14. :佳境から終わりへそして遡る

 あらすじの時点で破綻している小説は、いくら筆致がすごくても駄作にしかなりません。

 そこで今回は「あらすじの創り方」を書いてみました。





佳境クライマックスから終わりへそして遡る


 以前書きましたが、ストーリーは佳境クライマックスを先に考えるべきです。

 そしてそれを終えての「主人公の結末ゴール」を書きます。

 これがきっちり盛り上がって読み手の「心に痕跡を残す」ように書かれていれば物語の屋台骨は完成です。





設定と結末エンディングのズレは

 佳境クライマックスと「主人公の結末ゴール」を書いたとき、主人公の性格や性向は人物キャラクター設定したときに定めたものとある程度異なっているはずです。


 それが主人公の成長であり、読書を通じて物語を疑似体験した読み手の成長でもあります。


 さらに人物キャラクター設定・舞台設定ともに初期設定に追加や変更を施した部分もあるはずです。

 こちらは佳境クライマックスより前に追加や変更がわかるように前フリしていく必要があります。


 場合によっては書き出しの段階からすでに変更されていなければならない状況も生まれてくるのです。

 そのときは潔く初期設定を変更して対応しましょう。

 そうすれば物語が途中で変質してしまうリスクを回避できます。





あらすじの書き方

 これを踏まえると、あらすじは「佳境クライマックス結末エンディング佳境クライマックスからひとつずつ前のエピソード」と進めていき、結末エンディングと対比できる状況まで戻ったら、そこを「書き出し」として定めていくべきです。

 この方法なら「書き出し」であれこれ悩みません。

 コンピュータ時代ではこの方法が最適です。


 ただこのやり方だと「キャラが勝手に動きにくい」と感じる書き手もおられるので、あくまで目安だと思ってください。


 それぞれのエピソードでの序破急や起承転結も考えていきます。


 エピソードごとに誰が「主人公」でどんな「出来事イベントが起きる」のか「出来事イベントを起こす」のか。

 その結果を踏まえてそのエピソードの「主人公の結末ゴール」や周囲の結末ゴールがどうなるのか。

 これを積み上げていきます。


 当然ですが、そのエピソードが始まるときと終わるときとでは性格や性向などが変化しているはずです。





各エピソードには必ずオチをつける

 こうやってひとつずつ前のエピソードを考えていくことで、破綻することなくストーリーを展開させられます。


 ひとつのエピソードでは必ずオチをつけていきましょう。


 佳境クライマックス結末エンディングでそれまでの伏線は残さず回収しなければなりません。

 それ以外は可能な限りなんらかの伏線を残しておくべきです。

 読み手は伏線が気になって次のエピソードを早く読みたくなりますよ。


 伏線を「意図して」解決しないでおくと、長編小説が超長編の連載小説に化ける可能性も出てきます。

 とくに結末エンディングまでで物語の根源にかかわる伏線がそれほど進展しなかったり解決されていなかったりした場合は、化けやすいのです。

 ただ、それだと読み手は次作をかなり待たされますから、連載のペースは必ず守る必要があります。

 ペースが守れないようなら超長編の連載小説を狙うべきではありません。


 合計で三百枚前後・十万字前後の長編小説になるような連載小説を目指すべきです。





遡ってあらすじを創る利点

 あらすじを「書き出し」から順に創っていくと「多様な選択肢」に書き手自身が振りまわされます。


 それこそ「キャラが勝手に動くまで書くのをやめる」という本末転倒な事態が生じるのです。


 小説投稿サイトに連載小説はいくらでもあります。

 いつまで経っても続きが読めない連載小説を読もうとする奇特な方はごく少数です。



 主人公が「多様な選択肢」の中からどれを選ぶかは、その選択肢が提示されるより前の段階で性格や性向がどうなっているかで決まります。


 「選ばせたいのに選べない」のは、その選択肢より前がうまく書けていないからです。

 そうなったらもう一度「書き出し」からあらすじを考え直さなければなりません。



 あらすじを遡って創っていくと「多様な選択肢」であってもこの人物はこう動く「これしかない」という選択がすぐに導き出せます。

 なかなかそれが決められないようなら、そう決められるようにそのひとつ前のエピソードでキャラの性格や性向を修正してあげればいい。

 そして主人公に「以前こういう出来事があった」ので今選ぶのなら「これしかない」と選び取ってもらうのです。


 書き直す必要なんてまったくありません。





読み手を興醒めさせない

 キャラの性格や性向からいって「この選択はありえないだろう」と読み手が感じたら、そこで興醒めされてしまいます。

 「書き手の独りよがりな小説だな」と思われて別の小説を読みに行くでしょう。

 そしてよほど評価が高まらない限り二度と同じ書き手の小説を読もうとしなくなります。

 これでは困りますよね。



 できるだけ多くの方に読んでいただき、いいねや評価やブックマークやフォロワーが増えていくことが小説を書く喜びです。

 オリジナル作品を書いている方は、いいねや評価とブックマークとフォロワーの蓄積が「紙の書籍化」に直結しているので、苦労して書いた小説がお金に変わっていきます。

 たいへん重要ですね。


 だから読み手を興醒めさせないためにも主人公に「矛盾のない選択肢」を選ばせましょう。





最後に

 今回は「あらすじの創り方」について述べました。

「書き出し」から書いていっても破綻なくあらすじを創れる書き手は、すでにプロ級の腕前があります。

 でもおおかたはストーリーが破綻してしまうものです。

 だから発想を転換して「遡って創る」と考えてみましょう。


 読み手が選択肢を前にしたとき「この主人公ならこれを選ぶだろう」と考え、それが当たれば「やはり」と思って共感してくれます。

 「大筋は合っていたけど少し異なったものを選ばれた」ときの快感はひとしおです。「ああこの主人公はこの場面でこれを選ぶのかあ」と。

 でも「さすがにこの選択肢はありえないだろう」を選んでしまったら一気に興醒め。今までの積み重ねがすべて消し飛びます。後にチリひとつ残りません。


 あらすじを書き慣れるまでは「遡って創る」ことを心がけましょう。



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