く予定にしています。

 明日からのゴールデンウィークを満喫しながら、ちょっとした時間が空いたときに読んでいただけたら幸いです。

(この投稿を書いたのは2017年のゴールデン・ウィークです)。



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