6. :出来事に対処する過程を見せるのが小説
今回は「
小説では必ずなにがしかの出来事が起こります。起こらなければ牧歌的すぎて小説を読む意味がありません。
その「
少し音楽の話も混ぜてみました。
出来事に対処する過程を見せるのが小説
舞台設定が出来て、
でもそれだけで物語は生まれません。
そのままでは読み手の共感は得られない。
読み手に主人公のことを好きになってもらい、同化してもらうには「出来事にどう対処するか」を見せましょう。
対処の考え方や仕方を通じて、読み手は主人公や他の登場人物の内面や性格がわかるようになります。
頭の中で「この人はこういう場面でこういう対処をしようとする人なんだ」とイメージを膨らませる。
だから読み手はその人物のことを「こういう場面になったらこうするんじゃないかな」と理解したつもりになるのです。
書き手が読み手に「こうなんだ」と押しつけるようにして書いた文章は、たいてい読んでいるうちに嫌気が差してきます。
「想像の自由」のない小説では脳裡に具現化するという、小説を読む醍醐味が生まれないのです。
小説を読む醍醐味とは、文章に直接書かれていない「行間」を読むことで脳裡に具現化し、そのイメージを心の中に思い浮かべることです。
そしてそれが連鎖してくると先を読みたい衝動に駆られます。
前回お話しした「
それらの積み重ねが小説の基礎になります。
小説の書き出しで早期に主人公と「対になる存在」を出して、彼らに何か
それをどう対処して解決させるのか。その過程を読ませるのです。
出来事には二種類ある
出来事には大きく分けて二種類あります。
人物の側に事態が及んできてそれに対処するパターンと、人物の側が動くことで他に影響を与えるパターンです。
前者は受動で、後者は能動になります。
受動パターンの場合は先に「
能動パターンの場合は先に「どう動いた」らそれによりどういう「
この組み合わせがエピソードであり、その過程を読ませるのが小説なのです。
音楽を例にとれば、受動パターンは「IV⇒I」のコード進行で、能動パターンは「V7⇒I」のコード進行といってよいでしょう。
多くの楽曲はこの基本進行の組み合わせと変形によって成り立っています。
たとえば「I⇒IV⇒V7⇒I」というクラシックで定番の進行なら「主人公に何か
一度
「I⇒V7⇒IV⇒I」というロックで定番の進行なら「主人公がこう動いたら、相手からこういう反応を起こされて、結果どうなった」という物語です。
まず能動的に動いてから受動的に反応が返ってきます。
「他人なんか関係ない。俺がやりたいようにやるだけだ」というロック精神そのものですね。
小説を書くうえで音楽のコード進行を理解する必要はありません。
ただ「音楽も芸術であり、聞き手に物語のイメージを伝える」手段であることに変わりはないのです。そこには小説にも通じる演出の技術があります。
人物が動くことと
ただ、定番のコード進行はクラシックの「I⇒IV⇒V7⇒I」であり、「
ロックな進行は味付けに使うものだと思っていただいて結構です。
どう対処するかの過程を読ませるのが小説
ひとつひとつの
そしてエピソードの積み重ねが小説の厚みをなします。
せっかく
「朝寝坊した」とするなら「急いで学校に行かなくちゃ」と焦って「食パンをかじりながら走って登校」する。
これは
でも初心者は「朝寝坊した」と書いたのに「今晩の献立はどうなるかな」で終わることがあるのです。せっかく「遅刻しそうだ」という動機があるのに、解決策が「今晩の献立当てゲーム」ではちぐはぐですよね。
噛み合っているからこそ、読み手は「この出来事をこう対処したのか」と思い「ならこういうときはこうする人かな」と推測する。
この推測すること自体が楽しいから小説を読むのです。
「想像の自由」がある小説こそ読み手は求めています。
それなのに
三百枚の小説を苦労して書き上げたとしたら、なおのこともったいないのです。
書き手は、一度小説を読み始めてもらったら最後の「完」「了」が出るまで読み手を現実に引き戻してはなりません。
「一気に読ませてやる」くらいの気構えが必要です。
そのためにも、矢継ぎ早に出来事を起こしてはそれに対処させましょう。
入れ子や畳みかけ
現実社会ではある
この場合は優先順位をつけて、対処漏れがないように気を配る必要があります。
対処漏れしたら読者は消化不良を起こしてしまいます。
超長編の連載小説であれば、次巻以降への伏線とすることもできますが、初心者の書き手は最初から超長編の連載小説など書くべきではありません。
短編小説を書きまくるか、長編小説を一本きっちりと書き上げるかに専念してください。
そうやって出来事がきちんと対処してあるかを頭で整理しながら物語を進めていくのです。
逆から考えると、対処させるつもりのない
そういう
超長編の連載小説であれば「いずれかの巻で対処されるのかな」と「伏線とその回収」という機能を想定できるのです。
でもせいぜい三百枚の小説では「せっかく伏線を張ったのにまったく回収されなかった」では「支離滅裂」と判断される可能性が高いのです。
原稿用紙の枚数が決まっている以上、穴埋めのために伏線を大量に張って読み手を煽る手口もなくはない。
でも読み終えたときにモヤモヤが残ります。
このモヤモヤが計算尽くであればいいのですが、たいていは「回収するつもりがなかった」ことが多いのです。
回収しないのならそもそも文章で記して伏線を張る必要はありません。
書かずにバッサリと切り捨てるべきです。
最後に
今回は「出来事に対処する過程を見せるのが小説」について論じました。
これらを組み合わせて、入れ子にしたり畳みかけたりする。
そうして物語は深みを増していきます。
小説を一気に読み下してもらうためにも、読み手が興醒めするようなことを書いてはいけません。
対処されない
思いつきだけで小説を組み立ててはなりません。
こういった構造的な部分を意識して書けるようになれば、読み手の食いつきがとても良くなります。
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